Session Ⅵ 「カイシャ卒業宣言」分科会
at 2022/3/06
on Zoom Webinars
人生100年時代にふさわしい「人と会社の新しい関係」の探索・提言を行っている「カイシャの未来研究会2025」(主査/ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO大野誠一)は、2022年1月20日より、『KXカイシャ・トランスフォーメーション~人生100年時代の“会社”を創造する10のセッション』を実施しました。
これは「カイシャの未来研究会2025」が2018年末の発足以来、3年間にわたって探究してきたKX(カイシャ・トランスフォーメーション)のビジョンを体系化し、昭和の経営モデルから脱却できない日本の“カイシャ”の変革に広く適用できるモデルの創造を目指して行ったものです。
セッションは全10回。分科会でのディスカッションも、モデルを言語化・体系化していく編集会議も、すべて公開形式で進めていきました。
このSession Ⅵでは、KXを実現する5つのコンセプトの最後のひとつ、「カイシャ卒業宣言」の分科会ディスカッションを行いました。
【メインスピーカー】
有沢正人氏(カゴメ)
吉田和友氏(NECネッツエスアイ)
野田稔氏(明治大学)
【ホスト】
大野誠一(ライフシフト・ジャパン)
豊田義博(ライフシフト・ジャパン)
「我々会社員は自由から逃げてきたのかもしれない」
大野)はい、皆さんおはようございます。KX、カイシャトランスフォーメーション、人生100年時代の会社を創造する10のセッション、セッション6,6回目になりました。今日もお越しいただきまして本当にありがとうございます。今まで5回、ちょうど半分が終わりまして、後半戦に入って行くっていうところなんですけれども、毎回非常に熱い、青くさい議論が続いておりますが、今日もまたおそらくジェットコースターのような一時間になるんじゃないかなと思っております。今日のテーマはカイシャ卒業宣言、ということで、五つの分科会のシリーズの中では最終回になりますけれども、今日も素晴らしいゲストをお招きしていますので、よろしくお願いいたします。それではまず進行して行く上での画面共有をさせていただきますが…その前に、まずレギュラーメンバーをご紹介をしたいと思います。まずライフジャパンの豊田です、よろしくお願いいたします。
豊田)よろしくお願いします。
大野)はい、そしてレギュラースピーカーの明治大学大学院の野田さんです。よろしくお願いします
野田)はい、宜しくお願いいたします。
大野)お願いします。それではちょっと進行上の画面共有をさせていただきます。1月の20日からスタート致しました、カイシャトランスフォーメーション、4月26日まで、10回のセッションをオープンに、もう内部議論をそのまま開いちゃうっていうことで、会社をどう変えていくのかっていう社会実装に向けたディスカッションを、みなさんに聞いていただいています。前回はユニリーバの島田さん来ていただいて、我がままセントリック、ワガママと我がまま、の違いからディスカッションは始まりましたけれども、非常に面白い、深い議論ができたんじゃないかなというふうに思います。ちょっといくつかですね、前回の参加の皆さんからいただいたアンケートで振り返ってみたいんですが、我がままセントリック、自分について振り返ることが最近よくありますと。それには自由に振る舞ってみたいっていう意思を持つことが重要だと思うんだけれども、長く会社員やったりやってると、規則やルールがあった方が楽だったりしますよねと。自由っていうのは意外に楽ではなくて、その逆なんじゃないかな、と。我々会社員は自由から逃げてきたのかもしれないな、という、こんなコメントもいただきました。野田さんどう思われます?
野田)いやもう、ドンピシャリの表現ですよね。自由ってやっぱりその裏には自己責任が伴うものだから、責任を取れよ、なんて言われなくてもやっぱり自己責任感出るものだから、むしろ自由じゃない方が楽だ、奴隷の安寧なんて言いかたしますけれども、そういうのもあるかもしれない。
大野)そうですね。そして会社が社員にあたる場所へ自由を選択する、WinWinの関係非常にいいなあと思うんだけれども、課題もありますよねと。一つは力のないルーキーが自由だけ与えられても逆に成長機会なくしちゃいますとか、今、この2年間、テレワークになってきて物理的に人が集まらなくなってきた、それによりイノベーションとか、個人や組織の成長ができなくなる っていう危険性もありますよねと。自由にだけにとらわれない発想が必要だと思います、って言うそんなコメントもいただいて、非常に大事なチェックポイントかなと思いました。この辺豊田さんどうです?
豊田)一つ目の点はですね、サイボウズの中根さんも兼ねてずっと良く指摘していて、サイボウズはまさにこういう、時間場所をどんどん自由にさせて行くという形で、主体的な従業員を惹きつけているわけですけども、でもやっぱり若手にはいろんな機会を提供しなきゃ、そこの部分はきちんとやらなきゃだめだよね、ってことやっぱりおっしゃっていて、この両輪はすごく大切なんだと思いますね。
大野)そうですね。やっぱり個人の自覚と会社の変化っていうのは同時に進まなきゃいけないことだと思うんですけどね。社員チームのメンバーの内面的外面的自己理解が進み共感し、補い合うってとても素敵ですよね、とか、「自分らしく」「自律・自由・自在」っていう言葉、こういうものがまた重たく感じる人もいると思います、個人がしっかりするってことと会社が変わるってことが両輪になるんだろうって、やはりそういうふうに思いますね。それから「我がまま」、この道を歩むには、自分を知り自分の頭で考えて自分の責任で行動する意識が必要ですよね、そうでないと単にワガママになっちゃいますよね、という、 自分が我がままでいるためにはほかの人も我がままっていうことを認め合うっていうことが、大事だということですよね。
野田)そこキーワードだったですね。
大野)そうですね。そして、やっぱり会社が変わらないと国民も変わらない、政府も政治も大学も学校も…要は日本変わらないっていうことでね、これも新しい形の革命ですよねと。一緒にやって行きましょうっていう感じのコメントも非常にいただいていて。参加していただいている皆さんの、かなりインタラクティブな場になってき始めてるんじゃないかなと思ってます。毎回グラレコ曼荼羅を作っておりますが、今日このグラレコ曼荼羅の最終回、カイシャ卒業宣言ということになりますが、今日はゲストスピーカーとしてカゴメの有沢さんとNECネッツエスアイの吉田さんに来ていただいているんですが、これ、お気付きですか。ビジュアルの蝶々が、飛び立っている。いよいよ飛び立っていくという卒業宣言。実はこの分科会の最初の名前は、会社をぶっ壊す分科会っていうね。ちょっと乱暴な名前だったんで少し表現を丸めましたけれども、おそらく今日ゲストの二人からですね、かなりアグレッシブなお話が聞けるんじゃないかと思います。それでは今日のゲストのカゴメの有沢さん、NECネッツエスアイの吉田さん、よろしくお願いいたします。
有沢・吉田)よろしくお願いします。
大野)それでは、ここからはですね、豊田のほうで進行させて頂きながら、議論を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。
主権在民という改革
豊田)よろしくお願いします。カイシャ卒業宣言いわゆる、カタカナの会社というのは昭和のいろんなものをまだまだ残して、全く変われていないという意味合いで、このカタカナ会社を作っています。今日お越しいただいた有沢さん吉田さんともに、まさにそのカタカナ会社をどんどん今の時代にアップデートするような形の、変革をされていらっしゃる方かと思います。それぞれの変革ストーリーも、どんどん深く聞いていきたいんですけど、そうするとあっという間に時間がなくなっちゃうので、エッセンシャルなところから行きたいと思います。有沢さん、そうは言いながら今のカゴメでの変革の話を聞きたいんですけども、一言で言うと有沢さんは何を変革した、あるいは何をぶっ壊した、何を会社から変えた、っていうふうに思っていらっしゃいますか。
有沢)はい、あのおはようございます皆さん。カゴメの有沢でございます。日頃から私共の商品ご利用いただきましてありがとうございます。いま、桃のジュースが美味しいですから、皆さん会社に来ていただければ嫌って言うほど飲めるんですけれども、こんな話一時間すると怒られるので止めますけども。何を変えたいかっていうか、今までのほかの方々のストーリーとかお聞きしたり、全部見たんですけども、その延長線上というよりも基本的には同じ水平線上にあるかなと思っていて。何ですかね、やっぱり自分らしさをどう表現するかっていうことですね。で、自分らしさを表現するって言うと何言ってんだお前って言われちゃうんで、要は、自分のやりたいことが要するに自分で選べるっていう、選択の自由が基本的にある。だからあの私今カゴメの中で主権(私権?)在民という言葉を広げてるんですけど、要するにあの選ぶ権限、選択の権利は社員にあって、会社はそれをサポートするんだって位置づけに完全に切り替えるっていうことですかね、一言で言うと。だから僕ら人事だとか経営とかっていうのは、経営のニーズに個人のニーズをマッチングさせるんじゃなくて、個人のニーズがファーストで、経営のニーズはそれに合わせるっていうふうに、仕組みだとかそういったものを全部変えていくっていうことをやってきたと。細かい話をすると長いんであれですけど、基本的にそういうことですかね。だから、ぶっ壊すっていうことよりも、会社という組織を逆に個人が利用するっていうふうにまず切り替えてもらったっていうところから始めたっていう、そんな感じです。
豊田)はい、ありがとうございます。
カゴメという会社を残すのではなく、カゴメにいる人を残したい
野田)そうしようとしたきっかけっていうのはどこにあったんですか。
有沢)これはね、話すとこれまた長いんですけど、僕もともと銀行員なんですけど、りそな銀行っていう、一回国有化された銀行の時に、やっぱり、なんていうんですかね、ある意味占領されたわけですよ、国に。 占領されてたんで、そこからどうやったら公的資金を返して自由になれるかと考えた時に…あとAIGにいたときも入って2日後に潰れるっていうですね、非常にあの衝撃的な事件が起きましてですね。日米両方で私23兆8千億(?)の公的資金を引き受けた唯一の日本人なんでね。いやって言うほどあの主権力者(?)のあの…横暴っていうか体験っていうのはよくわかるんですよ。その時に、やっぱり…変な言い方ですけど自由をやっぱり求めたんですよね。国からの自由だとか、そういった業務改善命令とか業務改善計画を受け入れなくても、自分たちで自由になるためにどうしたらいいかっていうと、一年ここまで国有化された状況から公的資金返すってことなんですけど、それより前にじゃあ国有化から逃れる、脱出するためにはどうしたらいいかってていうと、やはり人なんですよね。それをとップに説明するのがの僕らの仕事だったんで、そこは、日米とも基本的に話せばわかるっていう感じだった、そこがやっぱり原点ですかね。でカゴメに入ったらめちゃめちゃいい会社なんですけども、いい会社過ぎちゃって、なんかこうチコちゃんみたいな状況だったんですよ。のほほ~んと…これカゴメの人聞いたら怒るんだよな…ですけどね、ほんっとにね、本当に平和なんですよ。もうなんかね、ヨーデルが響くような、そんな会社だったんですよ。それだと生きて行かれへんであんたら、って言って、これから、ただ食品とか飲料ってだってなかなかブランドスイッチもあんまり起こらないところもあるし、割と寡占に近いような業界なんですよね。そういう中で、競争環境っていうのがこれから激化して行ったり、内需が少なくなってきたり少子高齢化になっていくとパイの奪い合いになってきた時に、営業だけじゃなくてもうほんと人事も含めて会社変わらなあかんで、っていうことで、じゃ僕がこの生きてきたっていうか、経験した危機的状況とかですね、HOYAにいたときにあの敵対的TOBをペンタックスにかけなきゃいけなくなったとかっていうね。逆に買収する側に回ったときの状況とかをミックスしてやっぱりやりたいなあと、これをベースにして、カゴメというのが20年後30年後の皆さんに愛される会社にしたいなという時に、カゴメという会社を残すんじゃなくて、カゴメにいる人を残したいなって思ったんです。会社残すのはね、正直言って、言葉悪いですけど誰でもできると思うんですよ、普通にやっていればいいんだから。でも会社にね、リテンションじゃないですが、カゴメにいまいる人たちを大事にするのはもちろんなんですけど、辞めないでくれって言うんじゃなくて、カゴメに来たいっていう人を大事にしたいっていうところが、やっぱり感覚変えたって事ですかね。前は離職率が低いことがカゴメの売りだったんですけど、僕の感覚としては離職率低い、そんなの会社が自慢したらあかんで、って。それよりもどんだけ良い人来たかってことの方が大事だってことを、経営の頭の中を切り替えてもらうのが僕の仕事って感じで。それがさっき言ったりそなとかAIGとかで、いかにいい人に来てもらって、新しい考えを入れて、立て直していくってことに変えていった。会社を大事にするんじゃなくて、人を大事にするっていう風に、頭を切り替えていくってことやってきたと。すみませんちょっと長くなって。
野田)よくわかりました。よくわかりました。ありがとうございます。
改革の原動力は「理不尽」「不平不満」
豊田)今の有沢さんのお話は、またさらにいろいろ掘り下げていきたいんですけれども、吉田さんがお取り組みのことも、ある意味で方向はすごく近くていらっしゃるのかなというふうにも思います。吉田さん今日はよろしくお願いします。吉田さんもどんなような思い持ちからご自身の変革を始めたのか、ちょっとその辺の頭出しお願いしていいですか。
吉田)はい、NECネッツエスアイ吉田と申します、今日はよろしくお願いいたします。あの本当にこのコアメンバーのところに参加させていただいて光栄なんですが、他のコアメンバーの方々本当に凄い方ばかりで、私は至って普通のあの社員ですので、ちょっとそういう目線からですね、少しお話をさせていただきたいなというふうに思います、よろしくお願いします。今いろんな改革というところを社内で一生懸命進めているんですが、まだまだ全然勝ってません。けっこうあのいっぱい負けてることだらけなので、まだまだ全然戦いの途中になってるんですけど。スタート地点で言うと基本的な思いというのは、やっぱり会社に入って自分が一生懸命考えて真面目に取り組んで、話をした時に、いやそうじゃないんだよっていう風に言われた時に、それはなぜですかっていう話をしたら、色々あるんだって言われるんですね。正しいことを言ってるつもりなんです、すごく私は。で、すごく理不尽なことが多かったんです。気に入らないことが多くて、多分私の改革の原動力は、もう一言で言うと気に入らないことが多いので、どうにかこの気に入らない感情を持つ社員を、やっぱりもう少しどんどん活かすべきなんじゃないかなっていうのが多分私の原動力なので、多分不平不満が、改革欲を駆り立てているんだろうというふうに思っております。先ほど言われたように、言ったからにはやっぱり自分で責任を持たなければいけない、という話はまさにあの我がままっていうところで議論された通りだというふうに思っているんですけど、同じように社員が言ったからって言う話と同時に、会社も言ったからには実行すべきだっていうところが必ずあると思うんですけど、そこをですね、どうも最近、今までとは違う、変わらなければいけないんだ。かわらなきゃいけないから社員の議論をするんだ、もしくは対話をするんだ、で、話を聞いた。じゃあそういう方向で変わっていくっていう責任を持って動いているかって言ったら、どうもそう見えない。何が言いたいかっていうと、これ会社だとかそれこそが社員だとかどっちの責任だとかっていう問題じゃないんじゃないかっていう気がしてて。どうもですね、まず一つ自分の人生の目的感、働くということ、それから今まで会社が目的にしてきたものと、それからこれからっていうところを、なんか両方見失っているんじゃないかなっていう感じは最近ちょっとしていて。で、今までこう…先ほど不平不満を持っていたところっていうのは、実は私はその時には敵は上司だと思ってました。こいつをギャフンと言わせてやろうとか、そうじゃなくて最終的にはお前が確かに合ってた、俺が悪かったってどうやって言わせるかっていうこと一生懸命日日考えてたんです。そのうち組織のある程度上になっていた時に、その次は、実は人事だと思ってました。人事、こいつらが、って、本当にきちんと社員のことを考えてないと。何でこうなるんだと言う風に思ってたんですけど、最近ようやくですね…ごめんなさい時間かかってるんですけど、どうも人事でもないし上司でもなかったんだなーっていう感じを、すごくしてまして、ちょっとかなりこう戦い方というか、向き合い方を変えなきゃいけないんじゃないかなというふうに、今思っているところです。ごめんなさい、まだ解がないんですけど、どうも戦う敵は私自身も間違ってたかなっていうふうに最近思っているところです。
敵はどこにいる? カイシャはどこにいる?
野田)どれが、どこが敵ですかね。その要するにカタカナの会社はどこに居るんですかね 昭和のカイシャは、どこに居るんだろう。
吉田)そうですねあのなんて言うんですかね…今回のライフシフトの中でもアクセルとブレーキっていうお話があると思うんですけど、少なくとも感じるのは、常に会話をするときに、組織の人間はブレーキに常に足を置いたまま話しているという感じはしてるんですね。多分ですね、彼らは精一杯、組織と会社を守っているんだと思います。この守るっていう考え方がちょっと違うんじゃないかなっていう気がしますね。少なくとも、今までのやり方が、勝つシステムとして会社の中のビジネスモデルとして回っている、今まではこれが良かったんだけど、たぶんこれじゃうまくいかないからどうしようかっていう議論が中心だと思いますので、それを変えなければいけない会社と、でも組織の中は常にブレーキに足を置いたまま会話をしているっていう意識の問題っていうのがやっぱり全体観としてすごくあるんじゃないかなと、日々感じてはいるんですけどね。
野田)だから向こう側、っていう言い方も変だけど、正義なんですよね。正しいことをやってるんですよね。守らなきゃいけない、要するに吉田さんの暴走を止めないと危ないだろうみたいな。で、どう危ないのって言われるといや…いや、危ないんだよ、みたいなね。
豊田)色々あるんだよっていうね。
野田)いろいろ危ないんだよ。で、いろいろは何かって言うと、形のない不安なわけですよね。
吉田)そうなんですよね。ですから、わかるわかるって必ず賛同してくれるんです。そうそう、吉田の言うことはわかるわかる、そうだよなって。そうなんなきゃダメだよな でもなちょっとなあ、やっぱりなあ色々あるんだよ。じゃあそのいろいろ一から十まで全部おしえてくれよってよく言うんですけど。はいすみません、ちょっとそんな感じで。
豊田)今吉田さんが言ってた色々あるんだよとか、なんかブレーキに足を置いている人っていうのは、有沢さんがおっしゃったとこの、カゴメの人たちはすごくいい人なんだみたいなことも実は通ずる部分なんでしょうか、有沢さん、どうでしょうか。すごく穏やかで、カゴメの人たちは。一方でやっぱどっかでなんか会社の為にやっぱ守りになってるみたいな形になってるってことでしょうか。
共通の敵を作るんじゃなくてみんな味方にしちゃえ
有沢)いや吉田さんのおっしゃってるのすごく響いて、その通りだなって。敵を作るってことに僕あんまり意味を見出してなくて、例えば物事を進めるときって敵作るの簡単なんです。共通の敵作るとみんながそれをね、例えば経営が悪いとかね、昔のあの江本みたいにベンチがアホやからね野球ができへんとかって言ってね、共通の上の人を叩くこととか、みんなで愚痴を言うことってのは簡単なんですけど、そうじゃなくてやっぱりカゴメの人たちを、このすごくいい人たちを、どうやったら一つの方向にもっていくのって考えたときに、共通の敵を作るんじゃなくてみんな味方にしちゃえって感じなんですよね。僕の場合は、特に経営層には皆さんは共犯者ですって言ったの。最初来た時に。私と一緒にこれから共犯者になりますと。ただ犯罪犯すわけじゃなくて、一緒にあの同じ船に乗ってね、これからいろいろ変えていくんで風当り強いけども、共犯者の意識を持ってくださいって、会長とか社長に最初入って半月くらいのときに言った覚えがあって。そこから考えているのは敵を作って会社を壊すっていうことよりも、味方を多くしてみんながそうだねそうだねっていうふうに言ったほうが、はるかに生産性も上がるし、変革が早いんですよ。僕の感覚からだけど、敵を作って、銀行時代は完全に敵同士だったんで、周りがね。足の引っ張り合いとかね。はしごの外し合いとか、半沢直樹を見ていただければわかりますけどあのオネエの金融庁の検査官が…オネエはいませんけど、来たりとかね。もう本当にすごかったんですけども、でもそういったことじゃなくて、やっぱりみんなを味方にしてくほうが、はっきり言って生産性が高いし、みんながどんどん同じ方向に向くんですよ。カゴメの場合いい人が一杯いるんです。今でも。今でもいい人ばっかりなんですよ。だけど方向は皆バラバラだったんですね。その方向を、今まで会社の方向、会社が向く方向にみんな向かなきゃいけないって思ったのが、そうじゃなくて会社の向く方がいつも正しいとは限らないから、だからこれからみんなが考える方向、それぞれ別々でもいいけども、正しい正しいってみんなが考える方向で行けばいい、その最大公約数は会社の方向でいいんじゃないのっていうこと、それを中経にうたったんです。文面にしちゃったんです。それで、みんながね、心理的安全性がすごい担保されると。今の言葉で言うと。当時はなかったけど。5,6年前は。今までやったことが間違ってるわけじゃないでしょう、そうそう間違ってへんがな全然そんなもんと。間違ってへんから。だけどこれからこういったことだが自分たちがやりたいことをやるために会社ってのは存在するんだから、これを自己責任て言い放っちゃうと、アウトなんですよ僕の中で。会社はこういうことをやりたい人、やる人を応援するからどないしたいのっていうのがあって、HRBP作っちゃったりいろいろして、サポートすると。自分で考えていい、It’s up to youやでとかって言った瞬間に、それは会社が要するに放棄してるって感じですよね。と思います。
豊田)うんうん、ありがとうございます。なんか今のお話…味方に付けて、有沢さんはトップ層のところにいりながらみたいな部分もあったと思うんですけれども、吉田さんご自身もそう言いながら多分改革を推進する上では、当たり前ですけど先程の皆さんと敵をというよりはなんかもっと別の…戦い方、戦いという言葉とはちょっと違うかもしれません。今はどんなような形のアプローチで、どんなような形で、中からこう変革を起こしていらっしゃるんでしょうか。
吉田)そうですね、あの今あの有沢さんがおっしゃったことすごく共感をしていて、今まで本当に何て言いますかね…本当にタケヤリ持って突進するみたいなやり方をしてて、大体負けるんですけど。これじゃあ戦えないんだなあっていうことは自分の身をもって理解をさすがにバカじゃないとするんで、その時にやっぱり考えたのは何かっていうとやっぱり一つ仲間を作らなきゃいけないなって言うのと、それからもう一つこの仲間が、実は会社の中で強い存在もしくは期待される存在にならなければいけないんだな、ある意味会社に認めさせるっていうアクションを起こさなきゃいけなんだなというふうに思ったんですね。なので、よく改革の議論で、お客様だとかいろいろお話しをしていた時に、例えばトップが言ってくれないんだとか、トップが要は右向けとか左行けとか言わないから、だから我々は進まないんだっていう、そこをどうすればいいのかっていう話をされるんですけど、多分ですね、まだトップもわかってないんだと思いますで。過渡期の議論というのは何かというと、例えば守りが強い所、保守的なところが悪いわけじゃないです。この保守的なところとそれからあとは攻めていくところのバランスをきちんと取っていくものだというふうに思っていて、組織というのはやっぱり守る側なので、その組織力という意味では守る方が強いんですけど、攻めていく方がやらなきゃいけないところっていうのは、仲間でチームで、こう持っていかなければいけないんじゃないかって言う、その強い、技術も志もいろんな意味で強い集団を作らなきゃいけないんじゃないかなっていうことで、実は今始めたことは全社横断で一つの方向性を見出すためのプロジェクトを作っていく、これは組織の中に作るんじゃだめなんです。経営の下に作っていて、で一つの新しい方向性として 今までのことを否定しているんではなくて、その事を新しい方向と同時並行で動かしながら今後の進む方向をみんなで考えていこうっていう、進め方をしなきゃいけないっていうのが、私なりの今の作戦ですね。
豊田)はい、ありがとうございます。
カイシャ卒業のキーワードは未来
野田)キーワードは未来なんだよね。カイシャをカイシャから卒業するときにさ、やっぱり卒業したらば浪人しちゃってどうにもなんねーなあって不安でしょうがないから、卒業したくなくなっちゃうじゃない。やっぱり卒業するためには、次どっち行こうっていうのがないとダメなんだよな。未来なんだよね、キーワードが。卒業の為の。
豊田)今の吉田さんが言った、チームみたいなこともそうですよね。まさに、未来に向いてゆくために、それを作るためにチームをする、一方で組織というふうにおっしゃっている部分はどちらかというと現在過去の、背負ってるみたいな形になってるってことですかね。
吉田)ああそうですね、ですからもうたぶん有沢さんのところも、我々の方も、ある意味非常に強い伝統を持った企業なので、そういう意味では多分未来に向ったときの議論のはずなんですね。で、おっしゃってる通り今まででも食っていけるんです、多分なんとなくは。で、ただ本当にあの未来を考えずにこのまま行けるかって言ったら、今自分が定年退職するまでの保証はできるかもしれないけど、その先はわかんねえなあっていう感じで、10年後はあるかもしれないけど、20年後は保障できないっていう。ただ10年後を持っている人が今の偉い人たちなんで、やっぱここのちょっとギャップが出てきているのかなという感じがしますね。
豊田)ありがとうございます。先程の吉田さんの言葉が、組織っていうことと、チームみたいなことがあって、なおかつ組織の中にそれを作っちゃいけないんだっていうふうなことをおっしゃったのは、とてもなんか明示的だなと。カタカナ会社とかの典型としてはその組織図みたいに非常に明示的なものがあって、ある種のツリー構造になってるみたいなものを、我々は会社の実態のようにイメージしてしまうわけですけども、多分ここに置いたら変わらないぞっていうことをおっしゃったと思うんですね。なんかやっぱりこの明示的な会社っていう部分は、やっぱみんなにすごく、形のあるものみたいな形で、心に入っちゃってる、あるいはそこの人材、人間であるというふうに思うと、なかなか変えていくっていう方向にイニシアティブ取れないみたいなことがあるってことですかね。
吉田)あ、私答えていいのかな。はい、ちょっとこれ違う話になるかもしれないんですけど、これから会社が目指す方向性ってなんなのかって言っているところの解は、新しい世代で考える時代に入ってきてるんじゃないかなっていうのを思ってます。なのでイニシアティブをどこで取らせるかっていうのは、今までのまさに昭和のモデルでとっていくということではないんだろうな、って言うのは安易に想像できるんで、多分その次、これ別に世代っていうのはなんて言いますかね、若いからとか年寄りだからとかっていう話じゃないのかもしれないんですけど、やっぱりその次を考える世代っていうところを、たぶんこれからもっと大事にして、もっと鍛えていって、そこに期待をしていって、というような動かし方を多分しなければいけないんじゃないかなっていう気がしますね。
アメーバ型の会社がいい
豊田)野田さん今の部分、一連いろんなキーワードが出てきたと思いますし、野田さんもまさに未来に向いてみたいなことをおっしゃいます、ちょっとこのまでのところも含めて、ネクストクエスチョンをちょっとお願いできますか。
野田)あのね、さらに吉田さんだとか有沢さんの変え方でもっとぶっ飛んじゃうとどういうことかっていうと、僕、会社の方向性なんてことを考える必要すらないんじゃないかと思っちゃってるんですよ。会社っていう、なんかこう実像があると思うから世の中勘違いするわけで、会社なんて所詮は出会いの場なわけでね、免許でその事業が決められるとかなんとかってあるかもしれないけど、そんなのだって人為的なものじゃないですか。ってことは、そこの中に居る人達の思いで、もっと言うならそのチームごとに勝手に、こうなんかアメーバみたいにこう擬足を伸ばしてね、みんながいろんなところにこう擬足を伸ばして、でもなんか面白いなってみんなが思うところがあると、何となく擬足の方向が合うじゃないですか。これが、結局会社の方向になるっていうような、そのぐらいまでね、僕はひとりひとりの社員の思いというものを大切にするような仕組みにしちゃったほうが早いんじゃないかと思ってるの。たとえばね、この中に野村総研の方いるかどうか分からないけど、野村総研の、少なくともねコンサルティング部隊の方には、中期計画も事業領域ビジョンも何も無いんですよ。無いんです。あるのは唯一、売り上げが人格だっていう考え方だけなんです。なのであの会社は、お前この領域で食えとかって言わないんですよ。なんでかっていうと会社が決めた領域が下手っちゃったときに、その人の売り上げが上がらないのは会社の責任じゃない。会社が責任取りたくないから、お前らどこでもいいからとにかく食ってくればいいんだっていう話をすると、みんな必死になって食い扶持探しに行くんですよ。擬足を伸ばすわけ。ところが会社全体としても鳥瞰すると、だいたい同じ方向に行ったりするんですね。僕ね、ああいうアメーバ型の会社ってこれからはいいんじゃないかと思っている。なぜならば上から見てお前らこっちだ、なんて言うの、おっかなくて誰もできないし、だいたいはずれますよそんなもの。現場の人間の方がよくわかってんだもん。その位まで、会社というものの今までの従来の枠組みじゃぶち壊しまった方が、僕は幸せになれるし、成功確率上がると思ってるんですけどね。
大野)有沢さん、以前カゴメもね、将来そういうプロジェクトの集まりになっていくといいんじゃないっていうのをおっしゃってましたね。
有沢)はい。あのちょっと一瞬だけ画面共有していいですか?今ねえっとちょっと出そうかなと思って…ちょっと余計な阪神の話とかしちゃうと…(それはダメですよ笑)これで共有して…今これご覧になりますかね。うちの副業制度ってやつですが、サイボウズの中根さんとかロートの山田さんとかに、うちが副業を入れる前にいろいろ聞いたんですね。うちが副業を入れるのは何かっていうと、よくほかの会社で副業を入れるところって、例えば本職とのシナジー効果があるとか、求めてるとかあるんですが、くだらねえこと言ってるなと思ってですね。要はね、副業するって何かっていうと、本人が自分のキャリアの幅を広げるために、会社がそれを認めるっていうことなんですね。個人個人が自分のキャリアを自分で開発するっていうチャンスを会社が仕組みの中で認めるので、どうぞやってくださいってことなんですよ。ただうちの場合は基本的に1900時間労働超えた人は働きすぎだから、それやっちゃだめよって言うんですけど、このポイント何かというと、他社と雇用契約結んでありなんですよ、うちの場合は。
野田)すげえなあ。
リテンションからアトラクトに切り替える
有沢)何でかって言うと、ほかの会社で良く副業をやると出てくる話がですね、優秀な人が逃げていくんじゃないかと言われるんですよ、僕も言われたんですよ。そりゃ逃げますよ。それはなぜかというと会社に魅力がないから。会社っていうベースで考えて会社に魅力をつけようなんて考えるからおかしいんだと。基本的には。だからそれよりも本人たちがうちと雇用契約を結んでもいいというふうに選んでもらえる、リテンションからアトラクトに切り替えるってことでこれやりましょうってことで、3年前に一回これやったんですよね。うちはいま言ってるのは、将来的にはうちの社員全部業務委託にしようって言ってるんですよ。これはね、多分ねあの年金だとかいろんな保険だとかの話がちょっとなかなか難しいと思うんですけど、イメージ的にはそんな感じです。その人のmarket valueを提供してもらうのがたまたまカゴメであって、それがだからずっと永続的にっていうことは保証しなくても良いと言うふうにしようと思って。だから他者と雇用契約結んでもありとか、こういったことですね。なんかやるとですねものすごい本当に反対が当時起きたんですけども、今はね役員自ら他社と雇用契約結んでる人いますからね。役員、四人くらいやってました副業。部長とか下の人たちも入れたら80何人、うち1650人のうち副業やってますね。副業やるのは、くどいですけども、あの何度も話しますけど、要するに、あの会社という組織自体がみんなの集合体であって、会社が一つの組織っていうふうに捉えないっていうことですね明確にもう位置づけてこれを出しちゃったんですね。これをみんなに説明した時に、会社に一生捧げるなんてやめてくれって私言ったんですよ。役員から大反感買いましたけど、みんなに一生ささげるはやめてくれ、それよりも自分の一生をね、あのその中の一瞬とか二瞬とか三瞬とかがカゴメにあるっていうぐらいのつもりでみんなやっていただけるとありがたいと。だけどその中でやっぱり最大のパフォーマンス発揮していた人たちには、ちゃんとそのパフォーマンスに応じた報酬評価すれば、そういう制度が一応あるから、カゴメが良いって言ってくれた人がどんどん残ってくれるすごく嬉しいね、って話をしたら、みんな納得したかどうかわかんないでしょでも役員までが副業制度使ってやってるんだから、たぶん納得したのかなと思う。将来的には今日のテーマである、会社っていうことに縛られるんじゃなくて、個人がキャリア開発するにあたって、会社がこういった仕組みだとか制度とかどんどん入れて行くことによって、個人を会社のくびきから解放するってことを、全面的方向で打ち出すってことがこれから求められるのかなと思って、僕はちょっと作ったと言うことですね。これ、正しいかどうかなんかぜんぜん僕が期待してないんですけども、ただこれ入れたことによってみんなが仕事をやりやすくなって、この副業制度に対する支持率は98%なんですよ。あのゼレンスキー大統領の支持率に高いかなと思ってるんで。ああやってよかったなというふうに思ってる、そんな感じですね。はいありがとうございました。
会社のレゾンデートルが変わる
豊田)なんかまさに今の部分が、有沢さんがおっしゃっているみんな業務委託って言ってるのは、いわゆる雇用だと、雇用を守るみたいな、雇用を守ること自体が経営の責任だみたいな、これ割と日本企業がずっと言っていて。多分そこにも企業の会社って…あんまり実存させたくないですけど、そこにあるんじゃないと。ひとりひとりがまさに生き生きとしていく、主体的にオーナーシップをとって行くということ自身を支援するっていうこと自身に大きな会社のレゾンデートルが変わる、変えてるみたいな話ですよね。野田さんがおっしゃったようなこと、野村総研の話も、根っこにあるのはそうなんじゃないか、NRI自体も雇用を守るだっていうことあんまり考えてなかったと言うことですかね。
野田)いや、雇用を守るということはね、考えてたと思うんですよ。要するに結果として雇用を守ればいいのであって、その守り方として、若干社員を信頼する方向に舵切ったんだと思うんですよね。そこはね、あの別に雇用を守りたくないとかそんな事全然考えてなくて。そんなこと全然感じませんでした、むしろ雇用は守ろうと思ってくれてたと思います。ただその守るのは、会社が守るんじゃなくて、個人が守るんでしょっていう考え方だと思うんですよね。なのであのチャンスはすごくいっぱいくれたと思いますよ。で生かすも殺すも個人次第だということだったし、結構だから促されましたよね、先輩とか上司に、お前いいのかなこれでみたいな促しがいっぱいあって、そこにとどまってない感じ、僕がいたときは少なくともすごくそういう感じを受けました。今は僕は申し訳ない、よくわかってないんですけれども。多分その伝統はあるんじゃないかなと思いますけどね。
Allフリーディスカッションが会社を変えた!
豊田) 吉田さんの会社では個人の業務委託化というラディカルな話はなかなか出てこないと思うんですけども、どうですか、たぶんいろんな変化が、一連の社内の改革の中でも、個人と会社の関係でいろんな議論が出てきていると思うんですけれども、いかがでしょう。
吉田)あの、本当に有沢さんのところでやられている事、素晴らしいなあと思って前回もちょっとお話を聞いたときに思ったんですけど、今ようやく我々の中で、組織の中の個人、それから個人としての個人というところちょっとすみ分けて行った時に、もしかしたら新しい方向性っていうのは、組織の中の個人では無いところから出てくるんじゃないかなっていうところを、今始めようとしている段階ですね。なので、そこって実は先に私、制度を動かそうと思って、実は一年前ぐらいから色々やってみたんですけど、ちょっとね、制度を変えていこうとしたんでは実はうまくいかなかったんです。なので、実はそれは逆に、自分たちで考えて自分たちで作り出して行く中から、どうもこういうことをやっていくとこういう結果が出そうだよ、と言うようなところをやって見せるっていうことが、大事かなと思っていて今そこのプロジェクトをどうまわしていこうかっていうところを、今作ってるところなんですね。でその中でちょうど、今期の中の取り組みで大きかったのは、Allフリーディスカッションってやつをやってみたんですよ。会社からこれをやれとかこれを考えろというんではなくて、個人が自分はやっぱりこう思うんだとか、もしくは会社の方がちょっとおかしいんじゃないかとか、今この仕事をやってるけど、本当私やりたいのはこれだっていうことを、上司の事前相談禁止、それから組織のフィルター禁止、それからそれを聞く役員は一切否定しちゃだめ、マウント取っちゃダメ、っていろんなルールを作ってそれでやらしたら、まあ面白い内容がたくさん出てきたんです。でも普段聞いたら、真面目にコツコツやってる人たちなんです、その人たちって。なので、あーなるほど、やっぱり個人の中、自分の中にあるものっていうのは、みんなやっぱり持ってるんだなあっていう感じは、すごくしますね。そういう意味で、実は私もそうなんですけど、実は会社に入って、会社に入った時に、自分はこれをやりたいんだとか、良くあのあなたのビジョンをとか、ビジョンを持ってないとだめだみたいによく言われますけど、私自分のことを考えたら全然ビジョンなんて思ってなかったですね。私は働くっていうのは当然生活する為に必要なもんだと思っていましたし、単純にできるだけ長く働ける会社に入りたいなと思いましたし、親からもあなた石の上にも3年よってもうとにかく入っていなさいっていう風にずっと送り出されましたので。ただその先にですね、まさに自分がこう会社人生っていうのを歩んでくる中で、たくさんやっぱり面白い仕事と出会えて、非常に保守的な会社なんですけどおもしろい先輩たちもたくさんいてですね、本当に勉強になったし、それから自分があの少し管理職に上がったら、今度は面白い若い子たちがたくさんいる。その中でこうたくさんいろんな発見があって育って自分のアイデンティティが出来て、ある意味、卒業じゃないですけど、なんかね学び舎だったような感じは、私も後半戦入ってきてるんであれなんですけど学び舎だったなっていう感じはするので、決して会社から離脱するんだとか、会社のことがよくない、会社っていう機構が良くない、なんて言うのもちょっとそれも違うんじゃないかなっていう感じがしますね。
豊田)ありがとうございます。あの吉田さんがおっしゃったオールフリーディスカッションですか、そういう形でまさに、我々の言葉で言うと個人の想いが実はあるんだけど、そういう場によって解き放たれて出てくるみたいな形になって。で、それが実はどんどん新しい経営のドライブになったり、いろんなものが生まれるだとかっていう、おそらく私たちが言ってきているようなこのKXの基本的な部分は、あの今吉田さんがやったところと、一つ大きな方向感と重なる部分なのかなっていうふうに思います。野田さん、野田さんは吉田さんとご一緒しながらいろいろな勉強してると思うので、裏舞台も色々ご存知だったと思うんですけど、どうですか、どの辺がネッツエスアイが変わってきたぞって言う部分ですか。
野田)あのね、ちょっとこれ言うとあの今吉田さんとかイイジマさんとかいるから叱られちゃうかもしれないけど、数年前始めたときはね、みんな社員が、めちゃめちゃ忖度した意見しか言わないんですよ。あのネッツエスアイさんだから5Gを使ってどうのこうのとか、そんなことばっかり言うんですよね。ほんまそんなことやりたいんかいな、とかと思ってたんだけど、今そういう話ないよね。本当にしなくなった。ここが本当なんだなというふうに思っているのと、言い方がわりとね、僕もそのオールフリーで出たものなんかをちょっと見たんですけど、すごいバリエーション富んでますよ。いやこれも本当申し訳ないんだけど、ネッツエスアイの社員の方ってすごくおとなしくて言われたことをしっかりやる、真面目な人たちばっかりだと思ってたんだけど、一皮むいたらね、すごいの。そのすごいすごいところがやっぱりねあるんだよ人っていうのはね。でもそれを無理やり、お前はどうする、ビジョン持つんだ、とかってやるもんじゃないよそんなもん。まさにねそういう環境に置いたら、みんな出てくるんだ、もちろん。それを僕はネッツエスアイさんで確認した。
豊田)すばらしい、革新ですね。
野田)そうです。逆にね、普段面白いことばっかりやってそうな広告会社さんとかあるじゃないですか。それはね、あんま変わらなかったりするんだよ。あれが限度だったのねみたいなところがあるんだけど、あの普段こうちょっと抑圧的な会社の方がね、変えた時の爆発力はすごいなと思いますね。
長く働いてほしいという想いが強すぎる日本の会社
豊田)なるほどですね。今みたいな変化で言うと、有沢さんのところも、制度を入れてすでに年月が経っていますけど、先ほど言ったみたいに副業する人が出てきたとかっていうことは明らかに明確な変化ですけども、現場の一人一人の中でも、ずいぶんこう想いが出てきていると、生き方が変わってくるみたいなことは、たくさん生まれてきてるんでしょうか。
有沢)そうですね。個人個人よりもやっぱりあれですね、経営から下の人たちって言うんですかね、部長クラスのなんか理解が深まって、くどいですけどもあの優秀な人材が逃げるような施策を打っちゃいけないっていう、そういう感覚から、優秀な人材が入ってくれればいいじゃないかっていう感覚にもほとんどみんな切り替わったんですね。今野田先生がおっしゃったのはまさにその通りで、あの僕チャットにも書きましたけど、個人にビジョンを持てっていうのは拷問だと思うんですよ。そんなの絶対無理ですよ。で、よくあの新卒採用の時に質問されることで、将来の夢っていうのはいいんですよ。将来この会社で何やりたいですかっていうのは、僕アウトだと思ってるんです。そんなのね、自分の会社に将来まで縛り付ける権利ないやんって思うんで。とりあえず入ったら何やりたい?って聞くんですね。その後って、うちの会社とか関係なく、自分で何か表現したいことってある?とかって言うことを聞くんですよ。うちの会社で将来何やりたいかとかっていうのは、大きなお世話だって言ってんの。採用担当というか採用する人には、聞くなって言ってるんです。それは失礼だと、学生に対して。中途採用の方もいっぱい来ていただけるようになったんですけども、そんな質問するなと。会社に要するに縛り付けるようなことを連想させるようなことはしないで、個人が自由に自分の意思を反映できて、その心理的安全性が担保できるならうちの会社でしょってアピールはどんどんしろと。という風に言っているんで、だからそういう意味では、上の人たちからそういう意識が変わってきたんで、例えば技術系の採用の時なんかは技術系の本部長が入るんですけど、その時も、有沢さん、うちの会社で何したいって聞いたらだめなんですよね、言ったらしばくからなって。役員の心理的安全性が一番担保されていないっていう変な会社なんですけど。なぜか私がしばかれる。営業の常務がですね、有沢さん、将来営業で何やりたいって聞いちゃダメなんだっけ、って言って、営業やるかどうかっていうのはね、今は本人やりたいって言うけど将来どうなるか分かんないじゃないですか、だからそれ聞いたらアウトでしょ、って言ったら、なんか窮屈やなあとかって言われて。窮屈だと思ってること自体が役員としていかがなものかと思いますって言ったら、めちゃめちゃ反感買いました。今みんな理解していただいてるんで、聞かないですよ、絶対その質問は。
吉田)いやもう、最高ですね本当に。
豊田)そうか、今のその窮屈みたいなことが、ある種のカタカナ会社がしっかり入っていると、それを窮屈に感じちゃうわけですね。
有沢)日本の会社って、どうしても自分の会社で長く働く続けたい、働いてほしいと思うがあまりに、自分たちの思いをあまりぶっつけすぎちゃって、個人の自由の尊厳とかそういったことをもうちょっとね、自由にするべき時にも来たと思うんですよ。昭和の時代は野田先生がおっしゃったように、それでも良かったわけです。なぜならlifetime employmentで将来保証して専念して、年金が保障されていわゆるこう、なんですかね、企業年金で、っていうことだったんですよ。もうその時代は平成の終わりにもう終わっちゃってて、令和のこの時代にそんなこと誰も保障できないんです。だったら個人に、私たちの会社にいる間は心理的安全性担保するし、その会社、私どもにいて頂けるんであれば本当に長くいてください。と思うんだけど、将来どうするかとか、そんな野暮なことは基本的に我々は求めないし、基本的には考えない。意見を本人が言うことは妨げないですよ、生産調達のこういった海外調達やりたいです、あーええやないか、どんどんやってうちで、とかって言いますよ。言いますけど、これを会社側から言わせるのは横暴だと僕は思うんですね。
野田)そうですね。
有沢)そういうことだと思います。それから会社から卒業するっていうことで、一つはそういったことを、役員以下みんながそれを理解すると、あっ、会社っていうこと組織体の中だけで考えるんじゃなくて、個人をベースに考えると、さっき冒頭で申し上げた、主権在民になるわけですよ。学生さんにも主権在民だし、中途の入ってる方も主権在民だし、社員も主権在民、役員だって主権在民ですよ。私が心理的安全性を時々脅かしますけれども(笑)、ああそういうもんなんですよねって言ったら、うちは絶対専制ステージとか絶対うちはもうあの認めないからと。口酸っぱくして言ってますから。すみませんなんか余計なことばっかり。
戦艦ポチョムキンはもうない
野田)僕今までずっと話を聞いていて、昭和の会社カタカナの会社って、軍艦に例えるとやっぱりね戦艦、巨大戦艦だったのかなと思うんですよ。みんなでもって寄ってたかってその大きな機械を動かして、それでもって協働で戦うっていう考え方だったと思う。そんでそういうのが有効だった一時期もあったと思うんです。産業構造的にもね。それこそ鉄鋼業とかね。うんあれも一人一人の自主性なんていったら高炉爆発しますからね。あんなもんはね。でも今はね、どっちかってやっぱりaircraft carrierなのかな。空母って、空母そのものに戦う力ってあんまないじゃないですか。戦ってるのは戦闘機ですよね乗っかってる。その戦闘機をどこかまで持ってってあげているのが空母じゃないですか。で、戦ってるのはこの戦闘機なわけで。ただたぶんね、会社がねそういうそのaircraft carrier、だからプラットフォームなんだろうけど、みたいになってくんだろうなって言う、なんかそんな印象を受けながら聞いてましたね。戦艦から空母へという、なんか帝国海軍みてぇだなと思った。
有沢)いや野田先生ちょっとひとこと良いですか。先生すごく映画お好きじゃないですか。戦艦ポチョムキンの叛乱ってありましたよね、あれですよ。要するにね、戦艦ポチョムキンはねもうないんですよ。エアクラフトで現地行くか、あるいはもうフリゲート艦みたいにね各自が自由に。ただ方向は同じなんだけど、ここから先は基本的に、各自自由に、自分たちの考えに従ってやっていけと。軍隊ではなくてっていうこと、それがねすごくね分かりやすいっていう。ちょっとあの後で、ポチョムキンの叛乱はアマゾンプライムで見ようかな。
野田)ポチョムキンと空母いぶきと…。
有沢)ああ、それいいですねー。ヤバいな、その話すると僕あと50分ぐらい喋ります。
豊田)でも確かに学びがちゃんとそういう、野田さんがworksでやってる映画の連載もそうですけど、映画の中に実は学びがたくさんある。実はそれを我々はどうしても忘れちゃってるっていうことなんでしょうね。
野田)なんかね、大艦巨砲主義に慣れすぎたよ僕たちは。今ね、戦艦捨てろって言われてもおっかなくって捨てられないんだよ。で、しかも戦艦はある程度防御に強い、それでもやられちゃうんだけど、空母にやられちゃうんだけど、空母って本当に攻撃されると弱いじゃないですか。だからもう空母って要するにもう攻めていくしかないものですよねあれね。今我々もたぶんそうなんだと思うんですよね、守るって考えた瞬間にもうなんか負け戦になってっちゃう気がしてて。でもね僕原点にあるのはやっぱり恐怖と不安だと思います。これ経営者にある恐怖と不安。チャットにもありますけど、恐怖と不安ということについてはちゃんと理解してあげて、どうするかを考えてあげないとね無理だと思う。人間ね、恐怖と不安に苛まれた時にはもうろくな意思決定しないですから。もう、殻をかぶって…ってなりますからね。これはね。もしくは窮鼠猫を噛むになるわけでしょう。うんですから我々は旧カタカナ会社の経営者たちの、あのもしくはそこにしがみつこうとしている人たちの、恐怖と不安をどのように…取り除くことはできないんだろうけれども、超克することを手助けしてあげるかっていうことを、考えないと変えようがないかもしれない。それがその心理的安全性っていった…心理的安全性は実は社員だけではなくて、現経営者に対しても本当は心理的安全性は必要なわけですよね。心理的安全性とあの最低限の誇りですよ。だから今までの功績を認めてあげると言うことも含めてね。で、そうしないとね、ただ敵で、こう叩いてたって変わんないですよこれ。吉田さんは敵じゃないって言ったのは素晴らしいなって、本当に。人事を敵視するな、ってずっと僕申し上げたんですけど。
豊田)確かに吉田さん前のミーティングでも、人事に戦いを挑んでいるとかいろいろおっしゃってますけど、そこじゃなかったっていうことも。
吉田)そうですね、ずっとあの怒られ続けた一年間だったんですけど。
会社は、自己表現するための器
大野)今日はね、あの冒頭の有沢さんの主権在民から、最後の野田さんのねエアークラフトキャリアっていう、すごい頭から結が繋がった感じが凄いしました。今現在地点はねすごく共有できた気がするんですけど、あのちょっと有沢さん吉田さんお二人、これから、これから今一番手をつけていこうとしている事、今一番課題だと思っていることっていうのをちょっと最後に一言ずついただけますか。有沢さんからお願いできますか。
有沢)はい今日は皆さんどうもお聞きいただいてありがとうございました。またいつもの有沢の与太話みたいなんで申し訳なかったです。やっぱりこれから考えていることっていうのは、本当に主権在民という考え方がやっぱりもっと徹底されて、本当に出入り自由な会社にするっていうことだと思うんですよね。会社っていうのはあくまで器であって、そこの中で自分の自己表現ができるってことを最大限基本的に認めてあげて自己表現できた人にはきちんと報いてあげるっていう、制度と仕組みだとかをきちんと作ってあげるっていうことが、すごい大事かなと思うんで、それが入って良かったとか、あの昔のセブンイレブンじゃないけど開いててよかったじゃないですけど、入って良かったっていうふうに思ってもらって、でもいつまでもいるつもりもないよねっていうことに対しては寛容であり続ける会社で行きたいなと思うし、何よりやっぱりそういう姿勢が消費者の方々に支持される会社でありたいなと。あとやっぱり投資家の方とかね。カゴメやっぱり人事おもろいなと。僕結構IRミーティングに出たりするんですよ、最近。なんでかっていうと人的資本投資に関してどう思いますかっていう時に、こたえられる人があまりいなかったんで。じゃはいはいってなんか出てですね、またあることないこと…ないことはないか、くっちゃべってんですけども、その時ににだからやっぱり、そういったことで投資家から見た時にやっぱり人っていうものの大事さっていうのはいま皆さん思ってらっしゃるんで、それに対してうちは基本的にこういうことだよっていうことが、やっぱり自信を持って言える会社にしていきたいなと。会社って器と同様かそれ以上に、やっぱり人、社員とかその関係者の方々が安心して基本的に会社の中でパフォーマンス発揮できるようにしたいなと思います。ということですかね、はい今日はどうもありがとうございました。
大野)ありがとうございます。吉田さんいかがですか、これから。
吉田)はい、すごく面白かったです。ちょっと話変わるかもしれないんですけど、今ちょうどですね私の娘が3年生で、就職活動が始まったんですが、あのおもしろいことを言っていて。まず一つ、うちの娘ちょっとお高めの焼き鳥屋でバイトしてたんですけど、だいたい背広着てね、あのSGDsの大きいバッチつけて下世話な話をしている奴らよりも、私たちの方がこれからの社会のことを百倍考えている。本当にあんな人たちの下で私は働かなきゃいけないの?って。すごくいいこと言うなと思ったのは、いろんな課題がこれから起きるとき…まさにコロナ世代でずっと大学のキャンパス生活ちょっとかわいそうだなと言うふうに思って見てたんですけど、でもまさにこれが、課題が新しい私の成長のチャンスだって言うんですよ。で、会社に入った後そんなチャンスがあるんだろうか、っていうふうに聞かれた時に、ちょっとこれから考えなきゃいけないのは、今ある、今の会社の中で過ごしてきた人、それからあとはこれから変えなきゃいけないっていう土壌を、どこに向けて変えていかなければいけないのかっていうことを、ちょっと本気で考えなきゃいけないのかなと思ってます。で間違いなく、今までみたいにあのいわゆる会社ってこういうもんだ、こういう枠組みで働くという話から変わって、これ黙ってても変わるんです、変わらない会社はつぶれるんだと思うので。でそうなってくるとそういうチャンスをですねどういう風にキャッチアップするのか、出来るだけチャンスをたくさん与えて、手の届く範囲に常にあるという状態にどうにか持って行きたいなって言うのが、これからやらなきゃいけないことなんじゃないかなと思ってます。はい、今日はすみません、ありがとうございました。
大野)ありがとうございました。やっぱりあの予想通り、ジェットコースターの一時間になりました。有沢さん吉田さん、今日はどうもありがとうございました。
豊田)ありがとうございました。
大野)この連続十回のセッションですね、今日で六回目で、分科会五つの分科会の議論をここまで続けてきましたけれども、次回からですね 4月26日の最終回に向けて、この社会実装モデル編集会議っていうのをやっていきます。ここではあのわたくしと豊田野田三名がスピーカーとして登壇しますけれども、今この場にお集まりいただいている皆さんからチャットでもね色んな意見を出していただいてますが、ぜひインタラクティブに皆さんの意見をどんどん出していただいて、それに対して私たちがこう答えていくっていう、そんな場づくりも次回以降して行きたいという風に思っていますので、そういう中でですね4月26日の最終回に向けて、進めて行きたいと思います。
豊田)これから三回はほとんど内輪のまさにこうブレスト的な感じですね。私が多分たたき台を持ち込んで、いやこうじゃないの、だとかっていうことをやる中で、オーディエンスの方にもどんどん、もっとこんなのあればいいじゃないかまさに共創して行くような時間を持ちたいと思っています。
大野)はい。そして今日先ほどあの最後に有沢さんから出入り自由の会社みたいな話がありましたけど、やっぱりそのためには個人個人の自覚っていうか自立っていうか、そういうことが同時実現されないと行けないんだろうなと。個人の覚醒みたいなことと、会社の変化みたいなものが、やっぱりコインの裏表のようにリンクするんじゃないかなというふうに思っています。私たちはあのそういう意味での個人の自覚の場を提供するということで、ライフシフトジャーニーみたいな場も毎月開催していますので、この辺に関心がある方も是非ご参加いただきたいなと思っております。また、こういった考え方を日本中に広めていくための仲間を今集めています。ライフシフトパートナーっていう取り組みも始めていますので、この辺も是非ご興味ある方はお問い合わせいただければなというふうに思います。それでは今回の第六回セッション6はこれで終了させて頂き、ぜひアンケートにもご協力のほどお願いいたします。では本日野田さん有沢さん吉田さん、どうもありがとうございます。お疲れ様でした。