Session Ⅰ KXを実現する5つのコンセプト |KX カイシャ・トランスフォーメーション ~人生100年時代の“会社”を創造する10のセッション~ 

Session Ⅰ KXを実現する5つのコンセプト 

at 2022/1/20

on Zoom Webinars 

 

人生100年時代にふさわしい「人と会社の新しい関係」の探索・提言を行っている「カイシャの未来研究会2025」(主査/ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO大野誠一)は、2022年1月20日より、『KXカイシャ・トランスフォーメーション~人生100年時代の“会社”を創造する10のセッション』を実施しました。

 

これは「カイシャの未来研究会2025」が2018年末の発足以来、3年間にわたって探究してきたKX(カイシャ・トランスフォーメーション)のビジョンを体系化し、昭和の経営モデルから脱却できない日本の“カイシャ”の変革に広く適用できるモデルの創造を目指して行ったものです。

 

セッションは全10回。分科会でのディスカッションも、モデルを言語化・体系化していく編集会議も、すべて公開形式で進めていきました。

 

このSession Ⅰでは、“カイシャの未来研究会2025”発足に込めた思い、これまでの活動(第1~3期)のアウトラインをお伝えし、KXを実現するための5つのコンセプトをお披露目しました。

 

【プレゼンテーター】

大野誠一(ライフシフト・ジャパン)

豊田義博(ライフシフト・ジャパン)

【コメンテーター】

野田稔氏(明治大学)

 

大野)皆さんおはようございます。ライフシフト・ジャパンの大野です。本日はKX、カイシャ・トランスフォーメーション、人生100年時代の会社を創造する10のセッション、そのVol,1、セッション1にお越しいただき誠にありがとうございます。これからスタートしていきたいと思います。

まず、今日の登壇者をご紹介したいと思います。まず、明治大学大学院の野田稔さんです。野田さん、おはようございます。

野田)おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。

大野)今日はよろしくお願いいたします。それから、ライフシフト・ジャパンの取締役で、リクルートワークス研究所の研究員をやっております豊田です。

豊田)豊田です、今日からよろしくお願いいたします。

大野)よろしくお願いします。これから4月26日のセッション10まで、10回連続のオープンセッションということで、人生100年時代に、会社と個人の関係がどう変わっていくといいのかなということを、その議論のプロセスを全部オープンにして、是非皆さんに参加いただきながら、この議論を深めていけたらなという想いでこのセッションをスタートしておりますので、よろしくお願いいたします。ご意見・ご感想、質問などございましたらチャットの方にお書きいただければと思います。一応バーチャル背景とか用意してありますけど、ほとんどぶっつけ本番でございます。生の感じで行ければなと思います。

 

会社を“出会いの社(やしろ)”にしよう

大野)まずですね、この「カイシャの未来研究会2025」という活動を、実は2018年からライフシフト・ジャパンの方では継続的にやってきておりますが、ちょっとその経緯を、振り返りながらご紹介していきたいと思います。

この研究会が立ち上がりましたのが2018年12月4日、ライフシフト・ジャパンの設立1周年記念フォーラムということで、「日本版ライフシフトの法則」フォーラムというのを開催いたしました。まだコロナの前ですからかなり密な感じで開催が出来ていたわけですけれども、この研究会の発足を兼ねたイベントという形でやらせていただきました。かなり多くの方に来ていただきました。この18年12月の立ち上げの時の私たちの動機は、人生100年時代と言われ始めていて、ライフシフトを個人個人が考えていかなければならないよなということを考えてソーシャルベンチャーを立ち上げたわけですが、個人がいろんな生き方・働き方の選択肢を拡げていくためには、会社というものも変わっていかなければならないんじゃないかと。研究会の名前についているカタカナの「カイシャ」というのは、古い昭和時代の慣習から抜け出せない日本企業という意味合いで使っていたのですが、この立ち上げの頃、どんな問題意識を持っていたかというあたり、野田さん、振り返ってみていかがでしょうか。

野田)いまの日本の企業って、どうにも切羽詰まって「変えなきゃならない」という感じがみんなあると思うんです。特にこのコロナに至って、海外の会社との比較もすごくあると思うんですけど、2018年のときはまだちょっと他人事でしたよね。「まあ昭和の会社じゃしょうがないよね~」という感じで、今に比べるともうちょっと牧歌的だった感じがあります。今はあの時とは全然雰囲気が違う。方向性は同じだと思いますけどね。

大野)はい。豊田さんどうでしたか?

豊田)ずっと長く日本企業を見てくる中で、この頃、野田さんもおっしゃっていたように「変わるべきなのに全然機運が高まらない。これでいいのか」とか「日本の企業はオワコンだ」とか、いろいろ言われていました。で「本当にそうなっちゃうのかな」と思いながら、果たしてそこに良い楔を打てるのだろうか。本当に出来るのだろうか、という半信半疑、心の中にざわつきもありながら立ち上げたような記憶があります。

 

大野)そうですね。このキックオフをした後、毎月少なくとも1回、コアメンバーの皆さんに集まっていただいて、かなり熱い議論が繰り返されましたよね。で、翌年の夏に、!st Stage、第1期の活動としてディスカッションしてきた内容を発表するために「会社を出会いの社にしよう!」拡大フォーラムというのを開催しました。会社っていうのはどういうものであるべきなのか、ということを議論していく中で、まさに読んで字のごとく「出会いの社」というキーワードを打ち出したわけですけども、この時にはサイボウズの青野社長にも飛び入りで参加していただいて、青野さんは「会社はモンスター」という本も出されてましたけど、この会のときには、さらに日本的に加工されて「会社は河童だ」と話されていて。つまり会社というものはバーチャルな存在で、会社なんてものは実在しないんだ、ということですね。それを青野さんはモンスターとか河童、という言葉で表現されていて。やはり社長だったり取締役だったりというのも一人のリアルな人間なんだよと。会社がすごいとか会社の意向、なんてものは実はないんだと、そういうようなことを青野さんはすごく強調されていて。そういう意味では、社というのは、中身からっぽなんですね。この出会いの社、会社というのは社なんだよね、じゃあ会社ってなんなんだろうね、という議論をしたと思います。この時の議論、野田さんいかがでしたか。

野田)いま若干僕の写真が映ってますけれども(笑)、この時は理想を一生懸命考えた感じがいたしましたね。今までの既成概念を、どうやったら、自分たちも含めた頭の中からとっぱらえるかということを、一生懸命、僕なんかも考えたと思います。実際にできるのかどうか、とか、本当にそんな会社が存在するのかどうか、社みたいな会社なんてあるのかどうか、ということについては個々の段階ではまだそんなに確認をとっていなくて。やりたいこと、ありたい姿について熱く語ったなという記憶がありますね。

大野)そうですね。このキーワードは、コアメンバーのリクルートHR統括編集長の藤井薫さん…漢字博士ですね、この人がこのキーワード出してくれました。その時豊田さんどんなふうに感じました?

豊田)実はこの言葉が生まれるまでに紆余曲折があったと記憶していまして。一度我々事務局がみなさんとのディスカッションをもとにまとめたプラン…第4回、本当は5月にやりたかったので4月くらいにやったと思うんですけど、「これ全然響かないね」という風にいろんな人から、実はぼろくそに言われたというプロセスがあって。待てよ、我々は大切なものを見失っているかもしれない、日本の会社って確かに問題もあるけれどもいろんな良さもあるかもしれない、批判とともに見直しをするという中で、会社そのものをもっと素敵な場にしていきたいよねと。確かに会社なんてないんだけど、でもそこに集う人たちが人生の主人公になれるような、そういう場を再度作る、という言葉の中で、全体のディスカッション、個別のディスカッションをしているときに、藤井さんからこんな言葉をもらって「これだ」と、いろんなことが結びついた記憶があります。

大野)そうですね。当初の議論では、最近こそ言われているメンバーシップからジョブ型へ、という議論だったり、構造論みたいな話をしていたんだけど、ちょっと違うんじゃないか、というような議論が結構深くできたと思います。やっぱり日本は欧米の新しいものをちょっとパクりたがる、という傾向があって、僕たちの議論も前半はそんなところがあったのかと思うのですが、もっと日本の歴史とか文化とか企業風土といったものを見直していくというようなこととコラボレーションした結果として「社」みたいなキーワードが出てきたと思うんですよね。

 

変身資産が生まれてくるエコシステム

で、その次に2nd Stageに議論が進んでいって、より幅広い人たちを巻き込んだディスカッションの場を作りたいということで、2019年の12月にワールドカフェ形式、このときは限定30社という、規模を拡大するんじゃなくて数を絞り込んだうえディスカッションを深めようということで、こんな膝詰めのイベントで、出会いの社一緒に作ろうよと、そのためにはどんな課題があるかな、ということを議論した経験があります。このときのディスカッションは野田さん、いかがでしたか。

野田)これは、本当に面白かったね。またやりたいなという風に思っているんですけど、我々の考えていたある種の理想というものが、本当に可能なんだろうかと議論していくうちに、なんとなくこの辺から「これいけるかもしれないね」という感じに…僕自身はなった感じなんですね。いけるかもしれない、でも同時に、やろうと思った瞬間にいろいろと問題も見えてきたというか。やりたいんだけどこういう抵抗勢力いるよねとか。そもそも心の中に変わるのを妨げるブレーキみたいなものがあるよね、という話がこの時出てきた気がしますね。よりリアルに近づいたというか。

大野)はい。豊田さん、この時のワールドカフェで記憶にあるのはどんなことですか。

豊田)本当に思い出深いですね。4つの島でやってるんですね。「想い」領域をキーワードにしたテーブルと、「旅の仲間」のテーブル、「変身資産」のテーブル、「主人公」のテーブルがあって。実はこの左側の大きな写真は「変身資産」領域の島なんですが、この手前右側にいる三菱商事の和光さん、この研究会ですごく活躍していただいて、残念ながら急逝されてしまったんですけれども、この変身資産領域でのディスカッションから、変身資産を見える化するようなツールを作るのがいいよね、という方向性が出てきて。それが実は翌年から1年間かけて私たちが作った「変身資産アセスメント」、まさにそれが生まれる場、ここでやっていこう、ここでやると良いんじゃないか、という手ごたえが得られた、そんな場としてとてもよく記憶しています。

 

大野)そうですね。では次のスライドですが、いま豊田さんからも話がありましたが、この2nd Stageを経て3rd Stageでは、この方向性・コンセプトを社会実装するために、具体的に何かできないか、単なる研究とか発信だけじゃなくて、何か開発ができないかな、ということで、一つはいま言葉が出ました「変身資産アセスメント」というものを開発しようということで、2020年1年間かけて開発に取り組みまして、昨年の春にリリースいたしました。こういう具体的なプロダクトを研究会の中からリリースしていくということも第3ステージで取り組んだのが一つと、それから、こういう新しいマネジメントにチャレンジしている会社をちょっと深堀していこうよ、ということで、約1年かけて「ヒト・ドリブン経営」ということで企業研究をやりました。その時の研究対象になった企業の皆様などにご登壇いただいて、昨年の夏、「『変身資産』が会社を変える」という約200社くらいのオープンフォーラムを、企業の方にもご参加いただいて、開催いたしました。3rd Stageの一つの成果発表の場でした。この頃から完全にイベントはオンライン化してきましたけれども、オンラインで開催をした昨年のオープンフォーラム、非常に密度の濃い3時間だったと思いますが、このとき野田さんどんなことをお感じになりましたか。

野田)やっぱりあの「変身資産アセスメント」作るの大変だったじゃないですか。なので、あれを議論して作ったことを思い返しながら、どのくらい皆さんにこれが受入れられるのかな、なんてことを…私、だいたいフォーラムって自分が一番楽しんじゃうタイプなんですけども、この時は結構ドキドキしながらやってた記憶がありますね。でも、併せて我々がいろいろリサーチした、ヤッホーブルーイングさんとかね、そういう方からどんどん積極的な意見が出るので、背中を押してもらったという会だった。もう一歩先に進んだ、ということがよくわかった会だったですね。この辺から我々自身もフェーズが変わったような気がします。

大野)そうですね。豊田さんいかがでしたか。

豊田)はい、今野田さんにもおっしゃっていただきましたけど、「ヒト・ドリブン経営」というキーワードでの11社の取材、このうち3社の経営者の方にご登壇いただいたわけですけども、野田さんが最初に行った「出会いの社」みたいな会社は本当にあるのかな、でもどこかにあるんじゃないか、ということで見つけに行ったらやっぱりあったし、そこにいる人たちはいろんな気付きを得て、まさに人生の主人公としてすごく素敵なライフシフトを遂げる…ライフシフトと言っても会社を辞めるわけではなく、いろんなことをどんどんやっていく、そういう人たちが生まれている。そういう会社やっぱりあるじゃない、と。なおかつそういう会社を見ていくと一つ一つすごく素敵なんですけど、意外と共通な…変身資産が生まれてくるエコシステムみたいなものがあるよねと、それが見えてきたのもワクワクするような体験でした。それを皆さんとシェアできて、なおかつ経営者の皆さんが、我々が作ったモデルに「なんかこの感じ、いいよね」という風に言っていただけたのも、とても嬉しく記憶しています。

 

クローズだったワクワクをオープンに

大野)はい。そして次のスライドですが、そのような経緯を経ていよいよ第4期、4th Stageに今日から入っていくということで、会社というものがどう変異・変容していくのかということを、皆さんと一緒に考えていこうという、今日から4月の26日までの間に、合計10回というオープンフォーラムを開催しながら、この議論を深めていきたいなと思います。この研究会のコアメンバーには、カゴメの有沢さんとかユニリーバの島田さん、サイバーの曽山さん含む、HR業界の最前線のメンバーに入っていただいていますので、次回以降は分科会なども含めて、5つのキーワードを出しています。「想いドリブン」「旅の仲間バラエティ」「つながりリデザイン」「我がままセントリック」「カイシャ卒業宣言」ということで、いわゆる固い、学術的な経営・マネジメントの論というよりは、もっと青臭い、しかしリアルな議論をしていきたいなと考えておりまして、その中で人生100年時代と言われたり、VUCAの時代と言われたり。その中でテクノロジーの進化がものすごい激しいスピード感で動いていて、先が見通せない中で、会社と個人との関係はどう変わっていくのかなと、この4月までの間で深めて行けたらなあという風に思っております。ここまでの全体経緯を振り返って、この第4ステージにかける大事なアジェンダというか、そのあたりどうお考えか、一言だけお二人にお聞きしたいのですが、まず野田さんいかがでしょうか。

野田)多分、我々の想いって、いま大野さんとか僕とか豊田さんのバックにある「KX」という…蛹から蝶へという絵で表しているじゃないですか。まあDXをもじっているんだけど、考えてみたらこれちょっと間違っているよね。だってDXはデジタル「で」トランスフォーメーションするわけでしょ。KXは会社「を」トランスフォームするわけですから。まあちっちゃいことはいいわな。でも、この「蛹が蝶に」という部分に、第4ステージの想いを込めていると思うんです。要するに、日本企業ってもりもり食べてもりもり大きくなるはらぺこあおむしだったわけですよ。はらぺこあおむしとしては十分巨大だし、十分餌も食って楽しんだんだけど、今、きっと蛹なんだよね。どうしようって固まっている。この時って一番危険なんですよ。動けないから、下手すると食べられちゃう。でもここで上手く変身できると、美しい蝶になってさらに発展できるわけですね。だから一番危ない、ボトムのここをどうやって駆け抜けるかという、ある種の緊張感をもって我々はこのステージ4をやりたいな、とすごく思っています。

大野)ありがとうございます。豊田さんいかがでしょう。

豊田)今までこの研究会を長くやってきて、当初から思っていたんですけど、本当に毎回のディスカッションが熱く、皆さん非常に主体的にコミットしてくださっていて、とても嬉しく、一方でいろんな意見が出てくるので、とりまとめるのはすごく大変だったりするわけですけれども、このプロセスそのものを私はすごくワクワクしていたので、このワクワク感を皆さんとシェアできる、今までクローズドにしていた場をオープンにしてみようという、これは大野さんのジャストアイデアで、面白そうだな、という話になったわけですけれども、これ自体が、皆さんにどんな風に受け止めてもらえるか。皆さんに、私が感じているワクワク感を共有したり、いろんな形でこの活動自体にコミットしてもらえる、そんな風になっていくといいなとワクワクしています。

大野)そうですね、ありがとうございます。今日はもうすでに100人を超える方に、この会場にリアルに入っていただいているわけですが、皆さんがこの問題意識を自分事として参加していただけるようになったら、すごくうれしいなと思っています。

 

カイシャ=昭和モデルから脱却できない日本企業

大野)それでは、このあと第4期、4th stageの議論をするにあたって、目線合わせをしていきたいんですけれども。まず、冒頭でも申し上げましたが、あえて研究会の名前にカタカナで「カイシャ」と書いています。サイボウズの青野さんがおっしゃっていた「会社はバーチャルなんだ」ということもニュアンスとして含んでいますが、まだまだ日本の会社、昭和モデルの日本的雇用システムから脱却できていない会社がたくさんあるよねと。今も資本主義・民主主義の危機、とか、環境変化の問題とかいろんな問題がある中で、日本の給与が30年間伸びていない、儲かっていないとか。時価総額、30年前は世界トップ10の6,7社は日本企業だったのに、今どうなっちゃってるの、というような、非常に寂しい状況もいっぱいあるんですが、やはり働き方の部分の変化が大きいのかなと。特にこのコロナの2年間の間に、ずいぶん働き方の現場の変化が起きていると思うんですが、まだまだ本質的な会社と個人の新しい関係にはなってないんじゃないかなということで、もう一度ここを変えていきたいということが一つあります。そして、そのためには、もう一つの時代的なバックグラウンドとして、人生100年時代という、長い人生になっているということもあると思うんですが、まだまだこの問題意識も日本の中では…言葉としての「人生100年時代」は一般化したけれども、じゃあ何を考えなきゃいけないのかというところは、まだ議論が深まっていないんじゃないかと思うんですね。この本が提示した3ステージモデル、教育のステージ、仕事のステージ、そして引退という、今までの暦年齢とステージがリンクするようなモデルから、これからは働く人全体がマルチステージに変わっていくんじゃないかということが指摘されていますが、実は日本の社会というのは、新卒一括採用、年功序列、そして終身雇用というギミックじゃなくて定年制という制度設計がある関係で、実は社会全体が3ステージモデルをがんじがらめに固定化しちゃっているようなところがやっぱりあるじゃないかと。ここ自体も変えていくことが、会社と個人の関係を変えていく一つの視点だということをずっと考えていて、この研究会のスタートを切ったわけです。この辺の問題意識を会社経営・マネジメントというところからどんな風に捉えていくべきなのか。その辺、経営的な視点で、野田さん、少し補足していただいてもよろしいですか。

野田)一番定年でよく言われているのは、頭がつまっていって若い人の新陳代謝が起きないという問題ですよね。さらに言うと年功賃金がずーっと上がり続けていって、どこまで上がるんだよ、どこかで歯止めかけないといけないと。これそのものが、カタカナカイシャのシステムを前提にした議論なわけですよ。だからその混沌のところから変えていけば、実は定年制にまつわる問題というのも変えられるはずなんですね。ただこれってやっぱり同時に複数のことをシステマチックに変えなければならなくて、非常にハードルが高い。日本人お得意の、ちょっとずつパーツから変えるということが難しいんですよ。そこを騙しだましやる、65歳まで~とか、ある広告会社さんだと、段階的に給与を落とすんだけどその落とした分はちゃんとプールしておいて、退職金で払うのか、65以降の雇用に使うのかみたいな、いろんな選択が出来るようにしておくとか。あの手この手でやっていますけど、でも変わらなければいけないし、変えようという方向にはあるので、そこは僕は、いずれ定年制なんてなくなるだろうと思ってますけどね。ただ日本流なのですごい時間かかってる感じがしています。

大野)先日サントリーの新浪さんが45歳定年の話を持ち出した瞬間に、右からも左からも上からも下からも、まあ火だるまになってですね、なんとなく謝罪に追い込まれちゃうみたいな雰囲気になることもありましたけどね。東大の柳川先生が40歳定年説を発表されたのは2013年だったかな。

野田)1998年に、40歳で一度役職解こうっていうのを、一度ある会社が提案しています。

大野)ああ、だからこの議論ずっと長い間議論されているんだけれども、やっぱりいろんなことが絡み合っていて、非常に複雑な問題ですよね。だから単純に定年伸ばせば良いとか、そういうことで解決するものでもないし、税制とか評価の問題とかいろんなことが絡んでいるんだと思うので、実は非常に変わりにくい構造にあるんだなとは思います。その辺の視野も入れながら今回の議論深めていけたらなと思います。で、次のスライドですけど、3ステージ型の社会からマルチステージ型の社会に変わっていく、そういうカイシャ・トランスフォーメーションを実現するために、どうすればいいんだろうか、何が問題なんだろうか、ということを議論していければと思っています。

そういう中で、第4期、4th stageの議論のフレームワークを、ここから豊田さんのほうにファシリテーションをお渡しして、理解を深めていただければなと思います。

豊田)先ほど既に、5つのキーワード…告知にも出ていますけども、このKXを実現していくための、会社を出会いの社にしていくため、結実していくうえでどういうことが大切なのか。この5つ「想いドリブン」「旅の仲間バラエティ」「つながりリ・デザイン」「我がままセントリック」…ワガママというとちょっとニュアンスの悪い言葉ですけど、我がまま。後ほどこのキーワードの意味あいもご説明します。さらにカタカナ会社、先ほど大野さんが言ったいろいろ形を変えているが、昭和からまだまだ脱皮できていない「カイシャ」を卒業していこう、この5つのコンセプトです。それぞれ、少し言葉を足して説明していこうと思います。

 

5つのコンセプト①想いドリブン

まず「想いドリブン」です。「想い」という言葉、いろんな意味合いでこの研究会の中でも出てきたんですけれども、いずれにしても想っているのは人だ、ということですね。会社が何かを想っているわけではない。会社はあくまで実体がない。そこにいる人なり、そこに共感する「想い」というのは人についている。で、その人が何らかの形で持っている「想い」こそが、経営のドライブなんだよね、と。そのことを私たちはこの研究会を通じて、あるいはヒト・ドリブン経営の会社を通じて、人が想っていることそのものを実現していく、それが経営のテコなんだな、それがとても大切なんだなということを学び、気付いたと思っています。また、「想い」というのは、たとえば会社がビジョンという形で、社会に対して何を成したいということもありますけど、会社のメンバーにどういう環境を提供したいとか、個人の視点からいうと、個人一人一人が生き生きと、自分の個性を活かしたい、自分の興味関心に突き動かされて働きたいという想いとか、自分自身の生活をどういう風にしていきたいという想いとか、多様な想いがあるわけですけれども、そうした想いすべてが、ドリブン、コアになっていく。「想いドリブン」の「想い」にはそんな意味合いを込めています。もちろん会社の「想い」というのはギミックで、現実にはなくて会社の人たちが持っている想いなわけですけれども、それを表現、発信しようと。昨今はパーパス経営というような議論の中で、こういうことが少し前に動いているということもありますけど、この言葉はずいぶん前から研究会の中でも出てきました。やはり形にしていくということが大切だと。さらに、人と会社がまさにこの「想い」でつながる、社会への想いでつながったり、自分自身をどう活かしたいという個性への想いでつながったり、いろんなつながり方があると思います。さらに、一人一人が「想い」に気付ける機会を作っていこうと。人が想う「想い」というのは当然ライフステージとかいろんなきっかけで変わっていくわけです。ですが、生活とか日常に埋没していたり、忙しさがあったり、いろんなことを嫌々やっているうちに想いを封印してしまったり、あるいは想いに気付かなかったり、ということがたくさんある。でもその「想い」に気付くことで、人生の主人公になることができる。こうした機会をちゃんと提供していく場を作っていく。そんな方向性が大切なんじゃないかと。「想いドリブン」とコンセプトにかけている想いはそんなことです。

大野)野田さん、最近、新自由主義の問題とか株主資本主義からの転換というのが、2年くらい前から活発になってきて、ステークホルダー資本主義みたいなものに変わっていかなきゃいけないとか。世界的な規模でそういう議論がされていますけど、日本企業の経営の現場では、その辺の受け止め方とか変化感てどうなんでしょうね。

野田)日本てすごくずるい経営を今までやっていて。会社の方針だ、というような言い方ってよくあるんですけど、「会社の方針」なんて嘘なんですよ。それ、経営者の誰かのご意向なわけ。森友学園の「総理のご意向」と同じようなもので、総理のご意向をみんなが忖度することによってそれが会社の意向になっていって、それで縛っていく…僕、すごくずるいと思ってるの。このずるさを、空気ということで曖昧にしてきたのが今までの日本企業だと思っていて、それがもう許されなくなってきてるんだと思うんですね。実際に、1884年というのが実はHRM上はエポックの年と言われているんですけれども、ハーバードとかミシガン大学がそれぞれ、労務管理からHuman Resource Managementに転じようと宣言した年なんですね。特にその中のハーバードモデルの中で4つのCなんてことが言われてるんですけれども、そのうち2つ目のCがCongruence、一致ってことなんですけど、会社の方針と個人の想いを一致させようということなんです。ただしこの時はまだ会社の方針をいかに浸透させるか、というモデルだった。だからよく「浸透」という言葉が使われた。でもこれおかしい、ということが今言われているわけです。違うでしょと。そのきっかけになったのが、現場がイノベーションを起こすことで企業が発展するということを、まさにGAFAMみたいな会社たちがみんな気がついて。一人一人の思いをうまく結晶化させないと、会社が勝てないということがわかったわけです。まさに、競争戦略から出てきた想いの結晶化なわけです。で、日本はそこのところにまだ気づいていないと僕は思っている。全くここのところについては、多くの経営者が勘違いをしている。

大野)なるほど、そうですね。テクノロジー先端企業のGoogleのようなところから心理的安全性みたいな話が出てくるというところが…本来はああいうものは日本企業から出てきてほしいなというような気はすごくするんですけどね。「想い」というすごく抽象的で曖昧で青臭い言葉なんですが、こういうところに立ち返った議論をしていきたいというのが今回の4th stageの一つのポイントになるかもしれませんね。

野田)今前田さんが、みんなが想いを持った時にどうやって形にするのか難しいじゃん、と言っているけど、だからそのプロセスの設計が大切なんですよ、本当に。僕は1980年代の後半に、28000人もいるようなあるデパートでそれ実験しています。で、上手くいっているんです。7年もかかっちゃったけど。それは出来なくはない。方法論としては確立していないけれども…そうそう、今太田さんも言っている「浸透」なんてね、くそくらえですよね。だって会社の新しい方向を、経営者が完全に理解できるくらい単純だったらいいけど、今みたいに複雑なときに、一人の経営者が全部決められるなんてあるはずがない。そこに気が付いていない経営者がね、俺が一番頭いいんだから俺の考えを「浸透」させようと思ってるんですよ。まあ負けますね。

大野)そうですね。では豊田さん、次のキーワード行きましょうか。

 

5つのコンセプト②旅の仲間バラエティ

豊田)はい。2つ目のキーワードは「旅の仲間バラエティ」です。これは、ヒト・ドリブン経営の会社に取材した上であらためて感じたんですけれども、いろんな人たち人生の主人公として素敵な想いに気付くときに、大切なのは旅の仲間の存在です。なおかつ、いろんなタイプの旅の仲間がいる、バラエティがあるということがとても大切だとあらためて感じました。翻って日本的経営を考えたときに、いわゆる正社員とか、少し前までは男性正社員とか、比較的、やや同質的…ややじゃないですね、まさに同質的な集団であることが尊ばれたということがあったと思います。言ってみればバラエティがないということです。この旅の仲間のバラエティを増やしていく。すべては旅の仲間との出会いから、人が生き生きと人生100年時代を生きていける。会社もままさに、そうした中でいろんなものが生まれてくる、そうしたことだと思っています。 ベタにいろんな人がいる会社にしていきたいと思いますし、巷間よく言われているような複業を奨励しようと…複業の複は、よく言われているようにサブではなくマルチという字を置いています。なおかつ生業といっても、お金を稼ぐという意味ではなく、広い意味での社会活動が複業というふうに言えると思います。さらに採用を変革しようというキーワードも乗せていますが、採用をアップデートするというのは言わずもがなで、今のDXというキーワードで採用が変わってきているということはあるんですけれども、そもそも採用という言葉、この言葉というのは「採って用いる」という意味合いがあって、まさに会社が上にいるようなところからきている。なおかつ雇用する人間を求める、雇用というモデルに縛られたような言葉から生まれている。採用活動も実態がそういう形になっていることもあって、採用そのもののコンセプト、あるいは採用という言葉をなくしてしまうような方向に、議論が発展できると面白いんじゃないかなと思っています。

大野)いまチャットのほうに、瀬口さんから会社員とか従業員という言葉も変だよねときましたけど、この研究会の議論の中でも、この人事HR系の言葉って変だよねという議論、ずいぶんしたと思うんですよね。個人的には一番変だと思うのは正社員という言葉ですね。正しい社員てなんなの、っていう気もしますし、上司っていうのも既に変な言葉で。ふとそういう視点で見ると、人事系の言葉って変な言葉の塊ですよね。野田さんその辺でどうですか。

野田)全くその通りで、でも面白いですね、ちょっと離れてみると、あれ変だなとか、そこが変だよ日本人、ってあるんですけど、中にいると全然変だと思わないじゃないですか。僕は野村総合研究所にちょうど20年いましてね、野村総合研究所を辞めてからちょうど20年経ったんですよ。3ステージ目に今入っているわけなんですけれども、セカンドステージでフリーランスで色んなことをやるという時に一番寂しかったのが「入―れーて!」って言っても入れてくれない感じ。僕は別に正社員にしてくれとか、そんなことは何も言っていないわけですよ。ただこのプロジェクトすごく面白いから一緒にやりたい、お金とかそんなことあんまり言わないから入れてよ、って言っても、いや、情報のアクセスが正社員でないと無理とか、なんだかいろんなことを言われてね、入れて、って言ってるのに排除されていくわけです。入れてもらっているのにちょっとだけ違う、というところが、逆に外からくるとすごく心に痛いんですよ。これがね、ずいぶん辛かったなあ、20年間。なので、変な話ですけど、僕、いわゆる非正規の人たちの気持ちも、なんだか少しわかる気がするんですよね。自分が排除される身になったものですから。ここはやはり変えていかないといけないなと思いますね。もったいない。せっかく「入―れーて!」って言っている人を入れられないのは、面白くなくなりますから。

大野)はい、ありがとうございます。では3つ目行ってみましょうか。

 

5つのコンセプト③つながりリデザイン

豊田)3つ目は「つながりリデザイン」です。先ほどの「旅の仲間」あるいは「想い」ということともとても密接に繋がるコンセプトだと思います。なおかつ会社というものはない、想いを持って集まっている人の関係、つながりなんだと。このこと自身も研究会の活動の中で拡げてきた。言ってみれば、会社って要はつながりそのものなんだと。ですが、残念ながらこのつながりがいろんな形で損なわれていったり、あるいはあまり意味のないものと否定をされたり、そんな様な30年があったんじゃないかと思います。日本企業が良い側面として持っていた共同体性は取り戻していこうと。もちろん、共同体として空気を読むとかですね、同調圧力とか、悪しき面を持っていたこともあります。それを取り戻す必要はないと思うんですけれども、良質の共同体性は是非取り戻していきたい。会社を小さくしよう、というのも、議論として出てきました。実際大きい会社を小さくするというより、大きい会社であったとしても、想いを共有できる事業部単位、たとえば100人とか150人くらいに再編していく、あるいは子会社をどんどん作っていくとか。会社を小さくして、つながりそのものを豊かにしていく。さらに、それを飛び越えて会社同士がもっとつながっていくという方向性もあるよねという議論がありました。日本の企業はどうしても、自分で抱えて他者を排除する、さきほどの野田さんの話にもありましたけど、会社同士の接点もなかなかない。もっと会社がつながることで、いろんな豊かな知が生まれる、個人にとっても豊かなものがもたらされる、そんな方向性を目指したいという風に思っています。

大野)昨年までヒト・ドリブン経営の取材をしていく中でも、やっぱり小さな会社だからできるのかな、というテーマがあって、大きくなっちゃった会社はどうすればいいんですか、今更どうにもならないんですよ、といった対比の議論もあったと思うんですが。野田さん、このちょっと大きくなった会社はどうすればいいんだろうという、どんなアイデアがありますかね。

野田)ゴアテックス、WLゴアという会社がありますよね。あそこって、工場に駐車場の枠が149個しかないの。で、150人になると、無条件に75・75に分割するんです。150というのは例の有名なダンバー数ですよね。150人までならばお互いの顔と名前が一致するけれども、それ以上になるとわからなくなるという。そこである種の数の縛りを入れているんですね、WLゴア社は。会社を小さくするのではなくて職場の単位を小さくすることで自律性を持たせるということがすごく重要だという風に思っていまして。今流行りのホラクラシー経営とかティール組織というのも、数の限界はあるだろうなという風に僕は思っているので、一つ一つの仕事のまとまりは比較的小さめにしておいて、それをどうやって有機的につなげるかという別の構造の考え方をとる必要がありますよね。ちょうど今チャットにも大きな船という話がありますけれども、1万トンの船ってなかなか方向転換もできないし止まれないんだけど、1万トンの船を10トンの船1000隻にするとキュッと曲がれるよね。イメージとしてはそんな感じ。ただし、逆に言うと、10トンの船って嵐に弱いんですよ。だからいざという時にどうつながれるかということも技術なんですね。前田製作所なんかがうまいやり方をやっていて、これは研究の中でまたいろいろご報告もできると思いますけど、大きいものをあたかも小さいもののごとく運用するという、これは孫氏の兵法にまで書かれているやり方なので、そちらの方向に舵を転じるべきだと思います。

大野)はい。あの何人かの方はチャットにいろいろ書いていただいていますが、このチャットにいろいろ書くということ自体も、この議論に参加いただく大事なツールだと思ってますので、皆さんご感想、ご意見等あればどんどんチャットのほうにあげていただければと思います。はい、じゃあ豊田さん次、キーワード「我がまま」かな。

 

5つのコンセプト④我がままセントリック

豊田)はい。ワガママではなく我がまま。先ほど大野さんが冒頭で紹介した第3ステージ、昨年7月のライフシフト・フォーラムで、ユニリーバの島田さんが、我がままだよね、私があるがまま、という素晴らしい言葉じゃないかというように再定義されて。盛り上がりましたし、我々自身も我が意を得たり、というものでございました。まさに我がままでありたい、そういう方向を、今の時代は志向しているということだと思います。会社の中に置いてもそうだと思います。ですので、当たり前の話ですけど、一人一人の個性とか意思そのものが最優先されるんだと、会社という枠組みの中で強制されたり、押し殺せ、ということ自体が、もはや時代から外れている。最優先していくということ。さらに、我がままでありたいと思いながら、先ほど野田さんが心のブレーキというメタファーを使われましたが、私たちも変身資産アセスメントの中で心のブレーキという心のブレーキという概念を作ったわけですが、この心のブレーキが、かつてのカタカナカイシャの中にいるとどんどん高まっちゃうという図式があった。でも心の中にあるブレーキを押さえて、アクセルをどんどん広げていく、そういうことが大切なんじゃないかと思います。個人の力、変わる力をどんどんはぐくんでいく。そんなことを場の中に埋め込んでいく。さらに、会社の中にいると、そうはいっても社名によって、自分の意志ではなくて何らかの意向に応えるという形になってしまいますけど、人生の主人公は自分なんだ、ということをささやき続けているような会社があるなと。ヒト・ドリブン経営の中のいくつかの会社が持っているスローガン、行動指針のようなものは、あなた自身が何かをしていくということをメッセージングをしていくんですよ、という、そういうCode of Conduct を使っている会社がたくさんありました。これだなと。やはりこういったことを会社の中にきちんと埋め込んでいくことも大切だなという風に思っています。

大野)会社と個人の関係はイーブンになっていくということが、一つの理想形になっていくというように思うところもありますね。以前「アライアンス」という本が出て、新しい時代の関係の一つのモデルじゃないかということになったわけですけれども、先ほどちょっと触れた人事用語って、全然そうなっていないよねと。会社が上にあってその下に個人がいるということを前提とした言葉が非常に多いんですけど、なぜか。一人ひとりが我がままであり続けられる会社像とか個人の関係といったことをですね、追及していきたいなという風に思うんですが。ここ野田さん、なかなか難しいところもあるんでしょうね。

野田)あの、なぜ難しいかというと、結構簡単で、一人一人が信用されてないんですよ。というか、信用する側が、自分が一番信用できない人間だということを知っちゃっているから、他のやつらも信用できないだろうと思っているわけですね。やっぱり「我がまま」でいくためには大前提があって、一人一人の成熟というのが絶対必要になってくるわけですよね。自由ということと同じで、自由というのは、本当に自由なんだけれども、だけど人の自由も侵害してはいけないわけですよ。ということは我がままであるということは人の我がままも認める我がままでないといけないということで、ここにある種の関係性、さっきのつながりの問題とかが出てくるのと同時に、一人一人の倫理、会社全体としての規範、すなわち道徳というものが問われてくるんです、ここ。今、成熟とか倫理、規範、道徳といったものがマネジメントをするうえですごく重要になってきていました。私の学生も、ここ数年にわたってこの成熟問題を系譜のようにやり続けているんですよ。先端的な勉強をしている人たちが、今気が付いているのがまさにこの、我がままであるための前提条件の確定なんですね。それぞれ他のテーマもあるけれども、結構一番根源的なところかもしれないと思っていますので、私もここは力入れてやりたいなと思っています。

大野)ダイバーシティ&インクルージョンみたいなことも当然そうだし、我がままでいるための地球環境と自分みたいな問題も関係してきますよね。本当に単純に我がままを言っていればいいということではなくて。我がままでいるために何をしなきゃならないかと。そういう意味では会社だけでなく、個人にもそういうものが問われていくということがありますよね。

野田)キーワードは僕「自由」という言葉だと思ってるんですけどね。自由という言葉をしっかりと定義していくことが、この「我がままセントリック」を実現するためにすごく重要なポイントになると思います。なんかだんだんサンデルさんみたいな感じになってきたね。

大野)自由という言葉があると当然自由「自在」という言葉もありますよね。自ずと在る、という。まさにそれが「我がまま」ですよね。この辺の議論も深めていければと思います。じゃあ5つ目ですね、豊田さん。

 

5つのコンセプト⑤カイシャ卒業宣言

豊田)最後は「カイシャ卒業宣言」です。この研究会2025という数字がついていますけど、2025年というのは昭和でいうと昭和100年にあたる。ですので2025年までにこの昭和のカタカナカイシャを何らかの形でメタモルフォーゼさせたい、昭和を終えよう、会社の殻を破ろうと、そういうことがおそらく先ほどのコンセプトそのものを実現していくベースになってくるかと思うんです。カイシャ中心主義と決別していきたいと思います。どうしても会社のために、会社が決めたこと、そうしたことが残念ながら今も強く残るわけですけど、これといかに決別していくか。キーワード、さきほど「我がまま」のところで野田さんおっしゃいましたが、信頼すること、なおかつ自由に開放していくこと、こうしたことが出てくると思います。さらに、日本企業はこれまで人を大切にすると言い続けてきた、人を大切にしてきていると言う最大の要素は雇用は守るということだったと思います。ですが、雇用を守ること自体が個人のオーナーシップを阻害するという側面を強く持って今日まで来ている。いよいよここではないところに会社が責任を持つ時代が来ているのではないかという風に思います。自律あるは自立というふうに言われること、これそのものに責任を持つ、こういう方向性で議論をしていければと思っています。

大野)そうですね。今日一つのキーワードとして、バックグラウンドとしての人生100年時代ということがあるわけですが、人生100年時代ってどういう社会なのかなという風に考えると、たとえば、会社の寿命よりも個人が働く期間のほうが長いとか、定年という制度が日本ではいまだに定着しているわけですけれども、それを60を65にしようが70にしようが、その先に何十年も人生がまだあるということも、バックグラウンドとして非常に大きな課題としてあるって思いますし、そういう中での変化ということでカタカナカイシャは変えていかなきゃいけない、卒業しなきゃいけない。ないしは…当初このキーワードは「ぶっ壊そう」だったんですが(笑)。会社をぶっ壊せっていう、そんなことが必要になってくるんじゃないかと思います。雇用という言葉もね、雇って用いるっていうのも、どうなんだと思うわけなんですが。人生100年時代の個人と会社の関係、まだまだいろんな課題がありそうですよね、野田さん。

野田)個人的には昭和の時代大好きなんで終えるの寂しいんだけど、会社は卒業したほうがいいですね。で、誰一人として不幸にしない新たな社会システムの中に、新たな会社を作りたいというのが僕の夢なんです。要するに、終身雇用はやめたくないんですよ。ただし、終身雇用の担い手が一企業であることは良くないと思ってるんです。会社による終身雇用ではなく、社会による終身雇用をちゃんと整えたうえで会社が終身雇用をやめるみたいなね、そんなやり方にしたいなと本当に思っていて。なので、会社を卒業させるためには社会も昭和を卒業しなくてはいけないのかなという風に思っています。最後は、なかなか実現可能性が難しいかもしれないけど、我々なりに発信できるといいなと思っています。

 

KXは、個人・会社・社会を変えていく社会変革ムーブメント

大野)はい、ありがとうございます。まさにその5つのコンセプトの議論を深めていくなかで、今回のKX・カイシャトランスフォーメーションの全体像を、4/26のセッション10の場では、何かまとめた形で提言したいという風に思っています。 KXが進んでいくことで、個人・会社・社会それぞれが変わっていくと思うんですけれども、まず一つは大きないまの社会ということでいうと、人生100年という非常に長い…最近は120年という話も出ていて、長生きせざるを得ない時代にどんどんなってくるわけですが、そういう社会を、一人一人がワクワク楽しく生きていけるような世の中にしていきたいなということを私たちは目指していきたいと思っていますが、個人、会社それぞれにも、大きなメリットというか変化が生まれるんじゃないかなと思います。個人の部分は、豊田さんすこし補足していただけますか。

豊田)想い、旅の仲間、変身資産という言葉、人生の主人公になるというキーワードも、今日のこのセッションの中でも出てきていますけど、この4つのキーワードが、私たちが持っている「ライフシフトの法則」にもまさに埋め込まれている言葉なんです。一人一人が100年時代をワクワク生きていけるためには、このライフシフトの法則をうまく身にまとっていくと、非常に素敵な人生を過ごすことができるという実感を様々な方のインタビュー等を通して感じています。会社の中にそういう場を実現することができるという確信も持っています。そうした形にしていくと、会社にとってももちろん個人にとってもハッピーな状況がもたらされるという風に思っています。

 

大野)会社にとってはどんなことが起きるのかという部分、野田さん補足いただけますか。

野田)これはもうすごく古くて新しいコンセプトで、結論から言うと新しい価値を生む力が増進するということの一点だと思います。簡単にいうとイノベーションということですね。結局昭和のカタカナカイシャは何に対して最適化してきたかというと、やることが決まっていて、そのやるべきことをできるだけローコストで遅滞なくやりきるために最適化された仕組みであり組織構造でありその中の個人のマインドだったと思うんです。でも、やるべきことそのものの価値が賞味期限切れちゃっているところで、新しい価値を生むという、まさにイノベーションを目的とするような構造になっていない。そこに最適化されていないわけです。そこに最適化するのがこのKXだという風に思っているので、会社視点としてもすごくわかりやすい話だなという風に私は思っています。

 

大野)はい、ありがとうございます。こういったことで、第4ステージの議論、このような議論をこれまで10回のセッションを通じて深めてまいりますので、ぜひ皆さんにもご参加いただいて、一緒に深めていけたらと思います。ではこのあとのご案内を、豊田の方からさせていただきます。

豊田)最終的に、KX実装モデル、これはこんなものが出来るといいなと思っている原型です、先ほど言ったコンセプト、あるいはそれを実現するためのスローガンがあり、具体的などういうところで検証していけばいいのか、こうしたものの洗い出し、体系化することによって、KXスコアとかインデックス化する、あるいはKXを実現するためのタウンミーティングを作っていくようなある種のフレームを作ることが出来るのではないか。こうしたモデルの体系化を。5つの分科会が、このセッションの一つの目玉になります。セッション2「想いドリブン」、来週から早速3,4,5,6と、1カ月強にわたってセッションを展開していきます。お一人お一人は紹介できませんけれども、コアメンバーの皆さん毎回とても熱く語っていただくんで、この回も1時間で足りるかなという感じもいたしますが、密度高く語っていただけるのかなと思っています。

野田)バレンタインの日がつながりデザインというのが、意味があるなと思うんですけど、出てくるのが全部男っていうのはなんなんだろうね(笑)

豊田)そうですね、その辺コアメンバーも…素敵な女性もいらっしゃいますけど、まだまだ男が多いぞというところは残念なところかもしれませんが。野田さんには毎回登場していただくという形でよろしくお願いします。早速ですね、来週1/28が「想いドリブン」分科会になります。サイバーエージェントの曽山さん、野田さんにご登壇いただき、大野さんと私がファシリテーションするような形で場を作っていこうと思っています。実は、事前に曽山さん野田さん大野さん豊田で簡単に進行の打合せを使用と言ったらですね、進行の打合せどころか本番さながらのディスカッションが展開されていて。曽山さんがどんなことを言ったのか、さわりを皆さんにお伝えしておこうと思います。

 

曽山)…ビジョンって、あなたの人生経験とあなたの好き嫌いと煩悩と妄想を、全部入れちゃったほうがいいと。さっき交渉がいやだというのは、就職活動でみんなビジョンを聞いている割に、聞いている大人がマジでビジョンないっていう最悪なループに今なっているんですよね。根底にある考え方、サイバーの根底というより私の根底にある考え方は、いい会社は夢を馬鹿にしない会社だと思うんです。そもそも夢が言えない会社が多い。で、言うと「いやそんなの無理だよ」と。これが多すぎると思うんですね、日本企業。

 

豊田)はい、こんなようなお話、曽山さん本番でもっともっと熱く語ってねというお話をしています。おそらくサイバーの中の話も含めて、たくさん話をお伺いできるんじゃないかと思っております。

大野)はい、それではセッション1、第4期の方向性みたいなことを共有させていただきました。ぜひセッション2,28日もすぐ近づいておりますので、是非参加いただいて、この議論を一緒に深めていけたらと思います。最後にご案内ですが、ライフシフト・ジャパンは人生100年時代のライフデザインの支援をしていこうということで、ワークショップを毎月やっています。これは基本的には個人向けのワークショップですけれども、この中で人生100年時代の個人の働き方生き方、会社との関係みたいなことをみんなでディスカッションする場を提供させていただいておりますので、今日ご参加の皆さんの中でも、ご関心がある方、ないしはお知り合いの中で、こういうところに参加してみたらどうかなという方いらっしゃいましたら、是非ご参加ください。そして今年から、この1月からですけれども、こういった考え方を、個人の支援および会社の変革ということを一緒にやっていただく、ライフシフト・パートナーという新しいコミュニティ作りをスタートいたしました。第1期第2期は、定員20名が既に埋まってしまっているんですが、これから第3期以降の募集もスタートいたしますので、こういう活動、私たちと一緒に取り組んでみたいなという方がいらっしゃいましたら是非、ご参加ください。詳しくはチャットのほうにもURL貼りますけど、私どものホームページの方でも詳しくご案内しておりますので、ご覧いただければと思います。それでは、ちょうどいま11時回ったところですが、今日のセッション1ここまでにしたいと思いますが、是非お帰りになる前に、チャットの方に一言感想などがーっと書いていただきますと、大変参考になりますしありがたいなと思っています。そして、最後に退場のときに簡単なアンケートございますので、この辺にもコメントいただけると大変嬉しく思います。それでは今日から4月26日まで続きます、KX カイシャトランスフォーメーション、是非引き続きご参加ください。本日はどうもありがとうございました。

野田)ありがとうございました。またお会いしましょう、

豊田)いまちょうどチャットのところにコメント貼りましたので、リンク等飛んでいただければ、そちらで詳細をご覧いただければと思います。よろしくお願いします。また来週も皆さんお越しください。

大野)是非チャットに一言感想を書いていってください~。