《SessionⅤ》)野澤友宏さん(ニューホライズンコレクティブ 共同代表)と考えるKX(カイシャ・トランスフォーメーション)5つの課題

人生100年時代にふさわしい「人と会社の新しい関係」の探索・提言を行っている「カイシャの未来研究会2025」(主査/ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO大野誠一)は、2025年3月より10回のシリーズセッション『昭和100年。「日本のカイシャ」はどこへ行く?~KX(カイシャ・トランスフォーメーション)5つの課題』を開催中です。
昭和100年となる2025年までに、昭和モデルの経営から脱却できない「日本のカイシャ」を、人生100年時代の会社=「“人”が主役の会社」へと変えていきたいと6年余にわたって活動してきた研究会の集大成となるセッションです。
毎回、研究会コアメンバーの一人がメインスピーカーとして、持論や想いを展開していきます。SessionⅤ(2025年7月10日開催)のメインスピーカーは、野澤友宏さん(ニューホライズンコレクティブ 共同代表)。
人生100年時代の新しい生き方・働き方である「ライフプレナー」を生み出すコミュニティ「ライフシフト・プラットフォーム」を運営し、本体である電通を飛び出した200余名に加え、様々な企業から、新しい生き方・働き方を模索する人々を受け入れているニューホライズンコレクティブの共同代表であり、先ごろ発刊したばかりの書籍「これからのキャリア開拓」の共著者でもある野澤さんとともに、日本の未来を大きく左右する“ミドルシニア”の未来を考えました。
<開催概要>

開催日時:2025年7月10日(木)12:00~13:00
メインスピーカー:野澤友宏さん(ニューホライズンコレクティブ 共同代表)
ホスト:大野誠一(ライフシフト・ジャパン:代表取締役CEO)
野田稔(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科:教授)
豊田義博(ライフシフト・ジャパン:取締役CRO)
<このセッションのエッセンス>
1:ニューホライズンコレクティブの概要と成果
ニューホライズンコレクティブは2021年に電通の40代以上230名が電通を卒業して設立したプラットフォーム。「次の出番を作る場所」をスローガンに、新しい学びと仲間作りを両輪として活動している。5年目を迎え、延べ18社が参加し、87%以上のメンバーが「充実している」と回答。8割以上が学びを実践し、7割以上が新しい収入源を得ている。当初は「リストラ」と誤解されたが、現在はリスキリングアワード最優秀賞を受賞するなど社会的評価も高まっている。
2:ミドルシニアを取り巻く課題
日本企業では「人材の砂漠化」が進行している。表面的には人がいるが、組織の活力・学習・成長が停滞し、「取れない・育たない・動かない」状態に陥っている。企業の7割以上が中高年キャリア支援に満足していると回答する一方、当事者の半数以上は満足していない。特に「キャリア相談の機会の不足」「社外との交流や学びの機会の不足」「異動や新しい挑戦機会の限定」に不満を感じている。社外交流の減少とキャリア支援の若年層偏重により、閉塞感が広がっている。
3:人材の緑地化に向けた取り組み
人材の「緑地化」には「越境」と「開拓」が重要。越境キャリアドックを通じて異業種間の交流を促進し、自己の棚卸しと新たな可能性の発見を支援する。他者からの言語化によって新たな自己認識が生まれ、キャリアの捉え直しが起こる。また「ライフプレナー」として自分が何者であるかを言語化し、キャリアビジョンを見定めながら開拓していく精神が必要。「Be Do Haveの法則」として、まず自分が何者かを明確にしてから行動することの重要性を説いている。
4:ニューホライズンコレクティブの事例紹介
メンバーの多様な活躍事例が紹介された。「売れる仕組み創造室」では、ミドルシニアのネットワークとフットワークを活かし、異なる企業の課題を掛け合わせて新商品開発を実現する。また、農業への転身、地域活性化、民泊事業、日本語教師への転身など、従来の電通的キャリアとは全く異なる分野での活躍も多数。これらの事例は、社外との交流や新たな挑戦によって、自分の価値を再発見し、社会貢献できる喜びを見出した結果と評価された。
5:社会変革に向けた展望
野田教授は日本社会が過渡期にあり、ミドルシニアの価値再認識が進んでいるが、当事者の意識変革がまだ追いついていないと指摘。企業内でも社内起業などミドルシニアの新たな活躍の場が生まれつつある。野沢氏は「いろいろな人にあふれる場所」「雇用・採用の常識をアップデート」「会社を超えた繋がりの機会」の重要性を強調。個人の変化、企業の変化、社会全体の変化が連動して初めて真の変革が起こるという認識で一致し、流動性の中で適材適所を実現する社会への期待が示された。
<このセッションのキーワード>
#人材の砂漠化状態
#人材の緑地化
#越境と開拓
#越境キャリアドック
#ライフプレナー
#企業と個人の新しい関係をつくるオープンプラットホーム
#流動化の中で決まる適材適所
#日経リスキリングアワード2024 企業・団体イノベーティブ部門最優秀賞受賞
#野澤友宏
#ライフシフトジャパン
<参加者の声(アンケートより)>
→ 視覚的で象徴的、施策や成長のあり方を自然にたとえた秀逸な比喩。
→ 制度設計にとどまらず、風土や文化そのものを変える必要性を突く強いメッセージ。
→ 現場のリアルに直球で刺さる言葉。強い共感と反省を呼ぶ。
→ 組織と個人の“温度差”を鋭く切り取った一文。
<アーカイブ映像(フル動画)>
<全文テキスト>
【オープニング&前回アンケートからの振り返り】
大野 :はい。皆さんこんにちは。ちょうど12時になりました。ライフシフト・ジャパンの大野です。
3月にスタートいたしましたこのKXセッション、年末まで続いていきますけれども、今日は5回目ということで、新たにニューホライズンコレクティブの野澤さんをゲストに、お届けしてまいります。3月14日にスタートいたしまして、今日で5回目になりました。いつも通り、進行は私大野とライフシフト・ジャパンの豊田、それから明治大学専門職大学院の野田先生の3人で進めさせていただきます。
豊田さん、野田さん、よろしくお願いします。
豊田 :よろしくお願いします。
大野:前回の第4回は、島田由佳さんをゲストにお招きして、和歌山県のみのべ町からお届けさせていただきました。島田さんは、以前ユニリーバの人事だったわけですけれども、今は和歌山に住民票を移されて、1次産業のWell-Beingをずっと追求されています。やっぱり相変わらず、島田さんからはキーワードがたくさん出てくると感じました。
人の力を解き放つとか、田舎にいると当たり前のことを価値にする、田舎にいるとわからない価値を彼女がどんどん言語化しているというか、そんな実感もありました。「とにかく命がけでやっているんですよ」とか「 Well-Being爆上がり」とか、いろいろなキーワードが出てきてインパクトがありましたが、大野と豊田さんは「梅ワー(=梅収穫ワーケーション)にも参加させていただきました。
豊田さん、島田さんのインパクトはいかがでしたか?
豊田 :そうですね。変わらずというか、更にパワーアップしてご自身の拠点、新しく変わられたところで、我々もいつもと違うちょっと配信でしたけども、前日に大野さんと私、やっぱりちゃんと作業して、かなりデトックスも出来て、いい感じになっていたと思います(笑)。今までとちょっと違う面白いものが送れたと思います。島田さん、相変わらず素晴らしかったですね。
大野:はい。野田先生は前回だけ欠席でしたけれども・・・
野田 :そうなんですよ。大変残念だったんですけれども、よりにもよって、「そこを欠席するかー(涙)」っていうくらい、非常に残念でした。
大野 :でも梅収穫ワーケーションは、結構腰にくるので(笑)。
野田 :そうですか・・・それは、行かなくて良かったかも知れない(笑)。腰のWell-Beingには良くなかったですね(笑)
【今回のゲスト:ニューホライズンコレクティブの野澤さんをご紹介
設立後5年間のプロセスと「ミドルシニア」を取り巻く現在の日本社会の課題】
大野 :アーカイブでも見ることができますので、よろしくお願いいたします。 そして今日はこのお昼時の時間で、ずっとこのシリーズを毎月やっておりますけれども、電通のグループ会社でもある、ニューホライズンコレクティブの野澤さんに来ていただいています。
野澤さん、よろしくお願いいたします。
野澤 :よろしくお願いいたします。
大野:よろしくお願いします。 野澤さんともお久しぶりになりますけれども、野田先生はニューホライズンコレクティブとは、設立前からかなり深い関係を持ってらっしゃっているわけですけれども、5年目を迎えて、ニューホライズン(コレクティブ:以下同様)を「壮大な社会実験」だと僕は思っています。「ニューホライズンコレクティブの5年目の今」みたいなこともお聞きしたいと思っていますし。「日本のミドルシニアの未来」を考えると、とても大事なケーススタディだと思っています。まずは野田先生、設立前の5年前から関わってきた立場として、この5年間をどんなふうに見ていらっしゃいますか?
野田 :まさに設立前からずっと、野澤さんたちとお付き合いをさせていただいて。最初は、誤解していました。「これって要するに姥捨て山を作ったんだろお前ら。俺はそういうことには一切与(くみ)したくないからな」って喧嘩売るところから、実は始めまして・・・。 そうしたらなんと親会社の社長が、そうじゃないってことを自ら言明してくれまして。「そこまで言うならやるか」というくらいだったんですよ。「ミドルシニアなんて、もう出ていけ」というような時代ですからね。しかもその人たちがどうなろうと「年金もあるし退職金もあるし、食っていけるだろう」という、 本当にそんな時代でした。
それがわずか5年前だとは信じられないくらい、今、世の中は様変わりしています。 そういう意味では「5年後の今」を先取りした形でニューホライズンはやってきて、「壮大な社会実験」と言いましたけれども、世の中を変えたいとみんなが思っていたからだと思うんですよね。 どのくらい変わったかはわかりませんけれども、今ちょうどサーフィンの波のてっぺんにいる会社だなと思うので、今日のお話も楽しみにしています。
大野 : 5年前、電通の40代以降の方々は230人が電通を卒業して、インフラ作りプロジェクト全員が業務委託契約をするという、とてもユニークなプロジェクトでスタートしているわけですけれども、今日はまず、野澤さんの方から、野澤さんおよびニューホライズンのご紹介とこの5年間のプロセス、そして「ミドルシニア」という今日のキーワードでお話を進めていこうと思っています。その「ミドルシニア」を取り巻く今の日本社会の課題みたいなところを、ちょっとキーワードを交えてご紹介をしていただきたいと思っております。 それを受けてディスカッションを深めていければと思いますので、まず野澤さん、前半のプレゼンを、よろしくお願いいたします。
野澤:みなさん、改めまして。野澤友宏でございます。よろしくお願いいたします。
では前半簡単に、私どもの自己紹介の時間にさせていただければと思います。
私は野澤智大と申します。ニューホライズンコレクティブ合同会社で代表をしております。1973年生まれです。「ミドルシニア」というキーワードが出たときに、使命感がムクムクっとするのは、1973年生まれの同級生が一番多いんですね。日本の人口ピラミッドでも昭和48年生まれで203万人にとかいるんですね。 2024年生まれが70万人を切るぐらいなので、3倍ぐらいのボリュームゾーンがあるんですよ。 同級生と前後(の年齢を)含めたら、1000万人近くいるわけです。この皆さんに何とかいきいきした“エース人生”を生きてもらいたい!そんなお手伝いをしたいなと思って、今やっております。
そしてニューホライズンコレクティブは、先ほどご紹介いただきましたが、2021年1月に元電通のメンバー230人とスタートいたしまして、今5年目を迎えました。 この新しい取り組みは「ライフシフトプラットフォーム」。一言で言いますと「人生100年時代、ミドルシニアの新しい出番の創出を叶えるプラットフォーム」でございます。
【ライフシフトプラットフォーム-新しい「出番」を創る場所】

スローガンは「次の出番を作る場所」というところでやってきておりますが、簡単に言いますと、何を提供しているかというと「新しい学びの機会」です。 会社を卒業してからも必要な学びを提供する。 そして新しい仲間作りの機会。長く価値を発揮するためには、支え合う仲間が必要です。 学びと仲間を両輪として新しい出番の創出をサポートするということを5年間やってきております。 そして元々電通だけで始まった取り組みですけれども、2023年の4月からトライアルを始めまして、この取り組みに賛同していただける企業様が少しずつ増えてまいりました。 今では延べ18社の皆さんに参加いただいております。 特にパナソニックコネクトさんなんかは会社の制度として、取り入れてくださっておりまして、この4月から、全国の皆さんにご参加いただいております。
2021年から5年間、毎年アンケートをとっていますが、本当にドキドキするんです。
「満足してますか」とか「充実してますか」とお伺いするんですけれども、初年度87. 2%の方がこの取り組みに「充実している」とお答えいただいたときは、本当にほっとしました。ときはコロナ禍で、とんでもない時代にこの取り組みが始まってしまったので、皆さん大丈夫かなと思ったんですけれども、8〜9割近い皆さんから「充実していた」というお話をいただきました。 そこから5年間、「89%」「85%」「87%」と9割近くの皆さんが「充実している」とお答えくださっています。
この数字は我々運営している側からは、本当にほっとする数字でございます。 そしてもう一つ、我々メンバーの特徴は「学び」でしょうか。「 学びを実践していますか」という問いに対しては、約8割の皆さんから「実践しています」というお答えをいただいています。では、「2割が学んでないのか」というと、決してそんなことはないと思うんですけれども、お仕事リサーチ等々では「学んでいる」という答えはいただいております。「将来のために何か学びを得ていますか」というご質問に対しては、8割以上の方が「学んでいる」とお話をいただいております。「この半年で新しい収入源を活動で得ましたか」という質問には、7割を超える皆さんが新しい収入源を得ているということです。
5年目を迎えて前半で、「全員インタビュー」をしました。今はもう卒業したメンバーもいますから、213名の皆さんに聞いてみたところ、本当に多岐にわたる活躍をされております。 多分ご本人も、まさか4年経ってここに来るとは、みたいなお仕事をされている方もいますし、人のご縁でいろいろ動いている方もいますね。 とはいえ、決まった収入があってそれをずっと続けてる方はもちろんいるんですけれども、やっぱり新しいところにどんどん収入源というか活躍の場を広げている方が多いのが面白いというのが、我々の特徴だと思っています。
そんなこんなで、2021年当初は、先ほど野田先生のお話にもありましたが、電通という会社の印象もあるのでしょうか・・・「ていのいいリストラじゃないか」なんて、最初の頃はメディアの皆さまにも書かれたんですけれども、最近は少しずつご理解いただくようになりまして、昨年2024年には「第1回リスキリングアワードの企業団体イノベーティブ部門」で「最優秀賞」をいただきました。
リスキリングというテーマの中でいろんな企業の皆さんが集まって、そこで「コ・スキリング」といって、「一緒に勉強する」という意味で言っていますが、その「コ・スキリング」の成果を認めていただいたと思っております。

メディアの皆さんにも少しずつご理解いただいて、NHKさんにご取材いただいたり、HRZineさんとか、リクルートワークスさんにもご取材いただいたり、こうやっていろいろな人事の皆さんにお話をする機会をいただけるのは、本当に嬉しいです。 ですので、今日この場も、めちゃくちゃ嬉しいんです。こういう機会をいただきまして、本当にありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。大野さん、次の話も続けてもよろしいですか?
大野 :はい。次にミドルシニアを取り巻く問題意識を進めていただいて結構です。
【ミドルシニア層を取り巻く問題意識ーミドルシニアにおける“人材の砂漠化”】
野澤: そうですね。我々、職業柄・・・という言い方は変ですかね・・・本当にいろいろな企業の人事の皆さんとお話をしますし、何よりやはり、悩まれるミドルシニア、そして悩みから抜けたミドルシニアのたくさんの方とお話をしてきました。
その中で、今もこういう問題意識が大きいんじゃないかなと思って、今日は「人材の砂漠化」というところをお話させていただきます。 どの会社の人事の方とお話しても「労働力不足の深刻化」というのは、もう本当に大きいですね。 先ほど野田先生とも話していたんですが、少し前までは、「ミドルシニアの皆さん、もう、辞めてもらえないかな」みたいな風潮があったんですけれど、今や本当に労働力が不足しているので、会社としては何とかミドルシニアを活用せねば、みたいな風潮があるんですね。けれども、そこのマッチングがうまくいってない。日本全体で労働力不足が深刻化していると、どの(企業の)人事の皆さんからもお話を聞きます。
一方で、働く人は、特にミドルシニアの皆さん、これミドルシニアだけじゃないんですけれども、「静かな離脱」「静かな退職」というのも、聞かれます。 とにかく今の仕事に対して、過度に求めず、過度に熱くならず。とにかく指示されたことだけをして、それ以上のことはしない。「働かないおじさん」ということではなく、働くんだけれども、求められること以上はやらない、ということを聞くたびに、胸が痛いです。
そして、さっきの「リスキリングアワード」でも、とにかく「40代・50代が学ばない」という話もします。「上からも下からも染み込まない岩盤層・粘土層」というような言い方があると、これもミドルシニアだとすると、胸が痛い言葉です。

そんなふうに今、ミドルシニアを取り巻く結構大きな問題というか課題の中でこの「労働力不足の深刻化」「働く人の『静かな離脱』」「リスキリングの停滞」、これは今に始まった問題じゃないと思うんですよね。でもそれがこうして表面化しているということは、やはり根が深い問題であるに違いないということです。だからここをどうしたらいいのかというところを考えていくと、この「ミドルシニアにおける“人材の砂漠化”」が予想以上に進んでいるんじゃないかと思っております。

要は、表面的には、会社に人は居る。けれども、「労働力不足」と言われるように、人はいるんだけれど、組織の活力・学習・成長が止まっちゃっているんですよね。
「採れない」「育たない」「動かない」みたいな。「 採れない」というのは、人は要る、新たに欲しい。人材が欲しいんだけれど、いい人が採用できないー「人手不足」。
社内で育てようと思っても、なかなか学ばない、学ぼうとしないー「リスキル不全」。
社内を何とか動かしたい、活用したいと思っても、もうモチベーションが上がらない。動かないー「静かなる退職」。
もう動機が干上がっている構造というか、組織全体が“慢性的な脱水症状”に陥っているんじゃないかと思うんです。これは、先ほど言いましたが、“働かないおじさん”とか“妖精さん”とか、このミドルシニアの課題になると、とかく「人」「その人個人」の問題にフォーカスされがちなんですが、いや、個人の問題ではなくて、もっとその土壌そのものが問題なんじゃないかと、課題感を持って調査をしてみました。
【企業によるミドルシニア層へのキャリア支援の実態】
まずは、「中高年(40~65歳)のキャリアサポートを行っていますか?」と企業の皆様に聞いてみると、「注力して行っている」が37. 9%、「ある程度取り組んでいる」が44. 9%。実は、数字として驚いたんです。こんなに多くの企業の方、人事担当の方が、中高年のキャリアサポートをしているんだと。我々は、あまり(中高年のキャリアサポートを)してないんじゃないかなんて思っていたんですよね。 でもこれだけのパーセンテージの(企業の)方がしているんですね。 「中高年齢層向けのキャリアサポートはどのようなものですか?」と聞くと、「社内異動・再配置の支援」や「研修・スキルアップの機会提供」「キャリア相談窓口の設置」など。本当にちゃんとやってくれているじゃないですか!という感じなんです。
そうは言っても、「中高年層のキャリアサポートと若手の育成支援、どちらを優先していますか?」というと、「明らかに若手を優先している」「どちらかといえば若手を優先している」で7割ぐらい。若手優先、そりゃそうでしょう。でもこれ「中高年は3割しかサポートしてくれてないのかぁ」ってことじゃなくて、「3割もサポートしてくれてるんだ!」という感じなんです。 だって、4、5年前までは、ほぼほぼ若手(支援)だったと思いますよ。それが3割ぐらいまで、徐々に徐々に「ミドルシニアのキャリアサポート」が増えてきているというところに、この数字の意味があると思います。
人事担当者の7割以上が「中高年キャリア支援に満足している」と回答しているんです。「 若手を優先してはいますが、中高年層のキャリアサポートもやっていますよ」と。でも、「中高年の満足度はどうか」というと、そこにはギャップがあるんですね。(中高年層の)半数以上が「満足していない」という話をするんですね。
「キャリアサポートの不満はどんなことがあるのか」というと、「キャリアについて相談できる機会が少ない」とおっしゃっているんです(33. 6%)。「キャリア相談窓口」を結構やっていても、なかなか社員のところには届いてない。 そして、面白いと思ったのは次
でした。「 社外との交流や学びの機会が少ない」というところに非常に不満を持っているんですね。 要はもう少し、ある程度大きな会社になってくるとそれなりに人数もいるので、何となく経営層の皆さん、人事の皆さんは、社内で交流を活発にしていれば良いのではないかという意識があるのかもしれないんですけれど、ミドルシニアの皆さんは、やはり「社内を超えた社外との交流や学びの機会」というものを求めているんです。
それがないがゆえに、不満に思っているというんですね。 あと「異動や新しい挑戦の機会が限られている」 このあたりは、一言で言うと「閉塞感」でしょうか? 閉塞感を感じるんだけれども、それに対して相談できるなにか、それを打開してくれる糸口が見えないというところに、大きな不満を感じているようです。
40代以上の中高年者層が、社外交流の減少を感じているんですね。 若い時と比較して、社外の方と交流する機会は減っていますから、「(商談や交流会など)社外と交流する機会がとても減った」「減ってきている」という方が5割以上います。「今まで社外の方と話す機会で感じたことを教えてください」というと、「いろんな人と交流することで刺激を受けた」「他社の働き方を知って視野が広がった」 など。そうやって刺激を受けて、やっぱり閉塞感を打開していくなんらかのアプローチがあったはずなんですね。 それが今や完全になくなっているんです。
つまりは、社外交流の減少、そしてキャリア支援の若年層偏重というのがあると「越境なき日常」でとにかく閉塞感ですよね。そして役職定年など、ミドルシニアは年を重ねれば重ねるほど、役割が限られてくる。そうして面白くないから、だんだんと当事者意識が低下する。 人材投資は、経営としては先送りされる。こう考えると、先ほどの「採れない・育たない・動かないと」という状況が発生してしまうのも、もしかしたら無理がないのかなという気にもなります。
つまりは、「働かないおじさん」や「妖精さん」というような社員の皆さんは、こういう表現をするのはどうかとは思いますが、ある種「モチベーションが枯れている」状態ですよね。 でも、モチベーションが枯れているのは「人」が枯れているのではなくて、人が育たなくなってしまった「土壌」が問題なんじゃないかと、このアンケートを見ても思うわけです。
時代は刻々と変わっています。人事課題も変わっています。その中で、ミドルシニアの活用こそが、これからの企業にとっての大きな成長戦略だと思いますし、さらには、ミドルシニアこそ、活性化、生き生きと働くミドルシニアが増えることこそが、未来への鍵なんじゃないかと思っている次第です。
大野:ありがとうございます。前半の野澤さんの問題意識の部分を、今、共有をいただきましたが、野田先生、この「社外との交流がなくて、砂漠化している」というミドルシニアの状況について、いろいろな構造的な問題があると思うんですが、直近の状況ではどの野田先生どう捉えていらっしゃいますか?
【まさに今が、ミドルシニア活用の過渡期】
野田:まさに今、過渡期だと思うんですよ。 長らくミドルシニアの人たち、「企業の新陳代謝」とよく人事の方が言ったんですが、「今のポストを若い人に明け渡して、その人にチャンスを与えるために、逆に言うと、ミドルシニアには犠牲になってくれ」というような意識があったんだと思うんですよ。 それが“普通”だったしミドルシニアである本人も「もう終わったな」「私は終わったな」というところだったんですよね。なので、学び直しもしなくていいと。 あとは余生に向けてだんだんトーンダウンするという、これが「社会的風潮」だったわけですよ。 これが激変したわけでしょ。 多分、企業もミドルシニア側も、面食らっちゃってるという感じなんだと思うんです。
でももう賽は投げられているので、方向が決まっているわけだから、いち早くこれに気づいたところから少しずつ、変わり始めた。企業の方がちょっと早いですよね。 本人たちの意識が変わる前に、企業の方が取り組んでいるけれど、正直言うと、本人たちがなかなか、“笛吹けど踊らず“という状態に僕には見えます。
大野:そういう意味では今、冒頭にご紹介いただいたニューホライズンコレクティブのメンバーたちの充実度は、世の中平均とは全く違う風景に見えるわけです。
野田:全然違いますよね。
大野:マインドも、意識も、行動もすごく変わってるんだろうなと思いますが、そこ、野澤さん、どうですかね?
野澤 :本当そうですね。前回の島田さんの会で、なるほどと思ったのが「体験より貢献」という話になっていたんですけれど、いろいろな活動の皆さんの話を聞いているといろいろな領域に行くと貢献できる場というのが広がるんですよね。今まで会社に居て、あまり感謝もされない、なにか貢献できていない感じや閉塞感があったんだけれど、やっぱり会社を辞めて自分で領域開拓をしていると、今までとは全然関係のなかったところで「ありがとう」と言われ、感謝され、貢献できている感じがあるというところに、共通して生きがいというか、充実度を感じるという話がありますね。
大野:そうですね。 豊田さんは、リクルートワークス研究所でもずっと研究を続けてこられていて、構造的な問題もいろいろ研究してきたと思うんですが、やっぱりミドルシニア1人ひとりの問題というよりは、構造的で時代的課題があると感じますか?
その辺は、さきほど野田先生から“踊り場”という話もありましたけれど。
豊田 :本当にそうじゃないですかね。 野田さんがおっしゃるように、企業のマインドセットが随分変わったのは、野澤さんのデータからもとても顕著にわかります。 一方で、いわゆる根幹の人材マネジメントの割とメインストリームのシステムそのものは、相変わらずミドルぐらいまでに何か選抜があって、結局緩やかに勝ち負けみたいのがつくという形です。うまく昇格できない人たちにも、生き生きできる場が与えられるかというと、本人にとって苦手なフィールドであったりとか、社会との接点がないところだというふうに、大きな人材配置のそのものは、まだ大きく変えられてないという問題がそもそもある中で、ミドルは、「なんだか言われるものの、目の前にある景色は変わってない」という光景がとても顕著だと思います。
リクルートワークス研究所の研究を起点に、エンジニアのキャリア支援事業をしていますが、このエンジニアの人たちを見ても、ミドルシニアにはすごくいいものを持っているのに全然活かす場面がない。“ラビリンス”と言って、皆さん“ラビリンス”の中に居て外が見えないから、自分の活かしどころが全然見えない。 先ほどのお話の「外に出たいという気持ちをちゃんと持っているということは、すごく大切な救いの道かもしれない」と思うんですけれども、「外に出ることで本人を取り戻す」みたいなことを、ニューホライズンがやっているようなことは、本当に、混迷している部分のブレークスルーになる糸口と感じます。
野田 :ちょっとだけ付け加えさせていただきますと、人事は今のいろいろな制度を整えつつあると思うんです。 ところが、整えても、それを運用してる人事部員もまだパラダイムチェンジしていないもんだから、自分たちで作った制度をちゃんと運用しないんです。「だって、できるわけないだろう」と平気で言うわけですよ。お前らが作った制度だろうと思うんだけれども、いろいろなところで、ちょっとずつミスマッチが起きているんです。
これが全部回り始めたら「あんな時代もあったね」って多分みんな言うと思うんですけれども、今はまだ、“あんな時代”なんですよ。まだ。なので、いろいろなところでひずみがあって、いろいろなところで苦しんでるなという感じがしますね。
大野:日本の企業って、制度設計に関してはすごく進んでいると、よく言われますよね。 例えば育児休業なども、全然進んでいないように見えるんだけれども、制度としては、先進国の中でも最先端に近い制度があるんだけれど、社会は変わっていない・・・
野田:育児休業の制度があっても「なに?おまえ取るわけ?」だけみたいな(笑)
その瞬間に「いや・・取らないです」みたいになっちゃうっていうね(笑)これですね・・・
大野:このミドルシニアのことを考えたとき、人手不足だからということで、企業のマインドがすごく変わってきている社会的背景はあるじゃないですか?
何年か前までは、外に出ていってもらってもいいよと言っていたのが、(人手不足で)外に出せなくなっている。 さらに「70歳就業法」とかもあるので、定年も延ばすかとか、定年なくすかという話になると、より抱え込んでいくようなベクトルが、企業の中で発生する可能性もあると思うんですが、それでみんなが幸せになるのかというと、そうでもないような気もするんですけれども。
野澤 :ありますね・・・
野田:これから考えなきゃいけないのは、社会全体での最適化を考えなきゃ駄目で。 「適材適所」というのは、流動性の中で生まれてくるわけですよね。ゴソゴソ動いているうちに一番自分のハマるところにポコッとはまるということなので、流動性がないまま適材適所にしようと思ったって、まず無理だと思います。
今「抱え込もうとしている」とおっしゃっていたけれども、確かにその気持ちはあるんだけれども、でも一方で、なんだか上手くハマらないなという気持ちも持ってるわけですよね? 流動化の中で(こそ)より最適な適材適所につながるんだってことを・・でも、もうすぐ気がつくんじゃないかなという感じはしていますけどね。 私は。
もう(抱え込むのは)無理っていうところに来てるんじゃないですかね・・・
大野 :1人ひとりのマインドと、組織・企業が変わることと社会全体が変わることが一気に連動して変わらないと、動かないよねってこと?
野田 :もう・・・そこがややこしいんですよ・・・
大野 :その瞬間がもう近づいているのか?・・・
野田 :もうちょっと!もうちょっとで、(社会全体が変わる瞬間が)来るんじゃないかと思っているんですけどね(笑)
大野 :はい。 では、そういうところについて野澤さんがニューホライズンの現場で、いろいろな取り組みの中で感じていらっしゃる、「砂漠化」をどう「緑地化」するかというところについて、プレゼンをご用意いただいてるので、そこのお話を聞かせてください。
野澤:ありがとうございます。
大野:お願いいたします。
【人材の”緑地化”に向けて土壌改良するー「越境キャリアドック」】
野澤 : はい。「人材の緑地化」とは、なんだかまた大仰な言葉をつくってしまいましたが、本当は水を与えるだけではなく、土壌改良まですることが大事だと思います。人材の緑地化に向けての土壌改良をどうすればいいかというと、2つのキーワードがあると思っております。
1つ目は、「越境」です。
先ほどのアンケートにもありましたけれども、社外との交流を求めているんですよね。いろいろな方の話を聞くと、「会社にいて光が当たる部分」と「社会に出て光が当たる部分」って全然違いますので、今会社の中にいてんだかちょっとくすぶっているなという方が社会に出た瞬間、全然光の当たり方が違う。ここに光が当たるんだ!イキイキするなぁなんてこともあると思います。特にライフシフトプラットのメンバーにも何回も言っているんですけれども「才能は人が見つける」をキーワードとして言っておりまして。
自分にとっては取るに足らないものかもしれないのだけれども、とにかく「私は何ができる。何が好きで、どんな人で」ってことです。 とにかく会話をする、対話をする中で「そんなことできるんだ!」「それはありがたい!お願いします!」っていう出番が生まれると思うんですよね。議事録なんていうのは最たるもので、企業の中にいたら議事録を取るなんてこと、当たり前でしょ、みんなできるでしょ、と思っている。けれども意外と、それほど上手に議事録を取れる人なんていなかったりする。そうすると、「議事録を取れるのは素晴らしいね」と、本当に(社外で求められて)チームに入っていったという話も耳にします。
社外の人と交わることによって自分にも光が当たるし、逆に自分も社外に出て違う人に光を当てる、そんな役目もあるのではないかと思っております。 なので、「キャリアドック」はずっと前から厚労省が推奨していますけれども、その中でも「越境キャリアドック」というものをこの4月から進めております。 異業種の視点に触れる「越境体験」、キャリアを考えることの異業種(の皆さん)、業種業態を超えた皆さんとワークをすることで、また全然違うキャリアへの(光の)当たり方があると思っております。
今ご参加いただいている(中に)某大手金融機関の人事のお姉さまがいらっしゃるんですけれども、(元々)人事(の方)なので、キャリアドックやキャリア研修を再三再四やってきたけれども、この「越境キャリアドック」は(元々ライフシフトプラットフォームの中でやっていたキャリアワークショップですけれども)同じ会社の中にいたら、キャリアワークショップをするにしても、参加するのは、同僚か後輩で、一緒に頻繁に仕事をしているわけじゃないにしても、名前は聞いたことある人などがいるので、自分のキャリアを考える、これからどうしたいかを考えるとき、どうしても本音がなかなか話せなかったと。けれども、ライフシフトプラットフォームに参加して、「越境キャリアドック」に参加して、ワークショップに入ると、同じ同年代の人がいる心理的安全性の中で進むので、想像以上に本音を語ることができる。 本当に自分がどうしたいのかを考えることができる。違う人の光の当て方で変わるので、今までのキャリアワークショップでは気付けなかった自分に気づき、わからなかった自分がやりたいことがわかった、などというお話もいただいています。なので、こういう「越境体験」、キャリアというものを語る上で「越境」の場を作るということが非常に重要なんだと思っております。
「越境キャリアドック」はそういったキャリアワークショップ、自分の棚卸をして、そして未来に何をやりたいかといことをお話していくんですけれども、棚卸をするにしても、「小さい頃何に夢中になりましたか」と尋ねると、例えば「かけっこが好きでした」という話があります。足が速い人が「自分はかけっこが好きで、足が速かった」というアイデンティティを語るんですが、それに対してグループワークで、例えば、「神様はこの少年にどんな才能をお与えになったと思いますか?」という問いに対して、周りの人がいろいろ語るんです。 「早く走る才能を与えましたね」とか「かけっこが好きだったということは、0から1の0→1の遊びをつくることが好きだったんですね」とか。 確かにそうですよね。“かけっこ”って0→1の遊びですよね。
「0→1の遊びと”かけっこ”とはおよそ結びつかなかった・・・ 中学生のときに確かに0→1でカードゲームをつくって遊んだな」という経験や、「会社に入ってからチームメンバーと0→1でプロジェクトを作ったな」という経験と結びついたりする。 そうすると今までとは全然違うキャリア感というか、過去の捉え直しが始まり、現在の捉え直しまで行くなどというケースも結構ありました。
そんな風に、ワークショップで他の人の言葉によって新たな自分に気づいて、それをキャリアカウンセラーの皆さんと面談をしていただくと、これからに対しての光の当たり方が全く変わってくるなんていう話も、結構あります。何人かから聞きましたが、ずっとモヤモヤしていて「自分は何がやりたいんだろうな・・・この会社じゃないんだろうな・・・そろそろやめようかな」と思っていた人が、この「越境キャリアドック」を受けたことによって、とにかく過去と現在のやっていることが繋がって、そして未来にやりたいことが繋がっちゃった。 そうすると、自分がやりたかったことって現在やっていることと繋がっている、むしろ、現在やっていることって自分がやりたいことなのでは、と捉え直しができて、ものすごく現在の仕事に対するモチベーションが上がった、などという話も1人や2人じゃなく(たくさんの方から)感想をいただいています。
【ライフプレナー:『Be Do Haveの法則』でキャリアを開拓する】
そんなことがあるので、「越境」は非常に重要だと思います。 そしてもう1つが「開拓」です。「緑地化」では「開拓」というのは欠かせないと思うのですが、「アントレプレナー」がゼロから事業を立ち上げるように、我々も自分の意思で人生を切り開いていく必要があるのではないかと思い、「ライフプレナー」という言葉を、法政大学の田中健之介先生と(一緒に)開発しまして、今、推奨しています。まさに「キャリアを開拓する」です。 
最近、こんな本(『これからのキャリア開拓 ミドルシニア期に価値を創るライフプレナー/中央経済社』)を出しました。皆さん、是非買ってください!
本の中にも書きましたが、とても大事だと思っていることがありまして。「Be Do Haveの法則」と言って、「何かになりたかったら、まずBeから始める」(ということ。)
人は幸せになりたいから、例えば、「年収1000万になったら幸せになれるんじゃないかなと思って仕事を一生懸命頑張る(=Do)。年収1000万という結果を得て(=Have)、そして幸せになる」とそういう気持ちでやっちゃうんだけれども、実は逆で、まず幸せになりたかったら幸せな状態になりましょうね(=Be)みたいなことを例え話で言いますけれども、その(”Be”=)「自分は何者であるか」というものを会社に預けてしまっている人が多いんじゃないか?と思うんです。
「自分が何者か」ということをきちんと言語化できることが「キャリア開拓」の中でも重要なツールになっていくのではないかと思います。 自分は何者なのか、何をする人なのか、これから何をしようとしているのか、しっかり自分のキャリアビジョンを見定めながら開拓していく、そんな精神が必要だと思っています。
【ライフシフトプラットフォームの『売れる仕組み創造室』の取り組み事例】
ここからいくつか、越境して開拓をした我々のメンバーの事例をお話します。『売れる仕組み創造室』というユニットが、ライフシフトプラットフォームの中にありまして、この方たちが非常に面白いことをしております。ミドルシニアならではのネットワークとフットワークで全国いろいろなところを飛び回り、Aという会社の課題とBという会社の課題を両方掛け合わせたら、全く新しいイノベーションが起こるという感じです。

例えば「温暖化が進んで、良いワカメがなかなか取れなくなってしまっている。 形は微妙だけれども味は変わらない。美味しいワカメを取るにはどうしたらいいんだろう」と。そのお手伝いをしながら、この『チーズdeわかめ』という商品が生まれました。
さらには『乙女の味方』です。規格外の野菜の端切れを捨てるのはもったいないと思っていた業者さんと、活用しきれてない長州鶏のレバーをもったいないなと思っている人たちが「これ一緒にすればいいんじゃない?」などと言って開発されたのが、『乙女の味方』です。こんなふうにAの課題とBの課題が“がっちゃんこ”して、こんなに素敵な商品になるんだなということです。

(1つ前のスライドに戻ると)このビールもそうなんです。「美味しいビールが作れないか?」と思っていた小井土ビールさんと、「リンゴの皮に一番甘み成分があるんだけれど、どうしても皮だから向いちゃう、この甘み成分もったいない・・・」と考えていた信州大学の研究を両方くっつけて、新しいクラフトビールが生まれました。そんな、全国のお悩みをいろいろと聞いて歩き回って、ちゃんと(カタチに)するのは、まさにミドルシニアの方のネットワークとフットワークのなせる技だと思います。
若者のアイディアとミドルシニアのネットワーク&フットワークで、なんとか社会課題を解決しようと思って取り組んだのが、この「書店プロジェクト」です。若者からたくさんアイディアをもらって、結果的に書店でのイベントや、高齢者の活動拠点とするなどに結びついています。
あとは、静岡県で一番小さい町・松崎町、人口6000人のところに移住したメンバーがいて、休耕地を我々NH(=ニューホライズン)で借りまして、メンバー皆さんで田植えに行って稲刈りをしています。 そこでできたものは全部オーガニックの無農薬のお米です。念願だった「出来たお米を学校の給食にする」ことも、ついに昨年のお米でできました。
今にこやかに笑っている正減司さですが、会社を辞めて、全く農業経験がなかったのですが、「苺農家になろう!」と思って島根県に行った。苺農家さんに弟子入りして本当にゼロからスタートして、今や『低カリウムいちご』というものを開発しています。 非常に面白い活動をされています。
民泊はたくさんありますが、ただの民泊ではありません。ツーリズムを掛け合わせて日本の伝統美を体験するインバウンド向けの民泊業を、これも仲間との掛け合わせでやっています。やるなぁ〜という感じです。
資格を取る方もたくさんいらっしゃいます。山口千秋さんは、元々人事の方なのですが、今や日本語教師として活躍しております。まさかご自分が日本語教師になるなんてと仰っていました。いろいろな人たちとのご縁と刺激によって、段々と人生が新しい方向に動いていくというのが、このライフプラットフォームにいるメンバーの皆さんの“共通した人生の楽しみ方”かと思っております。
大野:ありがとうございます。事例の部分を伺うと、なんだか電通らしいなと思うものも一部あるけれども、全然電通らしくないものも(笑)。全く別分野に行っている方が、とても多いんじゃないかなと感じました。
設立前から関わっていた野田先生、この5年後の姿を見て、なんだか感慨深いものがあるのではと思いますが、いかがですか?
野田:もう、おっしゃる通りですね。理想論として「雇われないで生きていこう」と言っていたんですよ。 でも、本当に5年前は何人ができるだろうと。やるとしても、(よく言う表現ですけど)“なんちゃって企業”で、自宅の一部改装して喫茶店とかそういうのができて、それくらいかな・・と本当に思っていました。
いや、でも、やはり、思った以上に、人間の可能性って、あるんでしょうね。それを見せていただいたと思うんです。
元々脳(そのもの)の最大出力期は、56歳からですからね。 脳科学では「いわゆる結晶化血性と流動化知性のちょうど足したものの最高値は56歳ぐらいで、身体を壊さない限りそのまま84歳ぐらいまでこの最大出力期間が続く」と言われてるので、それを考えたら、こういうことができて当たり前なんですよね。 「できない」と今まで思い込んでいただけなんだなと思いました。 本当に、感無量です。
野澤:ありがとうございます。
大野:野澤さんにお聞きしたいのですが、今拝見した事例の皆さんは、本当に“電通っぽくない”ところにチャレンジする方もたくさんいるわけですが、電通以外の会社からもたくさん(ニューホライズンへ)人が入ってきている一方で、先ほどの前半の話にあったように、「会社は人手不足で、ミドルシニアはなるべくやめて欲しくない」というようなマインドも出てきている、その企業のマインドと、ニューホライズンの個人の事例を繋ぎ込んでいく可能性を、野澤さんは、どんなふうに感じていらっしゃいますか?
【ミドルシニア社会の変革に向けた展望】
野澤 :元々ニューホライズンでこのライフプラットフォームを始める前に、2つのスローガンを掲げていました。「個人個人の生涯で発揮する価値の最大化を図ろう」というのが1つです。「ずっと活躍できるようにしよう」と。 もう1つは「企業と個人の関係、新しい関係を作るオープンプラットフォームを作ろう」でした。
今までであれば、“会社員”か“フリーランス”かのどちらかしかなかったんですよね。ですが、会社にとって会社員じゃなくても、“その会社をよく知っているフリーランス”って非常に有効だろうと思っています。ですので、例えば、今人手不足が起こったら社員をかき集めて労働力にするという手段だけではなく、“会社を辞めてもその会社をよく知っているプロフェッショナルとして自立している人たち“の手を借りるということ、それがどんどん仕組化されていくと、その会社としても、労働力不足とか、なにがなんでも社員で賄わなきゃいけないというプレッシャーのようなものがなくなって、逆に会社を飛び立ちやすくなります。飛び立ちやすくなって、さらには別の会社に対して、違うソリューションを与えることもできますし、今まで会社が囲っていた才能などのリソースを他のいろんな会社で共有していける。それって、個々人にとっても、企業にとっても”Win-Winの関係“になるのではないかと思っているんです。
大野: 個人だけとか、1社や2社の会社だけということではすべては実現できないところもあって、社会全体が変わり始めていって、それに対応する会社や個人が増えてくことが、必要なのでしょうか?
先ほど野田さんからもあったように、やはり「流動化のないところに適材適所もない」というのは、まさにその通りかと思いますが、その辺り「社会が変わり始める(時が」近づいていますか?野田さん?
野田:実際近づいていると思うし、そうならないと本当にこの国は成り立たなくなっちゃうじゃないですか(笑)。これはもう、必然の流れなんだろうな。
繰り返しになりますけれども、プレイヤーさんたち自身の意識が全く変わってないなぁという気がしていて。「 俺そんなことできるの?」というようなところなのだと思います。 あともう1つ。野澤さんたちの会社では、どちらかというと「会社を飛び出して会社の外で起業する」ということが多いと思うんですけれど、これから多分増えてくるのは“社内起業”ですね。
要するに、企業の中で新たなことを始めないと、もう会社自体が変わらなくなっちゃっていて、今まで起業や“イントラプレナー”というと若い人だと無条件に考えていたんですが、実際にアントレプレナーの成功率を見るとシニアの方が高いわけです。人脈があるからなんですが。ですのでこれからは、社内で何か新たなことを企てる、事業だけではなく「組織を作る」なども含めてそのような活動をするシニアが求められるし、増えてくるだろうという気はしていますね。
大野:はい。僕たちライフシフト・ジャパンの事例でも(あるんですよね)。
「ライフシフトジャーニー」というワークショップで、「自分の人生100年時代をどう生きるか」と考えたときに、「こんなことやってみたい」と思いつきました。最初は会社を辞めてやらなければいけないと思っていた人が、その話を社長にプレゼンすると、「それうちの会社でやってくれない?」と。そういうケースは実際に生まれているんですよ。ですから、ちょっと話をしてみたら、意外と「うち(=今までいた会社)にいたままやればいいじゃないか」という話になるのは、野田さんがおっしゃるような、ケーススタディなのかもしれないですね。
今回のこの一連のシリーズは、“KX”(=“会社トランスフォーメーション“)というテーマで「個人が変わり、組織も変えていく」ことをある種の運動に、社会実装していこうと、セミナーをやっているんですが、その中で出てきている「これからの組織をどう変えていくか」の25の要素を作っているものがありまして、今日は細かいご紹介はしないのですが、その25個の中から、野澤さんに事前に3つ、選んでいただいています。
今日の前半のお話を聞いていると結びつくと思いますが、そのご紹介と”KX“のこれからの展開を豊田さんからご紹介いただきたいと思います。お願いします。
【KXメソッド:野澤さんの選んだ3枚のカード】
豊田:今、大野さんが25個、多分ぱっと出されても、全くぱっと読めないと思うんですけれど(笑)。今日のお話にも繋がるようなエッセンシャルなキーワードが並んでいます。この中から大切なものはどれだろうと、毎回皆さんに選んでいただいてますが、野澤さんに選んでいただいたのがこの3つでした。
野澤さん。この3つ、今までの話と全部繋がる感じなんですけれども、改めて語っていただくと、どのようなご自身のフィロソフィーがあるでしょうか?

野澤:向かって一番左の「“いろいろな人”に溢れる場所ですか?」というのは、やはり会社ってどんなに大きな企業であっても、いろいろな人がいるじゃないかと思っても、やはり均質化するんですよね。その中で、いろいろな人、均質化しない人たちと会うことは重要なんですけれども。「“いろいろな人”に溢れる場所ですか?」というのは、例えば、会社の中では階層(ごと)になってしまうので、どうしても部長さんは部長さんらしく、課長さんは課長さんらしいアイデンティティでいるんですけれども、ライフシフトプラットフォームでは、それがガシャッと崩れて、みんな同期になるわけですよ。そうすると、今までの関係性とはまた違う“いろいろな人”というのが現れるんです。 一見均質化して見えるところも、序列階層を、ガシャッと崩したときに見えてくる“いろいろな人”が溢れる場所をどう企業の中で創るかというのが、これからは大事なのではないかと思っています。
真ん中(=「雇用や採用の常識に縛られていませんか?」)というのは、雇用・採用の常識はどんどん崩れつつありますので、これはもう自らアップデートするしかないですし、社会に追われてアップデートするくらいだったら、自ら取り入れていった方がいいんじゃないかと思います。
一番右(=「会社を超えたつながりの機会を創れていますか?」)は、今日お話した、まさに会社を超えた繋がりの機会を創れていますかというのは、本当に今必要なことだと思いますし、これは1社、2社でできることではなくて、あらゆる日本中の会社が垣根を越えて交流して(垣根を)撤去していくことが、ミドルシニアだけではなく、若手であれ、必要になっていくんじゃないかと思って、この3つを選びました。
豊田:ありがとうございます。 この真ん中のカード(=「雇用や採用の常識に縛られていませんか?」)は、先ほど野澤さんがおっしゃっていた「会社のことをとてもよく知っているフリーランス」を活かす、採用とか雇用とか全く関係ないというお話を聞いて、以前私達(=ライフシフト・ジャパン)も、“人ドリブン経営”という連載の中で谷田さんの取材をさせていただき、谷田さんがされている「日本活性化計画」まさに社内でフリーランス的に業務委託的に活かすようなフィールドを作って、そういう人たちを生み出している、そんな部分とも繋がっていて、根っこは同じ(だと思いました)。「越境的な環境づくり」で1人ひとりを自覚させ、この繋がりの部分がエンジンであると、ニューホライズンではそういうものが実現できていると改めて感じました。
野澤:ありがとうございます。
【KX MeganeワークショップとKXO2期生募集のご案内】
豊田:あと2つほど、ご案内させていただきます。
25枚のカードがありますけれども、これは“KX Megane(めがね)”と私達は呼んでるものです。「ありたい会社、ありたい自分を見出していくツール」を開発しています。 この“KX Megane(めがね)”を体験していただくワークショップを、今月末の7月31日に企画しています。 今の25のフレームをもう少し詳しく知りたいとか、自分も体験してみたいと思う方は、ぜひご参加いただければと思います。
今日ご参加の皆さん、お申し込みいただいた皆さんには、明日ご連絡を差し上げますのでアクセスしていただければと思います。“KX Megane(めがね)”も含めて“KX”を推進する“KXオーガナイザー(=KXO”)という仕組みを昨年から導入して、0期、1期の方々が既に活躍されています。KXO2期生を、今、10月からトレーニング開始というカタチで募集しています。関心のある方はぜひ、こちらもご覧ください。
そしてこのセッションの第6回目。10回のうち今日で5回が終わり、折り返しになります。 第6回目は、NECネッツエスアイの吉田さんです。吉田さんは、もう少しテクニカルなお話をされるかと思ったら「“想い”とか“繋がり”こんな部分がど真ん中だと思うんだよね」というお話をいただいています。こんなキーワードで、来月お盆明けにお届けします。こちらもぜひ、お楽しみください。
大野:はい。ありがとうございました。お昼時の1時間、今日また、これからの日本の企業とか、日本の社会がどっちに向かっていけばいいのかというようなことをお話させていただきました。 皆さんの質問を受ける時間がなくなってしまいましたけれども、また来月も引き続きこのシリーズを続けていきますので、ぜひお集まりいただければと思います。 では野澤さん、今日はどうもありがとうございました。
野澤:ありがとうございました