Crew’s Life : 村野さん、初見さん。絵本ナビは100点満点で何点?

 

派遣で入社。一年後に「部長になってほしい」。その舞台裏は?

PROFILE

村野亜莉沙さん
コマース事業部 部長

専業主婦からパート、そして派遣へ

絵本ナビ、コマース事業部の部長をつとめる村野亜莉沙さんは2004年に大学を卒業後、損害保険会社に一般職として入社した。配属されたのは自動車保険の査定部門だ。物損事故の示談交渉、保険金の支払い業務を担当した。大学時代から将来を誓い合った男性がおり、漠然と、自分は間もなく結婚し、専業主婦になるのだろうと考えていた。
その通り、結婚、出産を機に、2年半勤めた会社を退職する。
子供が幼稚園に通い始めた頃、再び仕事がしたくなり、園芸店でのパートを始める。ガーデニングが趣味で、よく通っていた店だった。店員として働くとともに、一つの鉢に多様な植物を植え、調和を楽しむ「寄せ植え」が好きだったので、専用の資格をとり、そのショップで開催される寄せ植え教室の講師もつとめる。仕事は面白かったが、子供が小学校に入り、学童に通い始めたのを機に、フルタイムの仕事にチャレンジしたいと、派遣会社に登録してみた。
最初に紹介されたのが絵本ナビだった。仕事は新規事業の事務担当で前職の経験を活かせるものだった。絵本ナビのホームページを見てみると面白そうな会社だ。経営理念にも共感できたので、働いてみることにした


会議室にて、真剣なMTGの後は和やかに。

 

注文処理のプロセス改善をしてほしい

2016年10月、初めて出社すると、代表の金柿氏から「電話応対と事務の仕事をお願いします。電話は問い合わせに答えるコールセンターのような仕事です。今日が新規事業のスタートの日、たくさん問い合わせが入ってくると思います」と伝えられ、内容説明を受けた。
ところが、待てど暮らせど、電話がかかってこない。問い合わせがないということは、立ち上げがうまくいっていないということだ。想定外だったが、どうしたら事業がうまく滑り出すか、というアイデアをチームメンバーと共に考えることも、村野さんの仕事になった(その後、それでもうまく行かず、翌年、事業は終了してしまった)。
とはいうものの、それだけでは時間が余ってしまう。ネットを通じた絵本と関連グッズ販売の部署で人が足りなかったので、そこの仕事を手伝うことになった。ネット通販とはいうものの、注文受付から委託先の物流会社へ注文データを送信するまで、一部データ処理の作業が必須だった。その仕事を担当することになる。
入社して2カ月ほどが経過した12月、思いがけないオファーを受けた。「正社員にならないか」というのだ。断る理由はない。正社員になるとともに新たに任されたのは、先の受注から配送、カスタマーサービスまでの業務全体の管理である。金柿社長からは「プロセス改善をしてほしい」と言われる。
村野さんが話す。「ネットで注文が入ると、在庫とマッチングさせたうえで、その注文データを物流会社の倉庫に送信しなければなりません。その際、一部手動でデータを操作して、整えた上で送信しなければなりませんでした。そうした手間がかかるので、注文が多い日は1日4時間もその処理に追われるほどで、土曜出勤を余儀なくされたこともありました」

 

問い合わせが3分の1減り、注文処理時間はゼロに

村野さんの見るところ、問題はまず問い合わせフォームにあった。問い合わせ内容が一目でわからない。他の通販会社のそれも参考にしながら原案を作り、金柿氏以下、他のメンバーに見せると、「すごくいい」という好反応だ。早速、社内のシステム担当者に改編を依頼したのだが、プログラミングの知識がないこともあって、意思疎通がうまく図れない。
一計を案じ、現状と課題、目指すゴールを一枚の文書にまとめ、担当者に送った。そういうことか!すぐに納得してくれ、やり取りがスムーズにできるようになり、村野さんが理想とする問い合わせフォームを作ってくれた。その他、サイトにFAQ(よくある質問と回答集)への導線を充実させたこともあって、問い合わせの数が3分の1程度減った。
この“窓口整備”に半年ほどかけると、次はいよいよ本丸、注文処理プロセスの改善である。目指すは完全自動化だ。「メンバーはみんな自動化できるとは思っていなかったようですが、私はできると直感していました。社長に提案すると、『やりましょう』と即答してくれました」
そこからまたシステム担当者とのやり取りが始まり、約半年後に自動化が完成する。「一日4時間かけていた業務がほぼゼロになった。私は専門家でも何でもなかったのに、提案が受け入れられ、実際に形になり、事業を支えている。自分がこんなことができるなんて、びっくりしました」

 

社長から「部長になってほしい」

村野さんのキャリアの大きな転換点がほどなくやってきた。2018年1月、金柿氏に呼ばれ、こう言われた。「部長になってくれませんか」。
村野さんが振り返る。「部長!?その言葉におののいてしまいました」
部とは村野さん自身が所属していたコマース事業部であり、それまで、部長は金柿社長自身が兼任していた。村野さんが携わっていた個人向け絵本通販のほか、法人向け販売事業、絵本を毎月届けるサブスクリプションサービスという計3つの事業を持ち、全体で8名が所属していた。全員が女性だ。
「他のふたつの事業の仕事はしたことがありませんでしたし、そもそも私に部長なんて果たしてできるのかと不安で。なので、金柿と何度かミーティングをもちました。一方で、こんな機会は滅多にないはずだからと、チャレンジしてみたい気持ちもありました」
その不安を取り除くために、半年は今まで通り、一般社員の肩書のまま、部署全体の仕事を見るトレーニング期間とし、それから副部長という役職に就き、頃合いを見て部長に昇格するという流れとなった。その間、金柿氏とは毎週一回面談し、アドバイスを受け続けた。
メンバーには自分より年上もいるので、どう接するか迷うこともあった。一人ひとりと信頼関係を築くのが先決だと思い、個別に面談を繰り返した。


コロナ禍前はチームメンバーと時々豪華なランチをしてコミュニケーションを。

 

各自の仕事内容を発表しあう

そのうち、各自がお互いを信頼し、仲良く仕事をしているのは確かなのに、見ている方向がバラバラで、組織としての一体感に欠けるという感覚を村野さんは抱く。
そのために、二つのワークをやってみた。
ひとつは、お互いが担当している仕事内容を発表しあうことだ。「毎日何を忙しくやっているのか。何が大変で、何に悩み、どんな時に嬉しいのか。それを共有することで、仲間意識が高まりました。各自が自分の仕事を振り返るいい機会にもなりました」
もう一つは、チーム内にいる絵本のスペシャリストに頼んで、絵本の世界とその魅力を語ってもらう会を開いたことだ。「全員が絵本通販という仕事に携わっていても、たとえば、伝票処理の担当者はその肝心の絵本と無縁のところでひたすら仕事をしています。それでは自分の仕事が持つ意味がわからないのではないか、それでいいのだろうか、と思ったのです」。
絵本と他の本との違いは何か、われわれのお客様である子供や両親にとって、絵本はどんな存在なのか。皆、熱心に聞き入っていた。「絵本と各自の業務がつながった、と思いました。同じ事業を担う大切な仲間という一体感も醸成されました。それからは、担当外の仕事であっても、いいアイデアを思いついたら、遠慮なく出し合うことにしました」

 

絵本ナビでの日々は40点

これは、イソップ童話に出てくるレンガ職人の話を思い起こさせる。通りかかった旅人が、忙しく働く職人たちと出会い、「ここで何をしているんですか」と聞いたところ、一人目は「レンガを積んでいる」、二人目は「壁を作っている」、三人目は「歴史に残る大聖堂を作っているんだ」と答えたという、かのピーター・ドラッカーもよく引用した話だ。村野さんは、絵本の本質を深く理解してもらうことで、メンバーたちに、三人目の職人と同じ視座を持たせたのである。
村野さんに絵本ナビでの日々に点数をつけてもらった。「40点ですね。誰が悪いというわけではなくて、『こうあってほしい』という理想が高いのだと思います。あと、60点分も改善余地があると(笑)。もっとも、改善できた瞬間、至らない点が新たに見つかり、すぐに40点に下がってしまうかもしれません。もともとそうだったのかもしれませんが、絵本ナビに入ってから、現状に満足できず、常に高みを目指す気持ちが強いことに気づきました」
そんな村野さんにとって、働くとはどういうことなのだろうか。「進化し続けること、いいものを作り上げるために常に進み続けること。それによって、自分自身も成長すること」。
同じ質問を、絵本ナビに入ったばかりのころの村野さんにしたらどんな答えが返ってきただろうか。今とは大きく違ったことだろう。その間わずか四年。進化の証といえるだろう。


産休直前のスタッフとチームメンバーで。全員女性のチームで産休育休に入るスタッフも多い。

 

 

学生の時から入りたかった、懐と愛情の深い「『スイミー』みたいな会社」

PROFILE

初見彩香さん
ビジネスプロデュース部

 

読書感想文をテーマにしたイベントを企画開催

この9月19日、「わが子の考えを引き出す!読書感想文ワークショップ」と題したオンラインイベントが開催された。絵本ナビの児童書担当社員とオンライン読書室などを展開するYondemyが、小学生の親子を対象に、親にとっても悩ましい学校課題、読書感想文の本の選び方や書き方を学ぶ1時間半の無料講座だ。
当日は、多数の応募の中から抽選で選ばれた小学3・4年生の親子、計10組が参加。「まずは自分の好きな本を選ぼう。読書感想文はその本のことではなく自分のことを書こう」といった本質的な話が参加者の心を打ち、好評のうちに幕を閉じた。
このイベントの発起人が、ビジネスプロデュース部の初見彩香さんだ。同部の業務は絵本ナビをメディアとして広告枠を販売すること。部員は10名おり、初見さんはそのうち他の4名とともに営業職を担っている。
クライアントはまずは絵本・児童書の出版社だ。先のイベントも出版社の共感の意見を交えて作り上げた。その他に、絵本ナビのサイトを通じ、子育て層にアプローチしたい一般企業がある。たとえば、初見さんはこの3月、精密機械メーカー、キヤノンとのタイアップ広告も手掛けた。コロナ禍で外遊びができなくなった子供向けに、自宅のプリンターで気軽に印刷できる、無料素材のペーパークラフトを紹介するというもので、驚きの作例を盛り込みSNSで好評を得る。

 

絵本ナビは3社目。常にウォッチし続けてきた

初見さんは2019年9月に絵本ナビに入社している。3社目の会社だ。2011年に大学を卒業すると、最初は印刷会社に入った。
初見さんが話す。「昔から本好き、特に絵本の装丁が好きでした。本当は出版社に入りたかったのですが、リーマンショックの余波を受け、各出版社の募集枠が極度に絞られており、いくつも応募したものの、採ってはもらえませんでした。結果、プロダクトとしての本の世界につながっている印刷会社に決めたのです」
営業部員として働き、経験を積む。折からのデジタルシフトの波に、紙主体の印刷会社は乗り遅れてしまいそうだという危機感を抱き、6年勤めた同社を辞め、大手自動車会社の子会社、社員数約500名の総合広告代理店に転職。特定の車種ではなく、ブランド全体を育てる、念願のデジタルマーケティングの仕事に就く。


広告代理店の退職時に、同僚がプレゼントしてくれた初見さんの“記事”。「遊びも仕事もフルスイングは今も変わりません」

 

転職して約2年、一通り仕事を覚え、自信もついてきた頃、絵本ナビがデジタルマーケティングに長けた人材を募集していることを知る。実は学生の頃から絵本ナビの存在を知っていて、面白い会社だと思っていたが、新卒は募集していなかった。社会人になっても、興味があり、情報収集を続けていたのだ。迷わず応募。入社に至った。「絵本ナビは、オンリーワンのサービスを長く続けているのに、知られていない。代表の金柿さん以外の顔が見えにくいという感想を抱いていました。せっかくのサービスがもったいない。その存在をもっと多くの人に知ってもらえれば、ブランドの価値が向上する。そのためにユーザーと対面できて、自社のプロモーションにもつながるイベントを開催してみるのも手かもしれないと入社前から思っていました」
入社後半年、コロナが襲う。素早いオンラインシフトにより、かえって効率的に開催に進んだ。冒頭で紹介したワークショップのオンライン開催にこぎつけたというわけだ。

 

「巨人」のような会社と、「スイミー」のような会社

初見さんに、前職の広告代理店と絵本ナビを比較してもらった。
「その広告代理店では、親会社という大きなブレーンがあって、そこから手足となる広告代理店にそれぞれ司令が下りてくるイメージ。のしのし進む巨人いう感じです。
それに対して、絵本ナビはいつでも等身大サイズ。みな個々の感覚を大事にし、楽しいと思うこと、興奮すること、痛いところはみな一緒。会社そのものが人格を持った人間のようで、まるで「スイミー」です。
社員は仕事柄か、感性が豊かで、なかでも愛情が深い。仲間やお客様に対する愛、絵本に対する愛、クライアントに対する愛が非常に強い」
働き方も大きく違う。
「前の会社は打ち合わせが多く、それだけで一日終えることもありました。時間度外視で仕事の質を高めようという姿勢が強く、深夜のタクシー帰宅もざらでした。
絵本ナビでは皆、就業時間の中で成果を出そうとします。私はどちらの働き方にも適応できるタイプなのですが、就業後にどっぷり時間がある、今のほうが高いパフォーマンスを発揮できている感じがします」
コロナ禍で、絵本ナビは早くから在宅勤務に移行した。金柿社長は2月20日、同25日から全社員が在宅勤務に移行することをプレスリリースで発表した。

 

手を挙げるとやらせてくれる懐の深い会社

「クライアントから『(自社は出社しているので)なぜですか。来て下さい』という連絡が度々入ったのですが、そのプレスリリースを見ていただき納得してもらいました。金柿はそれでも対面での仕事を希望するクライアントとは取り引きしなくてもいい、とまで言ってくれた。私たち社員のことを慮っての判断です。まだどの会社も同じ判断はしていなかった頃で、物流に関わる会社ながらすごいことだと思いました。今はごくわずかな場合を除き、業務は完全オンラインに移行しています」


夏に開催した、SDGsに関する絵本のオンラインイベントの様子。チームでゼロから作り上げていった。

仕事の中身についてはどうだろう。
「これやりたいと手を挙げたら、やらせてくれる度量の大きさが絵本ナビにはある。各自が得意なことを金柿さんがよく把握していて、苦手な仕事を無理やりやらされるようなことはまずありません。前の会社はやりたい仕事を聞くという姿勢は稀薄で、上から降りてきた仕事をこなし続けるイメージでした。私は経験しませんでしたが、人事の都合で、意に沿わない転勤や異動もよくありました」
上司についても聞いた。
「部下に対するリスペクトはもちろんどの会社の上司からも感じました。でも、『あなたはどうしたいのか』と人として寄り添ってくれる姿勢は、絵本ナビが一番ですね」

 

登山と漢方を軸に20年後のライフシフトを目指す

転職した絵本ナビに心底満足しているような初見さんに、その日々の点数をつけてもらった。「90点です。転職して1年ちょっとなので、これからの期待を込めて、10点だけマイナスにしました。前職では自分を忘れるほど忙しくて自己評価も低く、今考えると40点くらいだった。絵本ナビに来て、現状を肯定し、今がすごくいいと考えたほうが、物事はうまく行くとわかったんです。自然とお互いを褒め合う文化がある。もっとできるかも、と思えることが増えました」


八ヶ岳連邦の冬の赤岳へ(標高2899m・風速24m/秒)。「趣味の時間が日々の元気の源です」

今後については、10年くらいは今のマーケティングの仕事を深めていくつもりだ。一方で、20年後くらいを目途に、ライフシフトも考えている。「100歳まで生きるのが当たり前になったら、仕事につく期間がもっと長くなるはずです。本業の仕事とは別に、将来は趣味を生業にできないか、と考えているのです」
ひとつは登山だ。冬山に向かうほどの本格派。「オンラインで、どこでも仕事は出来るので、山梨や長野県あたりに移住し、登山ガイドをやるのもいいかなと」
さらに、漢方にも興味を持ち、独学で勉強している。「漢方は健康を劇的に改善させるわけではないのですが、絵本と同じで、人間の心や体にじんわりと作用します。まだまだ始めたばかりの勉強ですが、漢方の知識を生かし、人々の心や体をボトムアップするような事業ができないかと。そうではなく、将来は漢方用の植物畑を耕しているかもしれません(笑)」

 

誰かを幸せにするために働く

最近、初見さんは児童文学のノーベル賞ともいわれる「国際アンデルセン賞」の日本作家賞候補にもなった、御年80歳の田島征三さんの講話を聞き、その言葉に感動したのだという。「『どの作品が最高傑作ですか』という質問に対し、『いま描いている作品だ』とおっしゃる。そして、堂々と30年後の話もする。この田島さんのように、今の仕事が自分にとって一番と言い続けられるようになりたい」
初見さんにとって、働くとはどういうことか。「働くことはあくまで、目的を達成するための手段だと考えています。その目的は人によってさまざまですが、私の場合は誰かを幸せにすること、笑顔にすることですね」