6月12日(金)20時~、LIFE SHIFT LIVE【大人女子会】「40歳、50歳、60歳。節目に考えるライフシフト」を開催しました。ゲストは、40歳で外資系企業に転職、50歳でソーシャル分野へシフトし、60歳で「人生のテーマ」を見つけた永井裕美子さん(インタビュー記事はこちら)です。当日は、50代を中心に50名の「大人女子」のみなさんにご参加いただきました。中には海外からの参加者もいらっしゃり、同年代ながらさまざまな立場の人と交流できる充実した学びの時間となりました。以下、概要をレポートします。

1.オープニングトーク(20:00~20:10)

人生100年時代を楽しむ『ライフシフトの法則』
河野純子(ライフシフト・ジャパン執行役員CMO)
100人以上のライフシフターインタビューから明らかになった、人生100年時代を楽しむ「ライフシフトの4つの法則」を紹介しました。

2.ゲストトーク(20:10~21:00)

「40歳、50歳、60歳。節目に考えるライフシフト」
永井裕美子さん(LiB取締役/ポテンシア共同代表)

永井さんをお迎えしたゲストトークタイムは、参加者から事前にいただいた質問に永井さんにお答えいただく形で進行しました(以下、敬称略)。

40代はチャレンジのとき!転職のチャンスも十分に

河野 まずは40代という年齢について考えていきましょう。最初の質問です。「30代は頑張ってる若手という位置づけでしたが、40代に入ってもう若くはない立場になりました。40代でこれまでの延長ではなく、想像もできないような進化をとげることはできますか?」
永井 もちろんできます。私は40代で2回の転職をしましたが、してよかったと思います。スピード重視のGE、100年の価値を考えるエルメス。全く違う環境に身を置くことで、人生が豊かになりました。転職ではなくても、趣味でもボランティアでも新しい人と出会うことでもいいと思いますが、何か新しいことをやったほうがいいと思います。

河野 私も40代で転職をして、グンと視界が広がりました。ところで、40代の女性の転職マーケットが気になります。今回の新型コロナウィルスの影響はありますか?
永井 この環境下で、確かに採用を抑えている会社もあります。ただ業種にもよりますが、40代女性に対するニーズはかなりあると実感しています。即戦力としての期待や、いま管理職でなくても、管理職を目指したい人を求めている企業も多くなっています。40代の登録者も以前より増えていますよ。

身体も変化してくる50代。残り時間も意識して

河野 続いて50代についてです。「50歳を前に、気力や体力の衰えを感じます」という声を多数いただきました。永井さんは50歳を迎えたときは、どのような心境でしたか?何か変化はありましたか?
永井 人それぞれだと思いますが、私の場合、結構大変でした。体調を崩したり、老眼になったり、50肩になったり(笑)。病院に行くたびに「加齢によるもの」と言われて。もうそれは受け入れるしかないですよね。これまでと同じようにできないと割り切った上でどう考え、調整していくかということですね。

河野 誰しも通る道ですね。そんな中、永井さんは50歳でソーシャル分野へのシフトをされました。「50歳での新分野へのチャレンジは勇気のいることだと思いますが、何が背中を押したのでしょうか」との質問をいただきました。
永井 60代でソーシャルという人はいますが、気力や体力を考えて、私は50歳での移行を目標にして30代から準備をしてきたんですね。なので計画通りにシフトしたということなのですが、もうひとつ大きかったのは、46歳のときに母が亡くなったことです。とても元気だったのに、60代であっけなく逝ってしまいました。人生80年と言ってもそれはみんなに与えられることではないと感じて、やりたいことをやろうと思ったんです。

河野 実際に50代で新しいチャレンジをされて課題だったことはありますか?
永井 30代からボランティでソーシャル分野での活動をしていたので、自分はこの分野でもできると思っていたのですが、実際には人的ネットワークが十分ではなかったと感じました。自分は大手企業での限られた分野でしか経験がなかったにもかかわらず、新しい分野での様々な課題に対して誰に相談すればいいのかなどの整理がついていませんでした。ライフシフトの法則の「旅の仲間」が足りていなかったんです。

河野 海外では人的ネットワークを戦略的に作っているようですね。
永井 そうですね。外資系企業時代には、よく大きな会議の前にワインを飲みながら会話をするネットワーキングの場がありましたが、ずっと欧米人は社交的だから好きでやっていると思っていました(笑)。でもそうではなかたんですね。ビジネススクールでも人的ネットワーク構築というのは、一つのスキルとして体系立てられています。人脈というと、人を利用するような感じがあっていい印象をもっていなかったのですが、そうではなくて、お互いに価値ある情報を交換できる関係づくりなので、まだまだ勉強をしなければと思っています。

60歳を前向きにとらえる

河野 さて続いて60歳についてです。本日は50代の方が多く、「60歳ってちょっと恐怖」という声も。永井さんはどんな景色が見えましたか?
永井 普段、年齢は気にしてないので、60歳も流れの中で自然に迎えるつもりでしたが、せっかく「還暦」ですから、自分を勇気づけることをと思って趣味でやってきたシャンソンのソロライブをすると決めたんです。まだまだソロライブができる実力ではないんですが、「還暦」なら許されるかなと思って、それを目標に頑張って練習をして。実際に誕生日当日にやったんですが、本当にたくさんの方に来ていただきました。そこであらためて、長年仕事をしてきた中で、こんなに素敵な人たちと出会ってきたんだなと感謝の気持ちでいっぱいになったんです。実は、当時ベンチャー企業でやっていくことも、自分でNPOを立ち上げることも正直、自信がなかったのですが、このソロライブで勇気をもらって、前に進むことができました。

河野 素敵ですね。年齢を活用するってこういうことですね。
永井 年齢って自分が使いたいときに使えばいいんだと思います。私はなかなか思い切れない時に、自分に言い聞かせるツールとして使ってきました。とはいえ、人生は有限なので、ときどき立ち止まって残りの時間を逆算してみることも大切かなと思います。

河野 60歳という年齢とともに、定年後の働き方に関する不安の声も寄せられています。「人生の時間軸が長くなっている中、60代、70代までどうしたら自分らしくやりがいのある仕事を続けていけるでしょうか」といった質問です。
永井 働くことを考えるときには、「稼ぐこと」と、「やりがいがあること」は分けて考えた方がいいと思います。「稼がないと」という人と、「年金があれば、最低限の生活はできるかな」という人では選択肢が違いますよね。「お金のことは置いておいて」ではなく、お金のこともちゃんと計算して、その中で選択肢を考えることが大事です。

河野 永井さんは計算されたんですか?
永井 しました。年金だけは足りないかなと考えて、貯金をして、必要な部分を終身保険にして。最低限の生活をできるようにして、あとはお金を持ってお墓には入れないですから(笑)、やりがいを大切にしながら働きつつ、有効に使っていこうと思っています。

いくつになっても悩ましい「次の自分の見つけ方」

河野 続いて、どの年代の方からも寄せられている悩みについてです。それは「自分のやりたいことの見つけ方」についてです。例えば「現在夫の海外赴任に帯同中。いずれ日本に帰国し、子どもの手が離れた時、何をすればいいのでしょう。自分の人生はこれでいいのか悩みます」。
永井 私は、目標って実はあんまり持ったことがないんですよね。こうしたいはあるけど、こうなりたいとかはあまり考えない。この方も今が不幸せということでもなく、もっと幸せになりたいとか、歴史に名を残したいとか、そういうことでもないんだと思います。たぶん今ではないところばかり見てしまって、日々の生活の中にある幸せに気づいていないのではないでしょうか。まずは今を見ること、自分が何が幸せなのかを見つめ直すことの方が大事なのではないかと思います。

河野 永井さんが「ジェンダーギャップの解消」という人生のテーマに出会ったように、みんな「これだ!」と思える何かに出会いたいんだと思います。
永井 私の場合、本当に偶然だったんですよね。新聞を読んでいて、日本のジェンダーギャップ指数に驚いて、これに取り組まなければと。強いて言えば、流れている多くの情報から、その時の自分の感性で必要なことをキャッチできることが大事かもしれないですね。自分の中でも面白いと思うのですが、ロジックが好きなので、何かを決めるときにはいろいろマトリックスを作ったりして考えつつ、最終的には感覚で決めています。考えても何がいいかはやってみないとわからないですからね。

河野 心を豊かにしておくことが大切かもしれないですね。「永井さんは行き詰まったとき、どう乗り越えていますか?」という質問もいただいています。
永井 川の流れをイメージして、うまくいかない時に逆流に向かって一生懸命泳いでも消耗するだけですから、そんな時は岩に捕まって体力を温存しようと考えることにしています。必要以上にあがかない。そういう納得の仕方で自分の気持ちを落ち着かせるようにしています。

河野 最後に女子会ならではの質問です。健康管理、美容のためにやっていることはありますか?
永井 45歳くらいからヨガをやっています。体を鍛えるだけでなく、精神的にいいなあと。やり始めたころは、最後の「死人のポーズ」でも、仕事のことばかり考えて頭が整理できなかったんですが、だんだん自分と向き合えるようになりリセットできるようになりました。
河野 それが美しさの秘訣ですね。ありがとうございました。

3.オンライン懇親会(21:10~22:00)

続いては、オンライン懇親会です。赤ワインを手にした永井さんの乾杯の音頭に続いて、4つのグループにブレイクアウト。自己紹介や今日の学びなどをシェアしました。各グループに永井さんも訪問し、直接の質疑応答や女子トークで楽しいひと時を過ごしました。最後に永井さんから「世の中、何がおこるかわからないからこそ、そのときそのときの自分を大切に。感性を豊かにして幸せな状態でいることが楽しく生きていくコツ」とのメッセージをいただいて閉会となりました。永井さん、ファシリテーターの皆様、そしてご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

<参加者アンケートより>

以下、ご参加くださった皆様からのコメントを抜粋してご紹介します。アンケートへのご協力、ありがとうございました。

・永井さんの軽やかさ!60才って若い!が一番の印象でした。
・今回のイベントは40代から60代の参加者が多く、自分を励ますプログラムでした。このイベントでなければ、全く接点のない方々と同じ経験&時間を持てたこがとても面白かったし、魅力がありました。
・永井さんのライフシフトの仕方が、かっちり決めてというより、しなやかにチャンスに乗りその中で徹底的に打ち込んで磨いてステップアップしている点が印象に残りました。
・永井さんの明るさ、すごいキャリアの方でも悩みながらここにたどり着いているということが印象的でした。
・60歳の節目に自分でイベントを企画しようと思いました!
・永井さんがとても楽しそうにお話されていたこと、自分自身は何が幸せか、ということをおっしゃっていらしたことが印象に残りました。キャリアを考えているうちに、視野が狭くなり、自分のやりたいことや幸せに気がつかない?犠牲にする?方向に行ってしまい、こんなはずでは・・と心や体調を崩す方も多いと思います。自分の幸せを考えるのはとても大切だと思いました。
・何をしているとき自分が幸せか、いまをみて、自分の幸せを見つめなおすこと、立ちどまって考えること、また、ピンとくる直観にはコンディションを整え、心を豊かにしておくことが改めて大切だなと思いました。
・辛いときは流れる川の岩にしがみつくイメージでという言葉が印象的でした。
・年齢を重ねるごとに出てくる様々な悩みや課題を率直にシェアいただけたのがとてもありがたかったです。また、人との出会いや環境がキャリア形成に大切な要素であると感じました。今回のようなオンライン開催が、地方と東京の距離を縮めてくれるのを楽しみにして期待しています。
・自分の残り時間を逆算して自分の好きなことをやること、体力づくりや趣味をもっておくことで、しなやかに生き生きと過ごせるのではないかと勇気が湧きました。