Session Ⅱ「想いドリブン」分科会 |KX カイシャ・トランスフォーメーション ~人生100年時代の“会社”を創造する10のセッション~ 

Session Ⅱ 「想いドリブン」分科会 

at 2022/1/28

on Zoom Webinars 

 

人生100年時代にふさわしい「人と会社の新しい関係」の探索・提言を行っている「カイシャの未来研究会2025」(主査/ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO大野誠一)は、2022年1月20日より、『KXカイシャ・トランスフォーメーション~人生100年時代の“会社”を創造する10のセッション』を実施しました。

 

これは「カイシャの未来研究会2025」が2018年末の発足以来、3年間にわたって探究してきたKX(カイシャ・トランスフォーメーション)のビジョンを体系化し、昭和の経営モデルから脱却できない日本の“カイシャ”の変革に広く適用できるモデルの創造を目指して行ったものです。

 

セッションは全10回。分科会でのディスカッションも、モデルを言語化・体系化していく編集会議も、すべて公開形式で進めていきました。

 

このSession Ⅱでは、KXを実現する5つのコンセプトのひとつ、「想いドリブン」の分科会ディスカッションを行いました。

 

【メインスピーカー】

曽山哲人氏(サイバーエージェント)

野田稔氏(明治大学)

【ホスト】

大野誠一(ライフシフト・ジャパン)

豊田義博(ライフシフト・ジャパン)

 

熱いチャットコメント、アンケートコメントに溢れたSession Ⅰ

大野)皆さんこんにちは。ライフシフト・ジャパン代表の大野です。本日はKXセッション2にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。人生100年時代の会社を創造する10のセッションということで、先週1月20日からスタートいたしました。10回連続のオンラインセミナーということで、4月26日の最終回、セッション10に向けて、人生100年時代に会社というものがどんな風に変わっていったらいいのか、ということを議論をしていきたいと思っていますが、その議論のプロセスを全部フルオープンにして皆さんにも参加していただいて、この議論を深めていただければなという取り組みですので、ぜひ積極的にご参加いただければと思います。それでは今日の登壇者をご紹介します。まずはライフシフト・ジャパンの取締役で、リクルートワークス研究所の研究員もやっております豊田です。

豊田)豊田です。今日もよろしくお願いいたします。

大野)そして、レギュラーのメインスピーカー、明治大学大学院の野田さんです

野田)おはようございます。よろしくお願いします。

大野)今日のスペシャルメインスピーカーということで、ソヤマンことサイバーエージェントの曽山さんに来ていただいています。

曽山)サイバーエージェント曽山です。よろしくお願いします。

大野)曽山さんは「カイシャの未来研究会」主催者、コアメンバーで、設立の時からもう3年になりますね、ずっと一緒に議論を続けさせていただいていますので、今日もよろしくお願いいたします。

曽山)よろしくお願いします。

 

大野)それでは今日の進行にあたって画面共有をさせていただきます。先週からスタートしたんですけれども、この場のチャットとか終了後のアンケートのコメントなどでも、非常に熱いコメントをたくさんいただきました。いま画面に出ていますのが先週のグラレコですね。野田さん、豊田、大野でお話をした内容なんですが、これに対して終了後のアンケートでいろんなコメントいただいているので、まずそれをご紹介したいと思います。「どのコンセプトも『本当にそう!』というフィット感がありました。KXはまさに個人個人の働き方含めた生き方のトランスフォーメーションともリンクしていて、一人ひとりが自分ごととして考えて、たった一度のそれぞれの人生を豊かにしていくことに繋がっていったらいいなと思いました」こんなコメントもいただけました。そして「会社組織でなく一人一人を主人公にする理念に共感いたしました。今後の議論の方向性や、具体的にどのような取り組みに結び付けられるのか、興味深く思っております」ということで。ありがとうございます。そして「これからのカイシャの在り方についてこんなに熱く語っている場があったんだ!と驚き感動しました。私はいま一会社員(改めて考えると変な呼び方ですね)、ぜひ自分の在り方を考えつつ会社や上司にも新たな視点を伝える存在になりたいと思いました。」研究会の議論でも上司とか部下とか、そういう人事系の言葉って、なんか変な言葉多いよね、ということもずいぶん議論してきましたけれども、こんなコメントもいただいていますね。それから地方の方からですね。「オンライン開催とてもありがたいです。地方在住子育て中です。子供をおんぶしながらテレワークの合間に参加しました。上質な青臭い議論に参加できてわくわくします。ここで考えたことを是非自分の人生、自分の会社に活かしたいと思いました。」青臭い議論、というのは結構この研究会のキーワードの一つですね。

豊田)本当にそうですね。最初からずっと。

大野)本当にまじめに青臭い議論をしています。

野田)「上質な」青臭い議論ね。

大野)そうですね、続けていきたいと思います。そして「社員が個人として自律・自立していくことが基本だと思います。待っているのではなく、自分から変えていくことが大事ですね」まさに私たちもそうですし、この場に集まっている方々一人一人が、自分がスタートするんだ、自分が変え始めるんだ、そんな感覚になっていただけたら嬉しいなと思います。それからこんな方もいらっしゃいました、「『人事労務』分野を主に取り扱う弁護士として、日本社会における既存の働き方の限界や問題を感じることが多々ございます。企業側が変革を望んでも、法制度がついていきていない部分もあるように思います。とは言いながらも本日のお話を伺い、自分自身も現行制度にどっぷりつかって硬直的な考え方になっているなぁとあらためて気づかされました」ということで。他のコメントでも、例えば厚生労働省とか経済産業省などのお役人、法律を作る側の人たちにもこの場に参加してほしい」なんてコメントもいただきました。是非働きかけていきたいと思います。

野田)お役人の方一人一人って結構先進的にやろうっていう人多いんだよね。

大野)是非議論を深めたいですよね。また「私が応援するベンチャー起業家はほぼ例外なく『想いドリブン』を超えて『想い込み』ドリブンです。アイデアを社会実装するための現実からの学びが、KX実装モデルとうまく重なるといいなと思いました。」この取り組みは、KX、カイシャトランスフォーメーションを、社会実装するモデルを作ろうねということがこのセッションのテーマですから、是非そういうものに反映していきたいなと思います。そして「長生きリスクではなく最後まで幸せと思って過ごすために、今回のセッションや取り組みはとても大きな意味を持っていると思います」まさにその通りで、人生100年時代を一人一人がわくわく生きるためには会社が変わらなければいけないというのが、この研究会をスタートした一つの動機だったんですよね。まさにそういう取り組みにつなげていきたいと思います。それから先週野田さんからの発言で、カイシャの終身雇用ではなく社会で終身活躍というのが出てきたんですけど、「まさにこのために、一時期の通過点であるカイシャの中でどう生きるかという問題ですよね。KXはまさしくカイシャ対象なのでそれはいいんだけれども、私としてはその前に、並行して、個人のトランスフォーメーションが必要だと思います。KXだけじゃなくてK2Xとか、K&KXという考え方もあるなと思いました」

豊田)本当におっしゃる通りですね。

大野)そして「正直なところ、理想はよく判ったんだけれども、本当に地方の中小企業でこれから実装するためには翻訳が必要だと思います」というコメントもいただきまして、まさにこの翻訳をですね、このセッション2から具体的に進めていきたいなと思っています。

 

大野)こんなことで、先週のセッションは盛り上がりまして、皆さんからいただくコメントやアンケートでいただくコメントも、フルオープンで議論していく場の大きな材料だと思いますので、ぜひ今日もチャットのほうにどんどんコメント上げていただいたり、ご意見いただけたらなと思います。

野田)ちょっと僕から一言いいですか。議論の過程をフルオープンにしているというコンセプトが、まだちょっとみんなに伝わっていないなと思っていて。普通フォーラムをやるときって、ずっと内内の議論をして、曽山さんみたいな方の意見もいただきながら、出来上がったところでフォーラムってやる。今回はそうじゃないんですよ。これが作っている過程なんですね。なので今日はインプットはないのね。アウトプット作っている場なので、それに参加していただいているということでは、参加者の皆さんもどんどんインプットしていいってことですね。我々が今言っていることは、決して結論ではないということをぜひご案内ください。

大野)曽山さんいろいろタイピングしながら。前回のコメントなどを見て、まず感想などがあれば共有いただけますか。

曽山)言葉になったことで共感もできるし、言葉になったことで違和感があれば議論もできるので、それがすごく大事。僕もメンバーとして議論させていただいているんですけれども、これ本当に僕の正しいんだっけという自問自答はずっとあるわけです。今日100人以上の方が参加いただいていますが、私たちがその場の議論をこれからするので、うんうんそう思うよ、とか、いやいやこういう考え方もあるんじゃないですか、という、別のオプションを出していただけると、この問題提起がさらに広がるので、是非皆さんからも出していただけるといいなとお願いします。

大野)曽山さん既にチャットのほうに自己紹介書いていただいているので、ここに続いて皆さんどんどん意見、感想上げていただけたらと思います。それでは議論に入っていきたいと思います。ここからは豊田さんのほうでファシリテーションをお願いできればと思います。

 

想いを発するのが難しい社会になっている

豊田)今回のキーワードである5つのコンセプト、全体像を前回セッション1でご報告しましたが、今日は「想いドリブン」、人の“想い”こそが経営のドライブ、中核なんだ、だから「会社の想いを表現しよう、発信しよう」「人と会社は”想い”でつながろう」「一人ひとりが”想い”に気付ける機会を創ろう」といった方向性を掲げているわけです。この方向性をどうやって実現していくのか。あるいはこれ以外に大切な方向性があるのか、こんなようなことを、今日の…残された時間は限られますけど、この時間で深めていきたいと思います。で、順番はこのように書いているんですけども、一人一人が想いに気付ける機会を創ろうと、この話から今日のセッションはスタートしたいと思います。”想い”という言葉は、この研究会の当初からずっとあって、ステージ2でも4つの分科会にその時も分かれていたんですけど、その時も曽山さんにはこの”想い”の分科会に入っていただいて、個人が想いを持てずにいる、目が死んでいるみたいなキーワードをEticの宮城さんが言ったり、曽山さんからは”想い”を持たなければいけない、想いの高尚化みたいなことが進んでいるんじゃないかとか、いろんな議論がありました。曽山さん、あの時の話を振り返ったり、あるいは今いろんな活動をされている中で、”想い”というキーワードでどんなことが浮かびますか。

曽山)まず想いを言うのがすごく難しい社会になっているということが一つ。たとえば僕がこういうことがしたい、とか、こんな未来を掲げたい、というようなことを言うと馬鹿にされたりする感じがあるのが、感覚としてあります。いっぽうで、就職活動においては逆で、「君のビジョンは何なんだ」という問いがある。もうこの社会矛盾が僕の中ですごく納得いかないというか、反骨心というか、すごいおかしいな、というのがある。僕のエピソードを一つ紹介しますと、1998年に僕は伊勢丹に入る就職活動したんですけど、伊勢丹ではない別の会社の話なんですが―伊勢丹は最高の会社です、僕服も買いに行くんで― その会社で、曽山君のビジョンは何なの、と聞かれて、何を言ったかは覚えていないんですけど、何か言ったんですよ、想いを込めて。そうしたら、その反応があまりにも薄かった。で、面接が終わって、質問の時間をもらえたので、面接官3人いらっしゃったんですけどその3人に、皆さんのビジョンを教えてください、という風に投げたわけなんです。そうすると何が起きたかというと、「お前は?お前は?」みたいな感じになって、はいはい、言って出てきたおひとりの声。「俺ね、ビジョンあるよ1LDKのマンション買いたい!」って言ったんです。僕、本当にショックで。これから社会に出て、自分は社会に何かインパクトを残そうと思っている夢が1LDKのマンションですかと。…1LDKのマンションほしいかというと学生からするとほしいですけど、いやいや見る夢そっちじゃないでしょ、と。で僕はその会社受けるの辞めたんですね。自分がその人になっちゃうから。なので、夢を語ることを強要しながら、夢が大したことないとか、馬鹿にされちゃうし、それを聞く大人側の夢も大したことがない、というのがあったんで、僕は夢を馬鹿にされない社会を作りたい。だから、サイバーエージェントでまずは夢が馬鹿にされないようにしたい。なので「やりたい」って言われたらまず「いいじゃん」と言って、そのうえで突っ込むようにしています。

 

すべては妄想からはじまる

野田)僕はだいだい趣味が妄想なんでね。意外と妄想していると実現するんだわ、これが。そこが面白いんだよね。やっぱり考えるところからしか実現しないわけですから、最初は馬鹿にされるような夢かもしれないけど、それを馬鹿にしたら何も起こらない。

曽山)今さっそくチャットに入っていますけど、「1LDKの夢も馬鹿にできないのかも」と。ありがとうございます。これ結構大事な話で、その人からすると1LDK買うのがガチで夢の可能性あるので、これはこれで否定できないんですよ。その人がそれを夢だと思うことを否定はできないんですけど、自分がやりたい夢かというと全然違う方向だったみたいな感じなんですね。この、今の私のエピソードとか問題提起を皆さんはどう感じるか。こういうのは是非いただきたいです。めっちゃ嬉しいです。

野田)今チャットにすごくいいの出た。妄想から構想ができないと実現できない、その通りだよね。更に妄想を共有する仲間。仲間はほかのセッションでやるからいいんだけど。

豊田)前確か野田さんがおっしゃっていたと思うんですけど、想いそのものを持てなくなっちゃってるみたいな大人が、先ほどの曽山さんの話でもありましたけど、何をやりたいといわれても「いや、やりたいと言われましても…」という大人が増えていると。 

野田)増えてるというか、僕実際、前に社会人在学舎というところでミドルシニアの社会活躍のお手伝いしていたじゃないですか。何が難しいって、Will、意思を語ってもらうのが一番難しかった。僕ね、それでいいと思った。「お前の意思は何か」っていうの、もう勘弁しろよ、なんですよ。逆に言うと、そのほかのことをやりながら、自然に、こういうのが俺の意思かも、というそのプロセスを楽しませてあげないと絶対だめで、そのために僕がやったのは、自分のできるCanを可能な限り拡大するということをやったんです。何かやろうとしてもできないやと自己規制しちゃうので、そうじゃなくてあなたにはこんなことをできる、こんな可能性もある、と、まずそこを広げてあげることかなと思ったのね。いま、多くの大人が夢を持てない理由の一つは、自己不信に陥らせている。自信を失くすように会社がしてしまっているというのが、まず1個あると思っている。2番目は、できるな、と思っても、そうはいっても制約条件がこんなにあると… 要するにmustがでかいんですよ。もちろんね、一番でかいmustがお金なんだよね。そうはいっても会社辞めてお金なくなったらローン払えないしみたいになるので。Mustを理性的にできるだけ縮めてあげる。Canをできるだけ広げてあげて、Mustをできるだけ縮めてあげるという、まず土壌を整えたうえで、さあそこから改めて想い、なんだよね。

曽山)ああ、すばらしい。Canで自分の可能性を広げて自分に自信を持つって、どの年代でも大事ですよね。いきなりWillは無理なんですよ。私たちサイバーエージェントも毎年100人とか200人新卒採用を採っていて、入社したあとに子会社の社長になる人間はたくさんいるので、結構、100人200人が全員起業とかやりたいんでしょ、ってよく聞かれるんですけど、違うんです。7,8割はビジョンなんてないんです。ただ、2割がある環境でなんか楽しそうだからやりたい。これでもういいんです。その中で気が付けばいい。野田先生の言う通り、Canを書き出すだけで気付けるので、気付く材料を増やすことがすごく大事だなと思いますね。

 

野田)…ここにチャットが沢山すごくいいことが沢山出てくるんだけど、これレコーディングできているんだよね?

豊田)大丈夫です。

曽山)妄想ジャパンとか最高の言葉で、妄想ジャパンになったら日本社会の生産性めっちゃ上がると思うんですよね。

野田)これ絶対なくさないでね。

曽山)吉田松陰の名言とかも最高ですね。夢なきところに理想なし。理想なきところに計画なし。ああ、かっこいいこれ。

豊田)まさに構想ということに繋がっていく話ですよね。

 

「人生経験」「好き嫌い」「煩悩と妄想」

豊田)曽山さん、さっきどの世代でもCanが大事という話ありましたけど、曽山さんが以前学生に向けていろいろコミュニケーションされていた際のキーワード、あれがすごく心に残っているんですけれども。

曽山)これは学生向けに、将来のビジョンを考えるワーク…学生からもすごくリクエストされるんですけど、自分の強みとか弱みとか、もっと向き合いたいんで、ということで大学生に向けてやったスライドの中の一つなんですけど、ビジョンとか想いの材料って、大きく3つありますと。一つは人生経験。人生経験はよかったこととか悪かったこと、上手くいったこと失敗したことを、書き出したほうがいい。これはあなたしかもっていない財産。その次に大事なのが2番、好き嫌い。さっきの野田先生のCanの話にも近いんですけど、仕事って好きと嫌いがあると思うんですよね。計算好きだけど、考えるの嫌いとか。話すの好きだけど、分析は嫌いとか。この好き嫌いをみんなもっと出すべきだと。もっと書いたほうがいい。話すの好きだったらそれ突き抜けろ、他の人より強いはずだからと。で、3つ目、1番と2番は過去を含めた自分の材料なんですけど、3番からビジョンに行く。ビジョンというとハードルが高いんで、煩悩と妄想と。妄想、野田先生のパクっちゃってるみたいですけど。煩悩は、自分の決断を引っ張るような変な欲、これを書き出してと。金がほしい、ハワイに住みたい、家族が欲しい、美人や金持ちと結婚したいとか、なんでもいいから煩悩を書き出して、そのうえで妄想を膨らませると、①②③に繋がった妄想ってあなただけのものになるよと。こんな感じです。

野田)これいいね、額に入れて学生の部屋に飾ろうかな。人生経験のところで一言いい?僕子供の時、とりわけ小学校の高学年から中学卒業するぐらいまでのときに熱中したこととか大好きだったことというのがすごく重要だってことで、1Canの中でも原点のCan、指向性を大切にしていたの。そうしたら、いま行動遺伝学という学問があって、大体その人の遺伝が形として固まって外に出てくるのが、だいたい10歳~12歳くらいなんだって。小学校の高学年くらい。遺伝的な指向性とか強さにそぐわない生き方をしても、ほとんど成功できないんだって。氏より育ち、って言われるけど、実はいま育ちより氏と言われている。身もふたもないじゃん。だってどんなに頑張っても遺伝的に可能でないものは絶対に成功しないって本当に身も蓋もないなと。でもふと考え方を変えたら、じゃあ合ってるものとか好きなものならやればいいじゃんと。

曽山)逆に言うと合ってるものとか強みでやると、大活躍できる可能性があるということですね。

野田)これはキャリア論のサビカスなんかでも、子供の時にやっていたことの要素を仕事に取り入れろ、ということがキャリアデザインでも言われていて、見事に符合したんですよ。好き嫌いであり、人生経験であり、煩悩なんですと。これが子供の中に出てくるということは、自分の想いに気付くためには、一回子供の時に帰ってみるというのも方法論的にはありかもしれない。

大野)自分の中にあるということですね。

曽山)そうですね。

野田)原点に近いところに、本当のその人の想いの、原石みたいなものがあるということですね。

 

人は2つの絆があると強くなる

豊田)大野さん、今の想いみたいなことでいうと、ライフシフト・ジャパンでも個人のワークショップをしていく中で、我々は想いという言葉と同時に価値軸という言葉でコミュニケーションしていますけど、ワークの中で自分の想いに気付いていくみたいな、そういう瞬間がよくありますよね。

大野)そうですね、私たちは価値軸という言葉をよく使いますけど、平たく言えばこれから何を大事にしていきたいですか、っていうことなんですよね。今までは何を大事にしてきましたか、これからは何を大事にしたいですかという問いかけをしているんですけれども、そうすると、今までとこれからちょっと変えたいという人は、必ずそういう要素があるんですね。自分の内面を少し立ち止まって深堀する時間をたまに持つ、というのがワークショップの意味だと思うんですけど、日常生活の中だと、そういう立ち止まる時間がない。ワークショップで少し立ち止まって考えてみると、あ、実はこんなことだったんだな、これ忘れてたなとか、今野田さんがおっしゃっていたように、小さいころはこういうの好きだったけど最近ずっと忘れてたなとか、そういうことを思い出す、そういうところにきっかけがあるなと思うんですね。以前曽山さんがおっしゃっていたような、高尚…非常にすごいことを考えないと、ビジョンて人に言っちゃいけないんだという、ある種の同調圧力が日本には結構あるんじゃないかと。SNSが拡がった結果、こんなことが出来ますとかこんなことをやってますということの、レベルがどんどん上がっちゃったっていうことがあるんじゃないかと思うんです。その結果、それを言えない人が増えてきた。そういうところがあるような気がして。言っていいんだよという場を用意してあげないと、なかなか内面にも入れないしアウトプットも出来ない、そんな傾向があるような気がするんですけどね。ビジョンの高尚化ということをこのまえ曽山さんから伺って、その通りだなと思ったんですけどね。曽山さん、その辺今でもどう思われますか。

 

曽山)私、最近の最終面接とか1年目と話す機会を意図的に多く作っているんですけど、 ビジョン持たないといけないんじゃないかという強迫観念はいまだに強いですね。なので、なくてもいいんだよ、ということをみんなの前で言ってあげるということを何回も繰り返し言うと。だけど、もう一個言っているのは、合ったほうが、それがよりどころになるから成長が加速することも間違いないんだと。僕、セキュアベースリーダーシップという本がすごく好きで、人は2つの絆があると強くなりますと。何の絆かというと、一つは人との絆です。周りの人間関係が強ければ力が出ますよね、安心できるから。これによって安心ができます。もう1個は目標があるかっていう絆。目標との絆。これは、自分がこういうことできると嬉しいとか、それが煩悩だろうが妄想だろうが 1LDKだろうがなんでもいいんです。とにかくその目的があれば、そこに向けて人はあ頑張れる。とにかくこの2つがあるとブレにくくなるよと。人に引っ張られなくなってこっちに行くようになるから。たとえば、いい例か悪い例かわかりませんけど、グローバルで言うと宗教が心の支えになっているというのは、なるほど、強い精神を持つということはそういうことも大事なんだなってことで、会社における理念とか、会社のパーパスというのも、大きい意味で言えば一つの宗教だと考えられると、それに一緒に協働している人たちというのが支えになるんで、仮に自分にビジョンがなくても、組織とか会社が掲げているものに共感できるならそれに参加すればいい。そんな感じでとらえていいよ、という話はよくします。

豊田)まさにいまおっしゃった企業の理念とかビジョンとか、パーパス経営みたいなことも昨今言われていますし、重要性が再認識されていますけど、私たちが、この第3期活動でヒト・ドリブン経営の企業を探せという形で想いを11社の企業を探索して。どの企業もすごく想いを託す言葉を紡いでいるなということを感じましたね。と同時に、その言葉が、すごくかちっと決まっているというより、自分が実現するんだ、みたいな、あえて抽象的なものにして、ワクワクして、それを自分の立場でなんとかしていく、そんなような想いを誘発している言葉にしている、ということは大切だなと思います。そういうことも含めてかたちに、言葉にしていくのは大切だなと思いますね。

 

曽山)いまご質問いただきましたが、そうなんですよ、煩悩をさらけ出して弱みを見せることって、ハードル高いんですよね。僕がお勧めしているのは、煩悩は周りに出さなくていい、自分のメモだけで。弱みも、最初は自分だけでいい。それを自覚するだけで、こっちは弱みだから弱みに時間かけるんじゃなくて、自分が好き、とか自分の強みに時間をかけるという、自分の中での意思決定ができるだけでもすごく変わりますというのは私はよく言っています。

 

ビジョン浸透は「間違いだった」!?

豊田)はい。今日はこの煩悩というのがキーワードになりながら展開していますけれども、先ほどヒト・ドリブン経営、KXセッションで掲げているキーワードの中で、一つは想いに気付ける機会を創ろう、想いってどういうレベルでいいのか、そんな話が出てきたかと思うんですけれども、先ほどの企業のビジョンとかパーパス経営の話、想いを表現しようとか発信しよう、この話を少し深めたいと思います。1回目のセッション1の中でもこれに近い話があって、ビジョン浸透とか言われるとめちゃめちゃ引いちゃうよね、というようなキーワードがあって、野田さんが発せられた言葉ですけど、野田さん、その辺の想いをちょっと聞かせてください。

野田)あの…ちょっと反省するけど、俺ずっと組織開発のコンサルタントを長くやってきたけど、ビジョン浸透っていうのをずっとやってきたのよ。あれはね…間違いだった。

豊田)言い切りますね(笑)

曽山)革命的な発言ですよ。

野田)そうなのよ、それの教祖みたいだったんで。これやっぱ間違ってたね。浸透だから、上からだんだんしみこんでいくイメージなのよ。ということは、上からビジョン作ってるやつがいて、そこの組織のやつにはいいからお前らこれがビジョンだと、腹に入れろ、となっているんだよな、ここがもう根本的に昭和なんだよ。カタカナ会社。ビジョンてみんなの想いが化学融合を起こしながらだんだん形になるような、会社の想いの作り方の議論なのかもしれない。これをやらなきゃ絶対無理だと思っているの。ふと振り返ってみたら、ビジョン浸透なんて言う風に言っているけど、僕がやってきて上手くいった組織開発の仕事って、全部イマージェントとトップダウンの行ったり来たりで成功してるんだよ、現実には。某百貨店で―曽山さんのところじゃありませんけど―やったときは、最初は想いを持ったのは社長とか上だったんだけど、そのあとには社員のほうが盛り上がってきた。それが行ったり来たりながらし、最後、長期ビジョンはなんと社員が作ったんだよ。結局のところ、会社の想いというのは浸透させるものじゃなくて創発するものなんだ、ととらえなおさないと、意味がない。もちろんその中にはいろんな人がいるから、想いを集結するなんてことは無理。一つになんかならない。でも、これは一緒のところあるじゃんとか、根本結構似ているじゃん、というところでいい。そこを対話、ダイアログの中で見つけていくというプロセスで会社の想いは形作られるのがいいかなと。アメリカの会社ってトップがビジョンを作ってどーんと落とすのが、会社ってものだと思ってるんですよ。ところがヨーロッパの会社は必ずしもそうではない。ロイヤルダッチシェルという会社に、長期ビジョンはどうやって作ってますか、ってインタビューに行ったことがある。そのとき野村総研にいたので野村グループの長期ビジョンも持って行って、うちはこういう風にやりたいんでこういう風に作ったんだけど、そちらのも見せてくれっていうと、ないっていうんだよ。こっちが見せているのに見せないのか、というと、そうじゃないと。ロイヤルダッチシェルってイギリスに本社があるんだけど、たとえばイギリス本社がビジョンを作ったとします。そうするとオランダ本社が怒るんだって。なんでお前の言うとおりにしなきゃならないんだと。で、わかった、じゃあオランダお前が作れっていうと、ドイツ人てオランダ人ちょっと馬鹿にしているから、ドイツ人が怒るんだって。じゃあドイツ作れよって、いうとフランス人言うこと聞かないわけ。なんでドイツの言うこと聞かなきゃいけないんだと。で今度はフランス作れというと、イギリス人が、なんでフランスの言うこと聞くんだと。要するにどこにヘゲモニーを持たせても絶対合意ができない。なのでどういうコミュニケーションをとっているかというと、アーントヒルコミュニケーションというやり方をとっている。アーントヒルとは蟻塚。蟻塚とお砂糖の間に道ができる。でもこの蟻の道って、女王アリがお前らあっち行って砂糖とってこい、ってやってないんだよ。誰か蟻がお砂糖を見つけてそれを隣の蟻に伝えて、その蟻がまた隣の蟻に伝えて…とやっていっているうちに、だんだん道が整って蟻の道になるわけ。コミュニケーションプロセスの中で、想いをできるだけ創っていくしかない。これが当時ロイヤルダッチシェルに教わった、ビジョンの作り方ですね。

豊田)まさに上からではなく、一人一人の対話の積み重ねということですね。

 

会社なんて「ない」

野田)今tamakiさんという方がそういうことやっていると。そうなんですよ。会社の想いはどこから来るの、というと、たぶん昔は、頼んだコンサルタントからきている、これが一番ダメ。その次は社長から来ている。こういう会社はすごく多くて、それも一つのやり方だと思う。でも今は、トップダウン型だけではやっぱり会社の想いとしてよくないなという感じがしている。

大野)この研究会でも、会社を出会いの社にしようというメッセージを出しているわけですけど、カイシャなるものがあって上の人がいて、お上がいて、という幻想がけっこう根強くあるからそれは、お上はどうしたいの、っていう議論になるときがあるけど、それはないんだと思ってしまえば、トップもメンバーも同じ立場で対話をするという、そういうことですよね。

豊田)まさに会社はないみたいなキーワードがあったり、ビジョンみたいなものも、会社のビジョンというと悠久不変のものに感じますけど、人の想いも日々変わる、いろんなことがある。会社の想いも当然変わっていくということもあるわけですよね。金科玉条を掲げてずっとその言葉を大切にするというものとはおそらく違うんじゃないか、と感じます。大野さんはサイボウズの青野さんと懇意ですけど、サイボウズがやっているのはまさにその典型かもしれませんよね。

大野)サイボウズさんは去年からかな、毎年経営理念を株主総会で決議する、そこに至るまで1年間議論を積み重ねているわけですけども。

野田)今ちょうどダイキンの山田さんがアーントヒルコミュニケーションには時間がかかると言っていますけど、まさにその通りで、ロイヤルダッチシェルはずっと世界中でっその会議をやっています。その方法論もいずれ皆さんにお教えしたいと思っているんですけども。合意した時には実行が早いんだって。ちなみに、僕ロイヤルダッチシェルのあとアメリカのモービルに行ったんですけど、やっぱりトップが作ってどんどん落としてるっていうの。浸透キットみたいなのまであって、全部やってると。で、それすぐ動けるんですかって聞いたら、実行までにすごく時間がかかるっていうんだよね。要するに、実行段階で腹を落とすまでに時間がかかるか、腹を落としてから実行までが早いかの話なんで、トータルすると実はそんなに変わらないんじゃないかと当時思いました。いずれにせよ時間がかかるんだけど、その時間は意味のある時間なので、コストではなく時間のインベストメントだよと。

大野)一人一人の想いを共有するのってものすごく時間がかかることだと思うんですね。そこにある種の手間暇をかけることの価値みたいなことがどのようにバランスするかかと思いますが、曽山さん、人事の立場でその辺の手間暇のかけ方、悩まれる側面もあると思うんですが。

 

「役員は社員としょっちゅう対話している」

曽山)今この議論で、チャットめちゃめちゃ盛り上がってるじゃないですか。ちょっと少し異論を入れたいと思っていまして、ご質問とかチャットにあるように、対話だけをしていたらいい意見ができるのかというと、凡庸なつまらない意見になる可能性もあるということが結構大事なポイントで、サイバーエージェントの事業構造…後付けで言った言葉がどんなものかというと、「民主主義型の独裁」というのがサイバーエージェント。野田先生がまさにそうだとおっしゃってくださった…

野田)衆議独裁ということなんだよね。

曽山)まさにそうで、僕らは普段…コロナは別にして、役員はみんな社員としょっちゅう飲みに行ったりして、対話をずっとしているんです。ビジョンのためではないんです。ずっと対話しているんです。事業戦略のこと話したり、こないだ出したプレスリリースのこと話したり、 ずっと話しているので、コンテクストが一緒なんですよね。それがある中で…ちょうど僕ら2020年10月にパーパスを制定して、社会的にもサイバーエージェントの意味付けを伝えなきゃいけないフェーズになったねということで出したんですけど、この時は、社員みんなにパーパス意見ちょうだいって言ったかというと、言っていないんです。あくまで、藤田とか役員が拾っている言葉の中から、この言葉にしようと。具体的には「新しい力とインターネットで、日本の閉塞感を打破する」って僕らは言ったんですね。あえてグローバルじゃなくて、日本の閉塞感を打破するのが僕らの使命だと。これってかなりエッジが立った言葉だと思っていて、それぐらいの方がいいなと思っている。まさに民主主義型独裁という感じ。

野田)僕もさっきからボトムアップだけって言ってないでしょ、行き来しなければいけない。今の話で言うとサイバーエージェントの場合はたっぷりダイアログしているから、それが出てきた時に、社員たちはおお、いつも聞いている話だってなってるはずなんです。俺が言ったことも入ってるなとみんな感じるんだよね。そこまでダイアログをする、でも、わざわざそのために業務時間を削ってとかじゃないところに意味があって。時間がかかるというのを、どうやって隙間にエンベデットするかがコツだと思うんだよね。日頃の雑談が重要なのよ。上質な雑談じゃなきゃいけない。

大野)上質で青臭い雑談。

野田)それがないといけないな。

 

言わせる、そしてやらせる

豊田)今大野さんの言った青臭いというのも先ほどのアンケートコメントでのキーワードですけれども、この青臭いみたいなことも、現場で敬遠されちゃって、なかなか青臭い話をしなかったりする、夢みたいなことを笑うという話にも近いかもしれません。あらためて青臭さが今こそ、この「想い」というキーワードの中でも大切になってきている気がしますね。

野田)曽山さん、サイバーエージェントで青臭い話するとやっぱり馬鹿にされたりするの?

曽山)いやいや、絶対ないですよ。絶対ないっていうのは、されてたら本当にごめんなさいですけど、しょっちゅう飲みで、うちの会社こうしようとか、うちの事業こうしよう、っていう話をしているんで、学生が先輩社員と飲みに行ったときに、他社と違うところで前言ってくれたのが、サイバーの社員って愚痴が少ないですねって。めちゃくちゃうれしくて。ぶつかっているけど、未来について議論しているねと。そこはすごく感じますし、僕自身も飲み会の時にそういう話が多いので。困ってることある?とかは聞きますけど。その辺のところは、どっちに向くかですね。未来を話す時間が多ければ未来に向かうし、愚痴が多いってことはたぶん閉塞感だと思うんですね。

豊田)未来に向かう、それすごく大切な話ですね。大野さんも私もリクルート出身者ですけれども、リクルートの人間も飲みの場で青臭い話をずっとしてるみたいな人が非常に多かったです。ビジョンというよりは、あの会社にどういう提案をしようかみたいな現実的な話を。

曽山)それこそ未来ですよね。

野田)よく野村にいたときに、「本当はこんな風にしたいんですよね」といい方をすると、先輩から「やりゃいいじゃん」と一言言われるのが結構しょっちゅうで。で「いいんですか?でもこういう制約条件があって…」「お前がそれ言ったらおしまいじゃねえの?」って、結構そういうシーンがいっぱいありましたね、当時の野村では。

曽山)それはすばらしいですね。裁量権、権限移譲の、最高級の対話だと思うんですね。私も、社長の藤田に、私が人事になってから、ある事業部門の組織課題を見つけて、ああ、これ、藤田にいわなきゃと、「社長、こんな問題がありましたよ」僕の期待してた回答は「わかった。じゃあ俺それ仕切るわ」って言うのかなと思ったら、「ああいいじゃん、やっといて~ 以上」やりゃいいじゃん、のちょっと柔らかいバージョンですけど。この時に僕に何が起きたかというと、言った以上は引けない。「そうですね、はいわかりました」となって、僕が解決したんです。この、言わせてやらせる、という構図が、人の才能を活かすし、意見を言える風土を作ると思っているので、言わせる、そしてやらせる。この連鎖が多い会社はすごく強いなと思いますね。リクルートさんとかってまさにそういうイメージです。

野田)さっきの僕の話って、入社1年目の半年くらいで起きた話なんですよ。野村総研のレポートって文字ばっかりでちっとも面白くない。こんなレポート出したって全然だめですよ、もっと絵とかグラフとかやんなきゃならないし、プレゼンテーションをもっと画像を使ったりしなきゃいけないって、僕81年に生意気に言ったんですよ。そしたら「ふーん、やって?」って言われたんですよ。1年目の半年後ですよ?え、って。やるってどういうことですか?って言ったら、「次新春フォーラムっていうのがあるから、そこでお前の言うビジュアルプレゼンテーション?お前それそこでやれや」って言われて。びっくり仰天。1年目。「とにかくやれよ、言った以上」って言われて、そこからずっと徹夜が続いちゃったの。あれは強烈なインパクトですね。

豊田)言い出しっぺがやるというのはいろんなところで言われますし、リクルートの中にもその言葉とかその文化そのものがコアですけど、それも大切なカルチャーなんでしょうね。「想いを誘発させる」と。

野田)それをやらされるのが嫌で言わないと、言わないなら言わないでまた叱られる。「何も考えていないのかよ」と。結構地獄だったけど(笑)。なんかそういうこと、想いを想う癖をつけていた気がする。

 

「お前はそれでいいの?」

豊田)今野田さんがおっしゃったみたいに前向きな話、どんどんやれとか言われる話、私の原体験であるのは、「そうはいってもこういうことしか出来ない」って言ったら、「お前それでいいの?」っていう風によく言われました。お前はそれでええのかと。確かに俺は嫌だけど、結局仕方なくやっている俺はだめだな、と。自分自身がもっとポジティブに、何が出来るかっていう視点に変わらなきゃということを、先輩たちの酒飲み話でいやっていうほど叩き込まれたという経験がありますね。

曽山)それ大事ですね。本人に意見を言わせるのではなく、YesかNo、好きか嫌いかを言わせるという。まずは二択でもいいから、本人意思を引き出してあげるってことがすごく大事だなと思いました、いま豊田さんがおっしゃったことで。それが沢山言えて、それが承認されると、ちょっと自分の意見言ってみようかなとなりますからね。ハードル下げてあげるんのがいいですよね。

野田)リクルートでお前それでいいの、ってよく聞いたね~。

曽山)そうなんですね。リクルート強いな~

豊田)「お前は何がやりたいの?」以上に「お前はそれでいいの?」のほうが、私はリクルートの強さを引き出している要因のような気がしますね。

野田)あれ言われると結構つらいよね(笑)

曽山)結構つらいなって思ったんですよ、今。だけど、それが慣れてくるとみんなできるようになってきて、それが普通になるんですよね。周りの風景が全部それになるので、みんな自然にそれになるという、すごいハイレベルな組織だと思います。

野田)先ほど曽山さんのおっしゃった、Secure Base Leadershipで言っていることって、安全なんだから力いっぱい飛べということで、決して優しくない。厳しいわけですよ。そういうの、僕カレーライスみたいだなと思ってるわけ。カレーライスって普段辛いけど、最後まであったかい。その逆はアイスクリームで、普段甘いけど、いざとなると冷たいんだよね。カレーライス型の文化にしないと、今みたいな想いって生まれてこないし、だめだと思うんだよね。想いを出して、しかもそれをやりきらせるきつさみたいなものが、情報がないと想いって会社の中でうまく機能しないかもしれない。

 

全員にライトに聞き、少人数とがっつり対話する

豊田)さっきの話に戻りますけど、現場での対話そのものが生きていれば、必然的に生まれるんだろうなということと。今日曽山さんの話を聞いて、藤田さんはすごくパワフルで素敵な経営者ですけれども、たぶん藤田さんもすごく現場のことをよく知っている。現場と繋がっているって言えばいいんですか、会社が大きくなると、会社っていう、よく見えない存在に経営陣がいるということが往々にして生まれて、それがカタカナカイシャみたいなことを誘発している、カイシャが決めたことだから、ということがあると思うんですけれども、サイバーはそのことを大切にして、これだけ大きくなってからでも、距離を縮めることをたぶん腐心されていると思うんですけど、何か大切にされていることはありますか。

曽山)全社で全員にライトに聞くということと、ミクロに少人数でがっつり対話する、ということ両方をやっていている感じなんです。それがどっちかだけだとだめだと思っています。ざっくり言うと、全体で聞くというのは「Geppo」というパルスサーベイ、簡単に言えばアンケートですね。毎月、皆さん社内の人間関係どうですか、というのを、日経の産業天気図のように晴れ曇り雨で訊く。そうすると、全社傾向が、役員ごと、部署ごと、上司ごとにわかるわけです。これによってまず体の体温がわかる。カレーなのかアイスなのかという状況、あったかいのか冷たいのか。組織を俯瞰する、面で見るということをまずやる。そのうえで、役員はよくご飯に行っていますから、全社員の声を私が聴くことはできないけど、たとえば週に5人とのランチと飲み会を4回行けば、ランチ×2,飲み×2、これで20人、1か月80人に会えます。80人を12か月行けば1000人と会えるわけです。1000人と会うということを10人の役員がやれば、1万人と会えるわけですよ。これは、ゆるくやって半分でも5000人は入るし、ゆるい形でも曽山1人で500人と会えるわけなので…

野田)すごいなその発想~

曽山)この習慣だけやっておけば、ずっと入るということに対する自負はあります。だけど、それだと好き嫌いとかえこひいきで言ってるんじゃないのとなりがちだから、面で見るということも大事という、この両方が大事。

豊田)そういう方法論もすごく大切ですよね

曽山)でかくなったらでかくなったなりにやんなきゃいけないし、スタートアップはスタートアップなりに大変なことがあるので。少人数だと。

野田)そういう、本当に努力しているんだね。

曽山)怖いんですよ。社員の声聞いていないと怖いという、危機感のほうが強いですね。今後新しい人事制度出すときに、みんなに総スカンくらうんじゃないかと、すっごいいつも怖くて。その恐怖からやっているともいえるし、みんなと仲良くなっていたほうが話が進みやすいという前向きな話と同居している感じですね。僕という人間の中で。

野田)サイボウズさんも似たようなこと、恐怖からやったって言ってましたね。あの一人一人カスタマイズ人事っておっかなくて仕方なかったし、ガンガン人辞めるから仕方ないと。

大野)サイボウズは離職率30%くらいまで上がって、このままじゃ会社なくなっちゃうよねというところからスタートしていますからね。

豊田)その状況がまさに社員の想いに気づけないシンボリックな事象なのでしょうし、いろんなサインが現場には実はあるのでしょうね。それを曽山さんがおっしゃったような方法がすごく有効だと思うんですけど、そのことを経営陣…会社という言葉は使いたくないですが、マネジメント層にいる人たちがどう自覚しているか、どういう行動をとっているか。本気だし、それだけパワーがかかることをいかにやるかという覚悟にも繋がりますね。

 

曽山)ちょっとドライな表現なんですけど、会社と組織が成長するには業績が必要じゃないですか。業績が必要であるならば、社員一人一人の力を借りないと絶対無理なので、 社員に前向きに楽しく働いてもらうほかないんですよ、会社としては。なのですっごいドライなんですけど、業績のために人間関係を作っているというすごくドライな表現もできるんですけど、それくらい、ひと一人の感情に向き合うことが重要だということを経営が決めるべきなんですよね。だから寄り添う。寄り添いたいから寄り添っているわけじゃなくて、

野田)人道主義でやってるわけじゃないんだよね。経営的に合理的だと。

曽山)社会に向けた経営的にパーパスとか社会インパクトを出す仲間じゃんと、だったらみんなで一緒に話すのも重要だよねということなんですよね、考え方は。

 

その人の良さ・強みを引き出して戦えばいいチームになる

大野)はい、ありがとうございます。今日はもうあっという間に55分経ってしまいました。チャットもすごく、疑問だし持含めていただいていて。オンライン上のチャットではあるんだけど、皆さんが議論に参加していただけるという感じをさらに強く受けました。どうもありがとうございます。時間の制約がありますけど、今日の議論全体を振り返って、一言ずつ、一番頭に残ったことを共有しておきたいのですが、野田さんからお願いできますか。

野田)最後に曽山さんが言った、想いを持つとか、社員に気持ちよく働いてもらうということは、人道主義でもなんでもなくて、経営的に合理的なことなんだよねと。これをやらないということはちゃんとした経営やっていなくて、変な話だけど経営としては損しているんだよ、ぐらいの発想になるということに、あらためて気づかされました。なんとなく人道主義的にやりたくなっちゃうタイプだったんで、すごくよかった、今日は。

大野)曽山さんいかがですか。

曽山)僕はもう行動遺伝学がぶっ刺さった感じですね。人の運命が変な方に定められるのではなく、弱みと強みがやっぱりあって、特に子供のころの経験を掛け算するサビカスの話、僕またこの2つをあとで調べて本とか買おうと思ってますけど、こういったものを活かす。つまり、その人の良さ・強みを引き出して、そして戦えばいいチームになるんだということを再度確信できたので、そのために僕今日皆さんがチャットで共感してくれてうれしかったのが、言わせてやらせる、にすごく皆さん共感してくださって これを日本全国みんながやったらめっちゃいい社会になると思うので、是非広げていくのにお力を貸していただければと思います。

 

大野)ありがとうございます。今日はですね、ライブで阿部かなえさんがグラレコを作ってくださっているので、もう出来ているのかな、画面共有できますか。

阿部)はい、ほぼできました。時差で描いて補足していっているので、今できている段階のものですが共有します。

曽山)おおー、すげー、めっちゃ嬉しい~

大野)阿部さんありがとうございます。最後仕上げをよろしくお願いします。

阿部)はい、仕上げます。

大野)はい、今日はセッション2ということで、先週の1回目に続いて2回目になりました。このセッションまだまだこれから続いてまいります。来週2月3日がセッション3ということになります。サイボウズの中根さん、フリーランス協会の平田さん、そして野田さんということで、また是非お越しいただきたいと思います。

 

中根)…旅の仲間であれば、会社に そもそも自分はどのように生きたいのかというメタ認知

平田)フリーランス協会 ただの箱、プラットフォームで、やりたいようにやりたいことをやってください 契約時間だけ握っている、評価もしないというコンセプトを持っていて…

 

大野)というわけで2月3日16時から、中根さん平田さんをお招きしてセッション3,「旅の仲間バラエティ」ということでセッションを行ってまいります。また引き続きよろしくお願いいたします。そして今日のアンケートのコメントにもありましたけど、会社を変えていく、カイシャ・トランスフォーメーションと同時に個人のトランスフォーメーションも必要ですよね、ということで、私どもでは個人のトランスフォーメーションを進めるためのワークショップを毎月開催していますので、ご興味ある方は是非ご参加ください。そして、私たち今年からライフシフト社会を作るための活動に、パートナーとして活動していただける仲間を募集していますので、この辺も私どものホームページに詳細がありますので、ぜひご参加いただけるとありがたいと思っています。

豊田)チャットに上げましたのでご興味があればご覧ください。

 

大野)最後の一言だけいただきたいと思います。野田さん、来週に向けて一言お願いします。

野田)こうしてどんどんヒートアップしていこうと思いますので、皆さんと一緒に作っていくプロセスなので、是非次回もよろしくお願いします。

大野)はい。曽山さん今日はどうもありがとうございました。一言お願いします。

曽山)チャットで飛び交った言葉いろいろありますけれども、妄想 全員で妄想を広げていきましょう。ということでありがとうございました。

大野)それでは今日のセッション2、時間となりましたので終了といたします。ご来場いただきましてありがとうございました。