Session Ⅲ「旅の仲間バラエティ」分科会 |KX カイシャ・トランスフォーメーション ~人生100年時代の“会社”を創造する10のセッション~

Session Ⅲ 「旅の仲間バラエティ」分科会 

at 2022/2/3

on Zoom Webinars 

 

人生100年時代にふさわしい「人と会社の新しい関係」の探索・提言を行っている「カイシャの未来研究会2025」(主査/ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO大野誠一)は、2022年1月20日より、『KXカイシャ・トランスフォーメーション~人生100年時代の“会社”を創造する10のセッション』を実施しました。

これは「カイシャの未来研究会2025」が2018年末の発足以来、3年間にわたって探究してきたKX(カイシャ・トランスフォーメーション)のビジョンを体系化し、昭和の経営モデルから脱却できない日本の“カイシャ”の変革に広く適用できるモデルの創造を目指して行ったものです。

セッションは全10回。分科会でのディスカッションも、モデルを言語化・体系化していく編集会議も、すべて公開形式で進めていきました。

このSession Ⅲでは、KXを実現する5つのコンセプトのひとつ、「旅の仲間バラエティ」の分科会ディスカッションを行いました。

 

【メインスピーカー】

中根弓佳氏(サイボウズ)

平田麻莉氏(フリーランス協会)

野田稔氏(明治大学)

【ホスト】

大野誠一(ライフシフト・ジャパン)

豊田義博(ライフシフト・ジャパン)

 

 

一人ひとりが想いを持ち、変わっていく

大野)皆さんこんにちは。ライフシフト・ジャパンの大野です。KXカイシャ・トランスフォーメーション、人生100年時代の会社を創造する10のセッションにお越しいただきましてありがとうございます。今日はセッション3,3回目のセッションになりました。まず登壇者のうちのレギュラーのメンバーをご紹介します。ライフシフト・ジャパンの取締役で、リクルートワークス研究所の研究員もやっております豊田です。

豊田)豊田です、今日もよろしくお願いします。

大野)そしてレギュラースピーカー、明治大学大学院の野田稔さんです。野田さん、今日もよろしくお願いいたします。

野田)よろしくお願いいたします。

大野)1回目、2回目と非常に盛り上がった場が続き、今日3回目になりました。今日も頑張って盛り上がっていきたいと思います。まず今日の進行のご案内をさせていただきます。KX、カイシャ・トランスフォーメーションということで、カイシャの未来研究会2025の主催でお届けしております。カタカナの「カイシャ」という言葉には、昭和モデルから抜け出せない日本の古い会社みたいな、そんな想いを、このカタカナの会社という言葉で表現しております。2025というのは実は昭和100年を表しているんですね。昭和時代にできた古い日本の会社を、昭和100年までには変えようよ、というそんな気持ちで、カイシャの未来研究会2025という活動を、実質3年前からスタートしまして、コアメンバーの皆さんといろんなディスカッション、発信もしてきましたけれども、いよいよそれを社会実装するために本格的にやっていこうというのが今回の取り組みになります。これまでコアメンバーの皆さんとのミーティングの場というのが、とにかく青臭い話を一生懸命やる、密度の濃い場だったんですが、これを内内の人間でやっていてももったいないよねということで、この場を全部オープンにしようということでこのシリーズをスタートしましたが、1回目2回目やってみて野田さん、いかがでしたか。

野田)フォーラムって普通全部決めて、結論が出てから皆さんにお披露目。今回そうではなくて、最後の結論に至る過程を、全部皆さんと共有しながら、皆さんと一緒に作っていこうっていうことですよね。最初はこのことに、どうも視聴者の方々も戸惑っていたかなと思うんですけど、前回急にブレイクした感じがありますね。2回目くらいから急にわっと、一緒に作るってこういうことね、というモードに入ったくださった感じがすごくうれしくてですね。こいつはいけるなという感じですね。

大野)豊田さんどうです?

豊田)最終的にモデルを4/26までに作るんですけど、作るプロセスを全部さらけ出すだけじゃなくて、皆さんからいただいているコメントがこのモデルのあるパーツに入っていくという形に、なっていくんだと。その感触も既にあって。今日も是非そういう感じで。たぶんそれをいただければいただけるほど、最後に取りまとめる私が楽になるという。そういう部分を是非期待したいと思います。

大野)オープンディスカッションというかオープンミーティングという感じですね。前回のセッション2はサイバーエージェントの曽山さんに来ていただいて、想いドリブンということについてのお話を伺ったんですが、野田さんのほうから、僕の趣味は妄想なんだよねというご発言もあって。キーワードは妄想という形になったところもありますけれども。ちょっと前回のアンケート結果を共有させていただきます。毎回終了後にこのアンケートとらせていただいているんですが、なんとですね、今後のセッションにも参加しようと思ったが97%。レギュラー参加の方が増えていくんじゃないかと。そして、自分の会社も想いドリブンにしていきたいと思った、が60.5%。ディスカッションに参加したいという方も40%以上いらっしゃったり。このKX実装モデルが完成したら自分の会社で実験してみたいよねという方が4分の1以上というね。 

野田)ここがだんだん上がると思いますよ。

大野)そうですね。それで前回のコメントを少し共有させていただきますと…前回のキーワードは妄想だったんですけど、一人ひとりが想いを持ち、その思いを経営がしっかり受け止めて大きな流れにしていくっていう好循環を創出していくか。自分なりに考えていきたい、というコメントいただいていて、ここがすごく嬉しいなと思いました。そして個人と向き合い皆が妄想し続け、お互いが未来に向けて協力・共感しあうような組織・チームがつくれればと思いました。多くのヒントがありました、というコメントだったり、想いドリブンを進めるためには共感して尊重しあえる土壌、人としてのコミュニケーションスキル。つまり会社が変わるだけじゃなくて、一人ひとりが変わらなくちゃいけないというような感覚のコメントもずいぶんいただきました。

野田)今日のテーマの一つでもありますね、ここはね。

豊田)おっしゃる通りですね。

大野)最後にこのKX実装モデルを現実のものにするために、自分自身できることから進めていきたい、こんなコメントもいただいていて。今日参加されている皆さん、すごく当事者意識をもって参加いただいてる方が多いんじゃないかなと思いますし、今日もぜひチャットのほうに、どんどん意見質問投げていただければ、いただいたものが議論を膨らませていく材料になりますので、よろしくお願いいたします。そして、私たちのこの5つのコンセプト、毎回グラフィックレコーディングなどもやりながら進めていきます。今日はセッション3,旅の仲間バラエティということなんですけれども、旅の仲間という言葉は、私たちライフシフト・ジャパンが展開しておりますワークショップやライフシフトの法則と呼んでいるフレームワークの中の一つの大きなキーワードになっていまして、「旅の仲間バラエティ」という言葉を聞くと、野田さんから事前に指摘があったんですけど、会社のいわゆるダイバーシティ&インクルージョンみたいなことなんですかね、というふうに思われる人がもしかしたら多いんじゃないかなという懸念もあるよね、というご指摘がありました。「旅の仲間バラエティ」というのは、会社のD&Iのことじゃなくて、個人個人の人生を豊かにする旅の仲間というのを、会社に居ながらにしてどうやって広げていくかということなんじゃないかな、ととらえています。ちょっとこれをご覧いただきたいんですが、私たちが人生100年時代のライフデザインのフレームワークとして提供しているライフシフトの法則、という4つの法則があるんですけど、その第2法則が「旅の仲間と交わる」っていうことで、今日は一つ一つの詳しいご説明はしませんが、たとえば使者だったり友達だったり支援者だったり…時には門番だったり、こんなようないろんな人とのかかわりの中でライフシフトって進んでいくよねというようなことをフレームワークとして提示させていただいていますけど、こういう、一人一人の旅の仲間が豊かになっていく、そんな場に会社もしていきたいよねと、そんな想いでこの「旅の仲間バラエティ」という言葉を打ち出しているわけですが…

野田)結果として会社のD&Iが進むことに多分なるんだけども、会社のためにやるわけじゃなくて、一人一人が自分の…ユウジャの物語というか、これを展開する上でいろんな仲間がいるといいよねっていう話なので、どっちかというと個人起点から始まったD&Iと思ったほうがいいかもしれませんね。

大野)というようなことをおさえつつですね、「旅の仲間バラエティ」のディスカッションに入っていきたいと思います。今日のメインスピーカーはサイボウズの中根弓香さんとフリーランス協会の平田麻莉さんです。お二人、ちょっと顔出しお願いします。

平田)よろしくお願いいたします。

大野)はい、ではここからは豊田さんのファシリテーション中心で進めたいと思います、よろしくお願いします。

 

「いろんな人」って何だろう?

豊田)はい、あらためましてよろしくお願いいたします。この「旅の仲間」というキーワード、いま大野さんから説明があったり、あるいはこの研究会は第いま4ステージですけれども、第2ステージのときも分科会スタイルをとってやっていまして、そのときも分科会の一つに「旅の仲間」分科会というのがあって、中根さんにはそのときにも旅の仲間分科会に入っていただいて、いろんなディスカッションを進めてきました。中根さん、この言葉なんかいいな、と中根さん手を挙げていただいていた記憶がありますけど、この言葉からふと浮かぶ中根さんのイメージってどんなことですか。

中根)ゲームが進んでいく中でいろいろステージが変わっていって、いろんな人が助言をしてくれたり手を差し伸べてくれる中で自分が生きていくんだなという、そんなイメージがあるんですけど。今日是非議論したいなと思っているのは、私たち、100年生きるとしたら100年の旅じゃないですか。その旅の中で、会社っていうところも旅の仲間としてつながる場所であるんだけれども、どうも会社というところだけに、旅の仲間…というかつながりがクローズドになりがちな日本社会ってあるんじゃないかって思うんです。その背景の一つとして、もちろん働き方で可処分時間が足りないということもあると思うんですけど、本当はそんなことなくて、100年生きようと思ったときに、会社にいる時間なんて100年で考えたら短いはずで、その100年を豊かに生きるためにいろんなつながりがあって、その中から自分もいろんなつながりや情報を得る中で、自分のやりたいこと、ワクワクすることに、旅ってどんどん変えていけるものだと思うんですね。仲間っていうのも変えていけると思うんです。この仲間をより豊かにするということが、自分自身の旅も豊かにするということに繋がるんだと思っていて、…まとまりない話になっていてすみません。仲間を豊かにするっていうことは人生を豊かにすることと同じだから、それをいかに豊かなつながり作りができる会社にするか、あるいは世の中にするかということはすごく有意義なことだし、すごくワクワクすることだなという風に思っています。

豊田)はい、ありがとうございます。いまの中根さんの話を聞いて、以前リクルートワークス研究所がつながりそのものを研究したマルチリレーション社会という提言がある中で、会社、職場というのがつながりの深いコミュニティだ、という認識をしている人ってすごく少ないんですね。いる場なんだけど、つながりがあるって思っていないという人が…いろんなコミュニティと比較すると職場ってだいたい最下位なんですね。それが本当にもったいない。旅の仲間がいっぱいいる場になっているはずなのに、残念ながらなってないという現実があるなということも、このディスカッションの一つのポイントなのかなと思います。

 

豊田)平田さんは第4期からご参加いただいたという形で、よろしくお願いします。フリーランス協会という文脈、会社の中に意外と入りづらいということもあるわけですけど、旅の仲間とか会社とのつながりという中で、平田さんが思い浮かぶイメージとか気になることっていうのはどんなことでしょうか。

平田)実際私たちフリーランスって一人で仕事していると思われることもあるんですけども、実は会社員時代よりもすごく人とのつながりが重要というか、いろんなところで巻き込み巻き込まれというのが本当に大事になってくるんですよね。実際、私たちフリーランス白書とかで毎年調査をとっていて、受注経路、お仕事獲得経路とかも訊いているんですけれども、毎年一番多いのはやっぱり人脈なんですね。人脈とかと過去現在の取引先っていうのが多いんですけれども、やっぱり今自分が本当にいろんな方とお仕事をしている中で、一番その出会いの場になっていたのって、会社員だった頃のお仕事を起点とした出会いが本当に多いと思っているんですよね。もちろん学生時代の繋がりとかママ友とか、いろんなところで人生とかキャリア豊かになっているんですけれども、やっぱり自分の仕事ぶりとか、何を大事にして働いているのかとか、能力専門性も含めて一番理解してくれているのって、一緒に働いたことがある同僚たちだと思うので、そういう意味で会社がいろんな人と出会ってあの信頼関係を築ける場になっているっていうことは、その後どんなキャリアに進むにしても、すごく自分の糧になるものだなと思うので、会社で一緒に働いている時はもちろん、その先々も含めて続いていくような関係を、会社がどう提供してあげられるかっていうのは、すごく大事なポイントなんじゃないかなと思います。

豊田)はい、ありがとうございます。いまお二人がおっしゃった話もベースに置きながら広げておきたいんですけど、野田さん、先ほど冒頭に大野さんが言った話とも重なりますが、どういうバラエティなんだろうねという、そもそも論というところをもう少し共有しながら進めていきたいんですけれども、野田さん自身の中で、色んな人がいる場にしようというベタなスローガンにしているわけですが、いろんな人ってなんでしょうね。どういうことを大切にしていけばいいって思われていますか。

野田)D&Iじゃないぞって言いながらD&Iの話をするとですね、多様って何なんだろう、要するに我々っていろんな自分と違う考え方の人と交わることによって、明らかに自分の考え方って広がっていくじゃないですか。そんなものの見方あったんだ!みたいなね。それがやはり自分の人生をリッチにさせるってことだと思うんですよ。とかく多様っていうと、例えば男女だと人種だとか、国籍とかっていう属性が違う人が多様にいることがその多様だっていうふうに感じますよね。それはね、ちょっと浅いと思ってるわけ。今のD&I論でいうと表面的、表層的多様性なんですね。僕らは、深層的な多様性を大切にしたいわけでしてまさにいろんな身上の人色んな価値観の人いろんな人生感の人、そういう人ですね、もちろんそれがいろんなその属性から違いがでる出ることは確かなんだけれども、ものの考え方の違う人が色々いたほうがいいという、逆に言うといろんな体験をした人が集って仕事をするというのが、一番いいんだよね。何年も前だけれどもうちのゼミ生で、どういう人が集まったら創造的なベンチャーが成功するのかっていう研究をした人がいるんですよ。その人が言ったのが、非連続創造性っていう言い方。この非連続というのが重要で、いろんな体験を積んだ人が集まることが重要なんですね。それが非連続。創造性というのがまたミソでして、生物学用語であの進化の樹形図あるじゃないですか、あの進化のケースで以外と近いところで別れたようなもののことをいう。人間とチンパンジーなって分かれたばっかりじゃないですか。逆に言うと人間とひまわりなんかは、すごい遠くで分かれているんですね、要するに近いところで分かれているってことは、DNAが近いということなんですね。人間のDNAが近いっていうのは、多分共通言語なんだよね。言語が共通しているとあのコミュニケーションが上手く行くし安心できる。でいながら多様な体験を積んでる。多分これ、旅の仲間も同じじゃないかなと思っていて。同じ言語で語れるんだけれども違った経験をするような人、っていうのがいっぱいいるっていうのがやっぱりいいのかなっていうことを今考えるんですね。そうすると一番いいのは、新人教育は一緒に行ったんだけどみんなバラバラになってまた集まった、みたいなのが一番いいんだよね。そういう安心感信頼感、コミュニケーションが円滑でいながら全く違った経験を積んだ人っていうのが、旅の仲間たちとぼくは一番comfortableなんじゃないかと思いました。

 

どの会社にも本当はいろんな人がいる

豊田)ありがとうございます。あのバラエティーとかあの色んな人という、この言葉ちょっとしばらく深めていきたいんですけども、中根さんサイボウズという会社には、そういう意味で言うと働き方もいろんな人がいるイメージがありますけども、会社として大切にしていることだとかっていう部分はなんか多分色んな意味であるんじゃないかと思うんですけども。

中根)いま、豊田さんが「サイボウズっていろんな人いると思う」っておっしゃってくださって…本当色んな人いるんですよ。できるだけいろんなひと来てほしいなと思っているところもあるんですけど、でもいます、います。いろんな人います。いるんだけど、私思うのは、うちの会社だけじゃないと思うんですよ。どの会社も本当はいろんな人いるはずなんですよね、まずそこを見ようとしてるかっていうのはすごい大事なことだなと思っていて。先ほど野田先生がおっしゃったみたいに、表層的なダイバーシティを見て男性が多いよねとかいうけれども、いやいやちょっと待ってくれよと。50代男性といっても色々いるんですよ本当は。まずそこに着目しなきゃいけないなって言うのはすごく思っていて、私が注意しているところはそこですね。女性だから男性だから、子供が居る女性だからきっとこうだろうと思わない、っていうのはすごく大事なことだと思っています。ただ野田先生がおっしゃったように、安心みたいなのはあるので、安心みたいなところをベースに最初採用するときに、もうこの大学から、とか、あのこういう経験でとかそういうのであまり絞りすぎるとさすがにいろんな人ってでも同じような経験ばっかになっちゃうので、そこはあの多様性を確保してっていうところはもちろん意識的にやらなきゃいけないんですけれども、今いる人にもやっぱちゃんと着目をして、そこが本当は多様なんだっていうことを見るのがすごく大事なことだと思います。

豊田)なるほどですね。確かにあの今の話聞いて、仮に日本の中でも固いといわれた銀行だろうがなんだろうが、いる人の本当の部分はすごく多様なはずなんですよね。だけどそれが、多様であることが見えなくなっちゃうみたいな何かが。

中根)見えなくしてるんじゃないかなって思うところはすごくあります。

野田)仮面かぶってる場合もあるんじゃない。違うって思われちゃうと疲れちゃうから、同じふりしているとか。一皮めくると本当は全然違うのに、この会社の人間たるものこうあらねばならないみたいな枠の中に、無理やり自分を押し込んでるのか。深層的に多様なのに表面的に多様じゃないみたいな。

大野)つまり野田さん、一人一人多様な旅の仲間のことを、会社に入っちゃうと、オープンにできなくなっているということですね。

野田)可能性あるんじゃないかな。

豊田)すごくありそうですよね、その辺は。中根さんがおっしゃったのはそういうようにならないにしているって言えばいいんでしょうか。普通に一人一人が持っているその人らしさをそのままにするというか。

中根)そういう風にならないように頑張るってことですかね。たとえば、多様性の中でわかりやすいのに働き方ってあるじゃないですか。時間とか場所って自分の意思で選択しますよね。あれは、自分の意思で選択しますよね。で、選択したものが、他人から見えるんですよね。これによってあ、多様なんだ、ってわかる。性格とかって見てもわからないですけど。いろんな人がいるんだ、という認知ができる。これはわかりやすい多様性の一つ。そういうところから、多様でいいんだって。

野田)こないだ僕びっくりしたのは、出勤が苦じゃないっていうやつがいたことに僕びっくりしたの。全員出勤は苦だと思ってたから。僕は苦だから。ところが出勤が苦じゃないと言っているやつがいて、そんなやつも世の中にいるんだ、てびっくりして。人間色々だなあと。出勤、苦だよねえ。

大野)出勤が苦かどうかはわかりませんけど、出勤は無駄な時間だよねというのは、この2年間でみんな思い知ったと思います。

野田)でも彼は出勤があるから、その時間Audibleで勉強になってるっていうの。人はいろいろだわ。

 

どんな人にもその人しかもっていない視点や経験がある

平田)いま中根さんがおっしゃってたことすごくそうだなと思っているんですけれども、会社っていう単位で組織を考えたときに、どうしても人材をデモグラフィック属性で見てしまうというか、性別とか世代とか出身大学とか、データ上でわかる情報にばかり目を向けてしまいがちだと思うんですけども、私たちがいろんな組織とかいろんな契約形態の人たちとチームを組んで働いていくときに、基本的にそのデモグラ属性ってほとんど聞かないんですよね。それよりも何がしたいのか、どんな経験を積んできたのか、何が出来るのか。結局willとcanでしかプロジェクトのアサインって進んでいかないというところがあって。いまフリーランスの人とか、いろんな人が集まってプロジェクトを作って働いていくということをいろんなところで同時進行でやっているんですけれども、今それが普通の会社でも結構主流になってきていると思っていて。私がよく最近講演とかで話すスライドで、個人の流動化とチームのプロジェクト化と組織のネットワーク化ということをよく言うんですけれども、そういうふうにこれからは組織の壁とかがなくなってきて、いろんな人が必要な時に必要なぶんだけつながっていく、ということが起こっていくと思うんですよね。そのときに聞かれる、大事なのって属性の多様性ではなく、どういう人で何がやりたいのかによって人を集めていくと思うので、そういう多様性の情報を人事がちゃんと把握していくということは、こういう新しい組織の作り方をしていく上でも大事なんじゃないかなと思いました。

 

野田)平田さんちょっと質問してもいいですか。僕も120%アグリーなんだけど、僕も組織論の研究者なんで、こうなっていくと思っているんだけど。一方で、こういう風に言われたときに、個人でエッジが立っていないとやっていけないという風に感じちゃう人がいたりとか、やっぱり所詮個人なんだってことで、すごく不安だったりさびしくなったりする人もいますよね。そういう人たちに、どうやって、大丈夫あなたにも仲間がいるんだから、ということをわかってもらえるのかな。

平田)おっしゃる通り、私たちのイベントに来てくださる方も、すごく自己評価が低い方って多いんですけど、それって会社の中で自分を発揮できていないからなのかなと。求められている情報しか提供していないとか。そういうことをしていると、結局自分と横の席に座っている人って同じことをしているんですよね。すごく同質性の高い組織の中で、均質化された業務をやっていると、みんなできていること、当たり前のことしかできていない。自分には個性もないし特技もないし、みたいに思いがちだと思うんですけど、でも絶対どんな人にもその人しかもっていない視点とか経験とかがあるはずなので、それを1歩外に出てみることで可視化できるというか、思いのほか重宝されたとか、そういう気付きを得られるんじゃないかなと思います。

野田)もともとみんな多様で、すごくエッジが立ってるんだけど、会社の枠の中でそのエッジが立っていることを忘れさせられちゃってる可能性があるので、そうするとその時分のエッジの面白さみたいなのを気付かせる場を作っていけばいいんだ。

平田)そうですね。本業の中でというのもありますし、副業でというのも、両方ありだと思います。

豊田)今の平田さんや野田さんのお話を聞いて思い出すのが、ヒト・ドリブン経営でエンファクトリーという会社、専業禁止ということを宣言している会社ですけれども、その会社がエンターミナルという定期的なミーティングをしていて、それは、それぞれの人が副業していること自身をその場でこういうことしているとか、何かのときには妄想副業で、こんなことしてみたいと言わせるとか、そういう場を作っているという話を聞いたんですけれども。たぶんそういう場で、もちろんその人が何を思っているかもわかるし、だとしたら自分も、というふうに自分が開かれていくという形の…セッション4のつながりの話ともかぶってきますけど、まさにそういうつながりがそんな形でできてくるとか、自分がどういう人間であるか、まさに旅の仲間となんなのかと気づくことは、いろんなつながりが出てくるんだということに展開するなと、思い出しながら聞いていました。

 

コンフリクトになるか、議論になるか

野田)サイボウズさん、僕の目から見ると表面的にも深層的にもすごくバラエティに富んでいるような感じがしているんですけど、いろんな考え方を枠にはめないで表に出してもいいよ、と言ったとたんに、当然コンフリクトというのも起きてきますよね。

中根)めちゃくちゃ起きます。

野田)そういう時ってどういう風にみんな考えるというか…組織風土というか組織コンテクストになってます?

中根)上手く行っていることもあれば上手くいっていないこともあるんですけど、コンフリクトするときというのはどういうときかというと、心の動かし方ですよね。自分の価値観を押し付けようとするとやっぱりコンフリクトになるし、あなたの考えも聞かせてください、私の考えも聞いてくださいという形で表現するとコンフリクトではなく議論になる。アイデアの出し合いになる。コンフリクトするときもありますし、議論になるときもあります。なかなかそこは難しい。

野田)ある程度そこで大人じゃないとあかんことは事実だなあ。

中根)そうですね、あとはやっぱり、そうは言っても会社で目的があって、資源は限られているんでその限られたの人、もの、金の中で決定者は誰かっていうのを決めてまあ説明責任を果たした上で、ごめんもう今回はこれで行かせてください、と言うのでもう決めて進み、さらにそれで間違ってたらやりなおそうと、そこから振り返って学びにして次に活かしていこうっていう、もうこのサイクルで行くしかないんですね。

野田)なるほどなるほど。コミュニケーションルール…ルールじゃないけども、そこは理詰めでみんなある程度理解しないと。あのこれ何回か後にやるけど、ただのワガママと我がままは違うので、そこがワガママになっちゃったらば目標達成もできなくなっちゃう、そうすると何のために会社にいるんだかわからないしね。

中根)そうなんです。ワガママというのは利己のため、自分のためだけになるとワガママになると思うんですけど、私たちなんで集まっているかというと、共通の目的があるんですよね。まさに想いドリブンの話になるかもしれないですけど、その想いっていうのは個人がやりたい想いじゃなくて、チームとして集団としてやりたい想いと合致しているから私たちここに集まって出会ったんだよねと。チームとして想いを達成するために、というのがやっぱり大事だと思いますね。そこでワガママに行くのであれば、たぶんこのチームじゃないほうがいい。

平田)遠心力と求心力みたいな話もよくあると思うんですけど、一人一人が自立して我がままでスキルを発揮できる、遠心力を効かせるというのと、それが本当のワガママになってしまわないように、ちゃんとたずなというか、求心力としてのビジョンだったり、プリンシプルみたいな行動指針だったりとか、そのバランスがすごく大事なんだろうなと。 

野田)そういう中で、みんなが私はこうだけどあなたはちがって、と目的のために全力投球していると、全力投球している自分と違う人間を見ることってすごい学びだよね。違っていてもぬるぬるっとしていると多分大した学びにはならなくて。違いを全力で発揮しているのを傍で見ていると、こういうやり方あるんだすげえな、と思えるという。いい緊張感がお互いの刺激になるような感じがすごくしますね。

 

おすすめは兼務

中根)さっき副業の話、豊田さんされてましたけど、副業兼業というのは自分自身の良さやあり方、価値観を認識するためにすごく良い機会になるし、あるいは旅の仲間、関係性を作っていく良い機会にもなるんですけど、会社という面でいくと、私のおすすめは兼務なんですよ。会社の中で…本当にごく小さい会社だったらなかなか難しいところもあるかもしれませんけど、一定程度のことであればいろんな役割があって、そこにいろんな人たちがいるんですよね。自分が見ている範囲内だけじゃなくて、いま社内留学とかいう言葉もよくありますけど、あれでもかなり自分が違いを知れるし、旅の仲間を作れるし、会社の中だと一定の安心感はあるじゃないですか。言っても同じ目標で集まってるメンバーだし、やってることは違うけど、目指しているところ一緒だよね、というのもあると思うので、兼業とか副業までいかなかったとしても、ちょっと違う役割も体験してみる。

平田)本当にそうだなと思っていて、兼務というのもありますし、人事からアサインされた職務じゃなくても有志の分科会をどんどんやっていくみたいなものもいいと思うんですよね。あたとえばOne JAPANとかもそういうのの典型だと思いますし、ネットフリックスさんとかも、Employee Resource Groupsっていう分科会がいくつもあって、女性活躍とかLGBTとかいろんなテーマで、定期的に集まってディスカッションしたり、どういう風に会社を変えていこうとか、ボトムアップでいっぱい動いているらしいんですよね。そこで横のつながりもできたり、お互いの違いを理解したり。そういうこともできるので面白いなと思ったんですけど、トヨタのカイゼン活動なんかも、古くからそういう目的もあってやっていたと思うんですけど。そういう有志で立ち上げるのもありかなと思いました。

豊田)いろんなコミュニティとかかわることで自分自身がよくわかる、あるいは旅の仲間と出会えるからなんでしょうし。今話をしていて、平田さんが前、朝日でしたっけ、に載ってた記事で、私は起業はしないんだと。いろんなところと関わるという生き方を選んでいる、いろんなところに帰属意識を持てる、という風に確か書いてらっしゃったんですけど、その考え方がすごく素敵だなと思って、それはひょっとすると今後のスタンダードになっていくのかなと思いながら。 

 

帰属意識は掛け持ちできる

平田)本当に、私は帰属意識掛け持ちできると信じているんですけど。それこそ会社員になると自分の会社、部署というところでマインドシェアが占められることが多いから、副業でも本業が疎かになるんじゃないかとか心配する経営者もいると思うんですけど。もともと人間って家庭という帰属があったり母校という帰属があったりとか、趣味のサークルとかいろんなところに帰属しているわけなので、会社の中ということでも、兼務だったり有志の会に対する帰属も持てますし、組織の垣根を越えて、副業先とかも含めて、弊社は、という主語で話すことはできると思うんですよね。会社側というかマネジメント側も、そこを信じてあげてほしいなと思います。帰属意識が増えたからと言ってロイヤリティが下がるわけではないということは、共通認識が持てるといいなと思います。

野田) 一つのことにしか帰属しないのがそれがロイヤリティーの高さであり忠誠心だ、ということを僕らは戦国時代から叩き込まれてきてしまっているので、こんなふうに思いがちですよね。でも考えてみたらそんな人いるわけなくて。今平田さんが言ったように家族にだって愛着あるわけだし、今までの古くからしみついてきてしまったものを解放していくということが、今すごく求められているのかなと思いますね。今の話を聞いていて、僕もふっと気が楽になりました。なんかね、コウモリのように感じていた時があるんですよ、僕も。俺は一体どっちの人間なんだろうと。どっちも好きなんだよなと思っている自分がいてでもそれが今の平田さんの説明でふっと氷塊して、ああどっちでもいいんだと思いました。

平田) 多様性はむしろ個人の中に持つことこそ大事だと思っていて。会社の中も大事なんですけど、自分の中に多様性があると、いろんな視点で物事が見られるようになったりですとか、分人みたいな考え方もあると思うんですけど、すごくメリットが大きいと思います。

野田) ふっと肩から力が抜けました。

 

自分を知るには多様性に触れるしかない

豊田)旅の仲間の話は冒頭から言っているように個人起点の話だし、個人にとっていろんな人と出会える、あるいは自分にいろんなことが見えて気付くということが、多分とても豊かになれることがあると思うんですけれども、一方でそれがどう組織のパフォーマンスにつながるのか。そこらへんて一連出てきている部分で議論がありますよね。どうしても日本企業は多様であること自体がうまくマネージできないという部分があるから、どうしても同質化のほうに向かってしまうという部分があるという風に思うんですけれども。中根さん、サイボウズの中で、つながりが生まれるあるいはそれが組織のパフォーマンスに繋がっていくということで言うと、どんな取り組みとか留意しているというようなことはあるんでしょうか。

中根)これが参考になるかどうかわからないんですけれども、いろんな場面で…仕事ということでいうと、さっきあったような兼務ということとか、仕事以外でも多様なつながりを持てるようにするための施策はいっぱいやっているんです。たぶん、ほかの会社でもやられているんでしょうけど…例えば部活動とかお誕生日会とか、そういう活動ももちろんやっているんですけれども、最近というか去年すごく力を入れ始めたのが、キャリアインタビューというのをやっています。これは何かというと、自律的キャリアとかいろいろ言うじゃないですか。 キャリアを自分で考えろといったって、考える素材がまず必要だと思うんですね。でキャリアなんて100人100通りで誰も教えてなんてくれなくって、結局のところ自分がやりたいと思うことを自分で見つけるしかない。その時に何が大事かというと知ることだと思っていて、何を知るかというと、自分を知ることと選択肢を知ることだと思うんです。自分を知るということは、自分がいろんなところに行っていろんな多様性に触れて、自分が気持ちいいとか気持ち良くないと言うことを体感して知っていくしかないと思うんですけれども、サーベイをしてみてもいいですけれども。選択肢を知るというのは、もちろんいろんな制度や働き方がありますけれども、それ以外のいろんな選択をしているという人は世の中にたくさんいて、100人100通りの選択があってまずそれを知ってみようと。豊田さんはどんなことを考えてどの時にどんな選択をしたのか、それが大きな転職ということかもしれないし職種をチェンジしましたということかもしれないし、小さな変化かもしれないし。それをとにかくたくさん知る機会を持つ。で、自分に似た考え方や似たキャリアを歩んでいるのほうが多分安心するから、そういうところから見る、でもいいんですよ。で、いろいろキャリアを考える時ってあるじゃないですか、例えば入社してから3年経ったときとか、あるいは自分のライフステージが変わったときとか。そんなときにほかの人たちはどんなことを考えてどんなチャレンジ、選択をしてきたんだろうと言うことを、参考にしたい時にいつでも参考にできるというふうにして、キャリアインタビューをしたやつを録画でグループウェアに上げまくってタグをつけて、いろんな人のいろんな考え方を参考にしてもらうということをやったんですね。それは自立的なキャリアということでやってはいるんですけれども多様な価値観を知るとか、多様な考え方を知るということところにもすごくつながってるんじゃないかなって。

野田)僕ある広告会社でCDフォーティーズと言うことをずっとやってたんですけれども、その中で人生ショーケースというのをやってたの。まさに今みたいなことで、その会社は会社の中の人が一番好きな人たちが集まっているんですよ。外の会社のことを聞いてもそんなのその会社のことだ、って思うんだけど、自分の仲間がそんな風な人生歩んでいるっていうのを見ると、なるほど、そんなのできるんだ、っていう風になるんで。人生ショーケースって言ってました。

 

人のキャリアに口出ししよう

あともうひとつその会社でやっていたのは、人のキャリアに口出そうと言うのをやっていたんです。

中根)それは面白い。

野田)ただし否定はせずに背中を押してやろうぜということで、お互い人のキャリアに口を出そうと。僕のプログラムでは、いろんな子供のときの要素とか大人になってからの要素をバーッと集めて、あなたのこの要素とこの要素とこの要素を組み合わせたらこんな仕事だってできるじゃないというのを、他人がやるんですよ。自分がやると結局同じような能力要素を組み合わせて、今やっているのと同じような仕事しか思いつかないので、他人が岡目八目で勝手にやるの。あんたすごいよ、こんなんできるよ、っていうと、そうかよって言ったりしてるんですけど、所詮自分の中にあるものを分析した結果だから、じっと見ているうちに、結構ありかもしれないと思ってくるんですね。

大野)それは面白いですね。

野田)人生ショーケースでもって、他人のキャリアに口を出す。だって旅の仲間なんだからさ、お互いにアドバイスしたっていいじゃんと。そういうのをね、すごくよかったなと僕はちょっと思い出しました。

豊田)なるほど、口を出すっていうことでいうと、大野さん、私たちがやっているワークショップは キャリアというよりは正に人生そのものに口出しあってるみたいな場になっていますよね。これが旅の仲間感をどんどん醸成しているという感じになっていますよね。

大野)やっぱり自分のことを開示しあっているとどうしても介入したくなってくるというのがありますよね。それが結構きっかけになって… 野田さんがおっしゃるように自分で自分のことを考えるだけじゃなくて、岡目八目で他人のことを考えると言うのは全然違うアイディアが出てくるだろうし、自分の自己認知と他者からの認知って違うんだよねと言うことが、気づくきっかけにもなりますよね。

野田) 自慢じゃないけど豊田さんにjazz pianoもっとちゃんとやれよって言ったの俺だからね。

豊田)ありがとうございます(笑)うまくなってるわけじゃないですけど。

野田)うじうじ言ってるからやれよって言って、それでなんかベトナムまで演奏旅行に行ってるみたいだけど。

 

つながりの形は、契約に縛られるべきではない

大野)旅の仲間と言うことを会社側から見たときなんですけど、この研究会を始める時にアライアンスという本を一つ参考文献にしていたじゃないですか。あの本にも書かれていたけどひとりひとりの会社の外のネットワーク、人的なネットワークを会社に取り込むことによって、人的資産が増えるっていう話だよね。これは会社にとってめちゃくちゃ得な話のはずなんだけど、そこを閉じてしまったり、一人一人が自分のネットワークの話を会社で隠しちゃうとか、そういうことになったらその会社の人的資源ってめちゃくちゃ目減りするわけじゃないですか。隠れちゃうってことだから。会社にとってもそういうことがオープンになって共有されるということは、すごく資産価値を高めることになるはずなんだけど、 なんか日本の会社はそれがヘタッピだよなと思いますけどね。

野田)人の可能性が拡がるってことは、会社の可能性が拡がるってことだもんな。

豊田)そうですよね、確かにそれが多様な人とのつながりの…表層的な部分の色々みたいなことも実はそうですよね、アルムナイと繋がるとか、フリーランスの方とか、それらは質的なことですけれども量的な部分でも豊かになっていくということに間違いなくつながるでしょうし。そのつながりの文脈で最後にひとつ残された時間で テーマとして短い時間になるかもしれませんけど、ディスカッションしたいのがですね、いろんな人がいるとか、複業を奨励しよう…この字もフクという字もマルチのほうですけど、 こういうことを実現する上で日本企業が行っている採用のあり方そのものを ちょっと変えた方がいいんじゃないかという話をディスカッションテーマとしてあげました。いわゆるDXをもとに採用を変えようというより、もともと採用というのは採って用いるという、雇用前提の非常に旧弊な考え方で、なおかつ手法そのものも、…ひょっとしたら大野さんと私がいたリクルートという会社がそういう風にしちゃったのかもしれませんけど、非常にパターナイズされたやり方がまかり通っている、というのが現実ですよね。もっと豊かに人を集めるというあり方を再考することも、この旅の仲間を増やす上ですごく大切なんじゃないかと思うんですが、採用そのものを考えた時にどんなことをお感じになりますか、中根さんいかがでしょう。

中根)まさに採用という言葉って、もっといい言葉がないのかなって私もずっと思ってるんですよね。ちょうどサイボウズって1月が期初なんですよ。で人事本部の今年の目標みたいなことをやるんですけれども、採用という言葉を使うことももちろんあるんですけど、出来るだけ使おうとしている言葉は仲間集めで。仲間をどう集めていくか。それで私たちがいう仲間っていうのはチームワーク溢れる社会にしたいというのがあるので、そのpurposeに共感して一緒にやりたい、とうい仲間をどう集めるか、なんですけどね。

豊田) 仲間集め、その感覚が行き渡れば雇用形態とかなんとかは関係なく、広がりますね。

中根)そうですそうです。豊田さんはいま雇用形態とおっしゃいましたけどまさにそこもすごく重要なポイントだと思っていて、議論始めているんですけど雇用契約とか派遣契約とか業務委託契約 定義されている色んな契約があるんですけれども 本当は契約の形ではなくつながりの形というのは、契約に縛られるべきではないと思うんですよね。パーパスによって集まってきてそのパーパスとどれぐらいの近さでつながりたいか、というのが大事なのであって、そこが雇用だからどうとか派遣だからどうとか業務委託だからどう、というのは本当はないんですね。そこは単にお金の払い方とかいくつかのやり方がちょっと取り扱いが違うというだけであって、心の在り方とか理想に対する距離の在り方によってはかる、契約の在り方、心の距離の在り方がすごく大事だと思っているんですよね。これをうまく作れないかなと思ってるんですよ、実は今。

平田) 本当におっしゃる通りだと思っていて、私もいろんなチームに、業務委託だったりボードメンバーだったりで入ってますけど全部自分のホームだと思っていますし、年に一回ある時期に取引のあるところはちょっとこう親戚みたいな感じで思っていて、すごく心の距離は近いんですね。会社の方にはそういう人材と接していないとイメージがつきづらいみたいで、ちょっと参考になればと思ってこれもいつも使っているスライドなんですけれども、業務委託というと皆さん外注・アウトソースをイメージされることが多いと思いますだから、なかなか心の距離が縮まらなくて、先生扱いをするか下請け扱いをするかになります。実際タスク型としてバナーやロゴのデザインとか、SNの運用任せたりという、タスクを切り出して 業務委託のメンバーもいると思うんですけれども、私とかはもうその会社の名刺もポジションも持って、準委任契約の自動更新で、期限も成果物も限定せずに、広報マネージャーとしていくつかの会社を掛け持ちするというような働き方をしていたので、そうすると本当に採用と変わらないんですね。社内の会議にも全部出ますし、社員も、いつも会社に居ないけど社員の一人だと思ってくれていたりとか、外の人もその会社のメンバーだと思っていたりとかで、採用の代替手段として多様な人材を集めていくというのが増えてきているので、いろんなパターンがあるんだよ、ということは是非知っていただきたいなと思います。

 

つながりを作れる風土にする

大野)研究会のコアメンバーであるカゴメの有沢さんがね、2,3年以内にカゴメで働く人の3割から4割を業務委託にしたいってずっと言ってるんだよね。たぶん平田さんが言うような色んな繋がり方というのを、具体的にみんなが体験できる場ができていか無いと、そんな簡単にはいかなくて、タスク型ばっかりが三割四割になるというのは絶対ないと思うんだけど、おそらくプロジェクト型のような人もどんどん増えていくという、そういう風になっていくはずなんだけど、ちょっと遅いなという風に思っている。

野田)いまチャットにウメダさんから「受け入れ側も変わらないとな」とありますけど、本当にその通りで、 なんだか知らないけどすごくこっちは心理的にコミットして近づいているのに 向こうが一生懸命壁を作る会社ってあるんだよね。なんでそんなにうちなんちゅと…

大野)さっき平田さんが言ったような先生か下請けというのがすごく壁になっていると思いますね。

野田)フラットってないよね。上か下かしかない。

大野)旅の仲間にならなきゃいけないのに。

野田)ちなみにさあ、豊田さんと大野さん、僕野村総研時代にリクルートのコンサルタントだったじゃないですか。外の人だったんだけど、それがフェローになりましたよね。ある意味内の人、になったと思ってるんだけど、皆さんの意識ってどうだった?

豊田)あんま変わってなかった気もしますね(笑)確かに。野田さんはたぶんその前からリクルートのことを「うち」って言ってたんですよ。まさに平田さんと同じでそういうコミットメントされてたんですよ。だから位置づけはもう関係なかったんじゃないか、となんとなく思いますけどね。

平田)壁の作られ方のポイントになるなと思っているのが、接しているレポートラインの面積だと思っているんです。割とその外注扱いしてしまうときって、担当者が一人決まっていて、その人を通してしか業務のやり取りとかもないんです。でもすごく溶け込めている場合は、面でつないでいるんですよね。だから社内のキーパーソンとかまずはそういうところとつないで、本人が自由に社内でコンタクトをとれるようになったら、その時は本当に採用に変わるチームになるし。

中根)なるほどなるほど。

平田)面でつなぐのがすごく大事。

野田)契約でもって業務範囲なんか縛りすぎないほうがいいんだよな。

平田)そこが自由にできるのが、会社同士の付き合いじゃない、個人にチームに入ってもらうメリットだと思うので。

豊田)今の考え方、もちろんフリーランスの方がうまくコラボするうえでもそうですけども、そういうことに限らずもう少し大きな面で見ても同じことが言えそうですよね。点じゃなくていくつかの線とか面で接点を持っているということ自身が、いろんな意味でそれぞれが旅の仲間になりうる関係になるみたいな。中根さんがいろんなつながりを社内で作っていこうとされていることも、まさにそういうことですよね。

中根)そうなんですよ。まさにつながりを作れる風土にするのがすごく大事だと思っていて、つながっちゃいけない、じゃなくてつながりましょうと。つながりを作ることが出来ない人というのもいるじゃないですか。入ったばっかりの人とかね。そういうところにはやっぱりつながりを作っていいんですよ、作るのが難しければいつでもお手伝いしますよ、という形を、人事、会社としては積極的にやっていく。サイボウズの中も、サイボウズという会社ではあるんですけど、一つの大きな社会だと思っていて、それぞれ大きなパーパスがありますけど、パーパスだけではちょっと動かなくて、いいもの創りたいんだ、とかお客さんに届けたいんだ、という小さなパーパスがいっぱいあるわけです。で、自律分散型の社会にしていこう、それぞれが自分で意思決定して責任もってやっていくんです、っていうんですけど、分散型といってバラバラになっちゃ意味がないわけですよ。意味がないというか効果が薄かったり、達成するのが遅くなったりするわけなんですね。やっぱり大きな理想を達成して、より早く、みんながワクワクしながら達成しようと思うと、それぞれのパーパスを持ったいろんな人たちをいかに有機的につなげてワクワクする形にし、それを短期的なつながりじゃなくて長期的なつながりにしていけるかというのがすごく大事で。その長期的なつながりというのがサイボウズの中だけじゃなくて、サイボウズの枠から飛び出した人というのも含めて大きな旅の仲間というのをみんなが作れる形にすることによって、結果としてチームの理想が達成できていくんだと思うんですよね。本当につながり作りというのはものすごく大事だなと思います。

野田)人事が人と人とのつながりまで考えるって、いいね。

豊田)いいですよね。すごく大切ですし。事前のミーティングでも中根さんがおっしゃっていた、まさにつながりという次回のキーワードが出てきましたけど、あらためて、5つのキーワードというのが全部繋がっているんだということがよくわかってきますね。

 

大野)時間が来てしまったので、今日はいったんここまでにさせてもらって。次回の告知をさせてもらいたいんですが。10回シリーズの2回目から6回目までがこの分科会シリーズになっていまして。次回は2月14日、まさに今出てきたつながりに関する分科会ということで、「”つながり”リデザイン」ということについてリクルートの藤井さんと、ニューホライズンコレクティブ、 電通が作った戦略子会社ですね、野澤さんと野田さんで次回ディスカッションしていただきます。

豊田) 事前のディスカッションの様子をちょっとだけ荒く編集してあります。

 

野澤)才能は 人が見つけると思っているんですけど…

藤井)つながりの量ではなく質というのがものすごい勢いで浅くなっていると思っているんですよね。

野澤)例えば部署が一緒とか職種が一緒とか結構そういう箱で共通化されてしまうと、あんまりそこを探らないと言う感じはもしかしたらあるのかもしれません。

藤井)インディードも、ヘキサゴンのオフィスの六角形の中の一角だけ切り取って、エンジニアが五人いるんですけど、エンジニアとエンジニアの間にはホワイトボードがあって、 ちょっといいこれ聴きたいんだけど、ああそれってこうすればいいんだよ、という…

 

大野) 次回2月14日、「”つながり”リデザイン」セッション4になりますけれどもこちらのほうもぜひお越しください。それでこの会社のtransformationの議論をずっとして行く中で 参加していただいている皆さんの一人ひとり自分からというコメントも冒頭でご紹介しましたけれども やっぱり一人ひとりも変わっていかなきゃいけない、それは同時に必要になるんだよな、それが会社を変えていくんだよな、ということで 一人が自分の100年ライフをデザインする、そのことをディスカッションする場を、LIFE SHIFT JOURNEYということで、ご提供させていただいています。是非ご興味のある方はご覧ください。そして、 このライフシフトジャパンが広げようとしている、ライフシフト社会を作るというムーブメント作りの、この仲間もまた募集しております。ライフシフトパートナー、ということでこちらもぜひご覧いただけると嬉しいです。 それでは今日。少し時間過ぎてしまいましたがセッション3ということでご来場ありがとうございました。 平田さん中根さん本日どうもありがとうございました最後に一言ずつお言葉をいただきたいと思います。中根さんいかがでしょう。

中根)ちょっと返信を書くのに頑張ってしまっていました。ありがとうございます今日もたくさんヒントを頂いた気がします。 あとすごく細かいところというかテクニカルなところで言うと、野田先生が教えてくださった、人のキャリアに口出ししよう、これぜひやろうと思いました。 やっぱりコロナで、人のつながりというのがちょっと希薄化しているように思いますし、つながり作りが難しくなるような気もしているんですけれども、だからこそ意識的に仲間を集める、仲間とつながるということがすごく大事だなと思いました。 会社の人事としてはそこは積極的に繋がれるようなチームにしていきたいなと。会社の中だけじゃなくて。 外のいろんな人とも積極的に繋がれるように して行くのがすごく大事だなと思いました。

大野)ありがとうございます。平田さんお願いします。

平田)本当に勉強になりました。今おっしゃっていただいた、外とも積極的につながっていくということは、もちろん私の立場でも広げていきたいなと思うんですけれども、前半中根さんがおっしゃってくださった実は社内に多様性があるんだけれども見えていないだけじゃないかというのもすごく私の気づきになったので、デモグラ属性ベースの人の管理ではなく、もっといろんな人の多様性を見つめるマネジメントというのが拡がっていくといいなと思いました。

大野) 最後に野田さんひとことお願いします。

野田)この多様性の問題というかいろんな人の問題って日本人にとって一番苦手なところだと思うんですよ。それだけに真面目に取り組んだほうがいいだろうなと改めて感じました。 やってできなくもないだろうなと思いました。

大野)ありがとうございました。まさに多様性を考える時に、内外関係なく旅の仲間を作っていくという感覚でやることが大事なんじゃないかなと、今日のディスカッションを聞いて改めて感じました。 これで今日のセッション3終了したいと思います。 ご参加いただいた皆様ありがとうございましたまた2月14日セッション4でお会いしましょう。

豊田)ありがとうございました。

 

以上