8月28 日(金)20時~、LIFE SHIFT LIVE『トリプルキャリアで目指す生涯現役ライフ』を開催しました。ゲストは、57歳で会社員を辞めて、フリーのコンサルタント・研修講師・執筆家としてセカンドキャリアをスタートさせた大杉潤さん(62歳)です(ライフシフター・インタビューはこちら)。

当日は、セカンドキャリアを模索中の50代の会社員の方を中心に約25名の方にご参加いただき、大杉さんのLIVEならではリアルな経験談に耳を傾けながら、生涯現役ライフについて考えました。特に「定年後の不安は働き続けることで解消できる」「独立後、誠実に2年続ければなんとかなる」という大杉さんの言葉に、勇気をもらった方が多かったようです。トーク後の懇親感も和やかに盛り上がり、充実した学びの時間となりました。以下、その概要をレポートします。

1.オープニングトーク(20:00~20:10)/人生100年時代を楽しむ『ライフシフトの法則」まず大野誠一(ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO)が人生100年時代を楽しむ『ライフシフトの4つの法則』を紹介しました。

2.ゲストトーク(20:10~21:00)
続いて大杉さんをお招きしたゲストトークタイム。大野が聞き手となって、事前に参加者からいただいた質問にお答えいただく形で進行しました(以下敬称略)。

大野 では最初に自己紹介をお願いします。
大杉 もともとは銀行員です。日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行し22年間務めました。今TBSのドラマでやっている半沢直樹と同じで、言いたいことを言ってしまうタイプで、出向も経験しました。不良債権処理の仕事が長く、45歳直前に、もっと前向きな仕事がしたいと思って東京都が立ち上げた新銀行東京に転職。創業メンバーとして4年間働きましたが、そこでも不良債権が多くなり、自分が採用した人をリストラしなければならないなど、つらい経験もしました。自分だけ残るわけにもいかず、人材関連会社に転職、2年後にはメーカーで人事と経営企画の責任者を経験し、57歳で独立しました。

趣味はビジネス書を読むことで、新入社員のころから年間300冊読んできたので、38年間で10,000 冊読んでいます。2013年から、毎日1冊ビジネス書の書評をブログで公開していて、それが今の仕事にも結び付いています。また ハワイが大好きで、2009年から毎日ハワイ情報をツイートしています。いまフォロワーは26万人になりました。

独立して5年目になりますが、現在の仕事の柱は4つです。
1.企業研修講師(経営戦略、キャリア研修)
2.中小企業向け経営コンサルティング
3.ビジネス書・コラム執筆、メディア出演
4.ビジネス書著者向けの書籍PR支援

1がメインだったのですが、コロナ禍のなかで大打撃。ただし仕事を1つに依存していなかったことが良かったと思っています。3のビジネス書の執筆は今後メインとしていきたい領域。これまで3冊書きましたが、一番売れたのが今日のテーマともつながる『定年後不安~人生100年時代の生き方』(角川新書)です。お金と孤独と健康という定年後の「三大不安」を、85歳まで働き続けることで解決しましょうという提案をしています。

大野 ありがとうございました。やはり今回のコロナ禍の影響は大きかったようですが、大杉さんはこの変化をどうとらえていますか?

大杉 私の場合、企業研修講師の仕事が4か月間、ゼロになりました。一方で、経営コンサルティングの仕事が増えましたね。中小企業の場合、売り上げが落ちたとかではなく、「蒸発」してしまったんですが、私は元銀行員ですから、複雑でよくわからない政府の助成金の活用法や資金繰りなどをお手伝いができる強みがありました。そんななかで、テレワークの導入に目覚める企業もあり、時代の変化が加速している感がありますね。

大野 そんな変化の中、今日はセカンドキャリアを模索している方が多く参加されています。まずセカンドキャリアへの移行をどう考えればいいのでしょうか。
大杉 ほとんどの企業は60歳で定年、再雇用で65歳まで働けるという仕組みをもっています。80~90%の人は「収入は落ちるけれどリスクがない」と考えて、65歳までの再雇用を選択しているのが実情ですが、私は逆にその選択が一番リスキーだと思っています。来年4月には「70歳就業確保法」が施行になり、70歳まで働く時代がきている中、定年からの10年間、1社だけに依存する働き方でよいのか、またその先はどうするのか。定年というタイミングでしっかり考えるべきだと思います。

大野 「70歳就業確保法」でも、雇用だけでなく、起業や業務委託契約なども企業が支援すべき選択肢としてあげられていますね。
大杉 その通りですね。社会貢献活動も選択肢に挙げられています。より多様な働き方を考えていく時代にはいってきたいま、私の体験からすれば60歳からの準備では遅いかもしれない。最適なのは50代かなと思います。

大野 働く=会社に行くこと、雇われることと考えると選択肢が狭くなってしまいます。しかし雇われない働き方はイメージがわかない、怖いと思う人も多いですね。
大杉 私も臆病なので、わかります。なぜ3回も転職したかというと、本当は独立したかったけれど、怖くてできなかったからです。家族の反対もありました。なので最初の転職で違う銀行へ、次の転職で銀行から離れて違う業種へ、地方へとだんだんと自分を変えていきました。それと会社員をずっとやってきた人にとって、「雇われない=収入がなくなる」というイメージがありますよね。確かに独立してやってみると最初からはうまくいかないものですが、会社員時代に実績がある人たちをみていると、皆さん試行錯誤しながらも数年すればなんとかなっていっています。

大野 大杉さんの場合、収入面ではどのように変化しましたか?
大杉 1回目と2回目の転職は年収アップの転職でした。その分、期待値は高く、特に2回目の転職先では1年のうち364日は働くようなハードな日々でした。これでは身体がもたないなと考えて、3回目は収入を下げて、地方企業への転職を選択しました。それでも独立後の1年目の収入はかなり下がりました。収入がゼロにならないように、前の会社で顧問をさせてもらったり、昔の銀行の先輩に頼んでコンサルティングの仕事を手伝わせてもらったりしましたが、一番ひどかったときは月収10万円という月もありました。ランチはマックで100円バーガーという日々も(笑)。それでも試行錯誤しながら続けていった結果、2年目からは少しあがっていき、3年目に会社員並みになり、4年目に会社員よりかなりもらえるようになりました。5年目のいまはコロナの影響が出ていますが、助成金はもらっていますので、会社員より良いですね。

大野 会社員が独立する場合、これまでの経験を活かしてコンサルタントになる人も多いですが、顧客を見つけるのに苦労するケースもあるようです。
大杉 世の中には困っている経営者はたくさんいて、コンサルタントは足りない状態です。みなさん、本当にいろんなことに困っています。この分野だったら助けられるという経験を持っていて、インターネットを活用すれば、顧客は見つけられるはずです。

大野 収入を得ていくためには、ビジネススキルだけでなく、キャラクターも大事でしょうか。
大杉 まじめに真摯に誠実にやっている人が成功すると思いますね。今の時代はごまかせません。インターネットを通じて人間性が可視化されてしまうからです。誠実に努力して、スキルをブラッシュアップしている人は結果を出していると思います。昔とった杵柄だけでは食べていけませんが、まじめに努力して2年やったら3年目からは結果が出ます。

大野 今日は30代、40代の若い世代も参加してくれていますが、いま30代の人たちはどんな準備をしていったらいいでしょうか。
大杉 その時々の世の中のニーズをとらえていくことは大事ですよね。ただキャリアは偶然の出会いの中でつくられていきます。だからとにかく目の前の仕事を全力でやることが大事です。私がキャリア関連のビジネス書の中で最も影響をうけたのは、藤原和博さんの『必ず食える1%の人になる方法』(東洋経済新報社)で、努力をすれば100人に1人の人にはなれる。それを3つの分野で実現すれば、その掛け合わせで100万人に1人の稼げる人になれるという考え方です。まずは1つの分野を極め、少しずらして3つの得意分野をつくることをお勧めします。

大野 年代を問わず、雇われている間にすべきこととしては、どんなことがありますか?
大杉 自分は何が一番好きなのかを見つけることですね。とにかく独立後は途中までは結果がでない。それでも同じことを創意工夫してやり続けなければならない。これは好きでなければ続きません。お金を払ってでもやりたいと思えることを仕事にすべきです。これだけはやりたいということをどう見つけるか。それを見つけた人が強いですね。ただ、自分のことはなかなかわからない。人に言われたり、話したりして気づくものです。そのため、いろいろなコミュニティに属すことは大事でしょうね。

大野 キャリアコンサルタントの資格を活かしたいという方へのアドバイスはありますか?
大杉 何か特長を出していくことが大切だと思います。私は資格は持っていませんが、自身の経験と関心、10,000冊のビジネス書で学んだこと、著書『定年後不安』でまとめた知見を活かして、「定年後のキャリア」に特化した独自の研修を開発して実施しています。周囲のキャリアコンサルタントの方を見ていても、特長のある方は仕事を持っていますね。

大野 独立に向けて行動を起こすきっかけがつかめないという方もいます。大杉さんが独立を考えたきっかけは、アメリカのセドナを旅したことだったそうですね。セドナで何があったのでしょうか。
大杉 セドナはネイティブ・アメリカンの聖地で、「人生が加速する場所」と言われています。言葉で表すのは難しいのですが、『セドナ-奇跡の大地へ』(講談社)という写真集があって、これを見ていただくとイメージが湧くかも知れません。私は47歳のときプライベートで訪ねて、人生観が変わるインパクトがありました。銀行と違うところに行ってみよう、いつか独立しようと心に誓ったんですね。ただ実際に独立できたのは10年後の57歳のとき。子どもたちの教育費に目途がついたときでした。

大野 最後にサードキャリアについては、どう考えていけばいいかお聞かせください。
大杉 私はこれまで数多くのオーナー企業のお手伝いをしてきました。創業社長はすごく元気なんですが、70~80歳の間にみなさん、働き方を変えていきます。体力的に厳しくなってくるので、仕事や働く時間、働く場所をだんだん絞り込んでいくのです。それこそがサードキャリアで、最後のライフワークといえるもの。生涯現役で働くコツです。

私の場合は、できたら大好きなハワイでビジネス書を書く仕事に絞りたい。そのためにいろいろな準備をしていますが、そのひとつが東伊豆に拠点を持って始めたデュアルライフです。現在はクリエイティブな仕事は伊豆でやると決めていて、年の1/3ぐらいは伊豆に住んでいます。まだ70歳までには時間があるので、できることから始めています。

大野 ありがとうございました。

3.懇親会(21:05~22:00)
続いて5分の休憩をはさんで、小グループに分かれての懇親会です。1グループ5~6人で、自己紹介や意見交換を行いました。大杉さんには各グループを10分程度ずつ訪問いただき、より個別性の高い質疑応答にご対応いただきました。

最後は再び全体会。各グループの代表者から、どんな話題が出たのかを発表いただきました。各グループとも、リラックスした雰囲気の中で、充実した時間が過ごせたようです。以下、その内容です。

・刺激的な時間でした。みなさん、いろいろな人生があって、いろいろな思いがあって参加されており、私も頑張ろうと思いましたし、参加されているみなさんの思いが叶うといいなと思いました(Yさん)
・私のグループは、会社員、契約社員、独立1年目のかた、来月独立される方と、立場が異なる人たちが集まりましたが、それぞれの視点から大杉さんの体験に学ぶことができ、有意義な時間でした(Tさん)
・大杉さんの話に触発されて、好きなことを仕事にしたい、自分を発信していくことが大事だという話で盛り上がりました。私もセルフブランディングをテーマに仕事をしており、そういうニーズは必ずあるとコメントいただき、気持ちがよくなりました(笑)(Fさん)。

最後に大杉さんからも一言。
「各グループを訪問させていただき、問題意識をもって人生に取り組んでいらっしゃる方が多いと感じました。私もたくさんの刺激をいただきました。ありがとうございました」

以上で閉会となりました。大杉さん、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

<参考図書>
『定年後不安~人生100年時代の生き方』大杉潤(角川新書)
『必ず食える1%の人になる方法』藤原和博(東洋経済新報社)
『セドナ:奇跡の大地へ』桐野 伴秋(写真) NA NA(文)(講談社)

4.参加者アンケートより
・トークの内容が理路整然としてとてもわかりやすかったですし、今後の生き方を考える上で参考になりました。
・経験者としてのリアルなお話を聞くことができ、自分でもできるかも、と思えた。
・講師と直接コミュニケーションがとれた点がよかった。
・老後の3つの不安「お金」「孤独」「健康」は、生涯現役で働くことですべて解消されるという考え方が印象に残りました。ぜひご著書を読んでみたいと思いました。またご経験上多くの方(経営者)が80代になると気力と体力の衰えを感じていらっしゃるということ、従って、サードキャリアではこれまでの働き方ではなく、「ライフワーク」に活動範囲をしぼるのが良いということが大きな学びでした。
・「定年後のキャリアに特化したキャリアコンサルト」の考え方には大変興味を持ちました。まさしく自分もやりたいと考えていた事だからです。もう少し、詳しくお話を聞きたかったです。
・転職は勇気のいることだけれど、挑戦することは人生を豊かにしてくれると感じました。
・セカンドキャリアに向かうにあたって、不安を少し解消できた。
・やりたいことに着実に向かってこられた軌跡を生き生きと思い浮かべることができました。子どもの成長とシフトチェンジのタイミングも重要ですね。
・2400冊もの書評を書いてきた精神的持久力。家族生活と自らの志を両立させるバランス感覚が印象的でした。
・起業はやってみると案外何とかなるという事を学びました。

アンケートにご回答いただき、ありがとうございました。今後のライフシフト・ライブの予定は、こちらからご覧ください。