《SessionⅥ》吉田和友さん(NECネッツアイ 執行役員)と考えるKX(カイシャ・トランスフォーメーション)5つの課題

人生100年時代にふさわしい「人と会社の新しい関係」の探索・提言を行っている「カイシャの未来研究会2025」(主査/ライフシフト・ジャパン代表取締役CEO大野誠一)は、2025年3月より10回のシリーズセッション『昭和100年。「日本のカイシャ」はどこへ行く?~KX(カイシャ・トランスフォーメーション)5つの課題』を開催中です。
昭和100年となる2025年までに、昭和モデルの経営から脱却できない「日本のカイシャ」を、人生100年時代の会社=「“人”が主役の会社」へと変えていきたいと6年余にわたって活動してきた研究会の集大成となるセッションです。
毎回、研究会コアメンバーの一人がメインスピーカーとして、持論や想いを展開していきます。SessionⅥ(2025年8月22日開催)のメインスピーカーは、吉田和友さん(NECネッツエスアイ 執行役員)。
自社のオフィス改革を起点に、ワークスタイル、業務プロセス変革を推進、自社実践で培ったノウハウをもとに、500社を超える企業・自治体・公官庁への働き方改革提案に携わり、企業・団体向け講演等も多数行っている吉田さんとともに、「“人”が主役の会社」の根幹である“想い×つながり”の未来を考えました。
<開催概要>

開催日時:2025年8月22日(金)12:00~13:00
メインスピーカー:吉田和友さん(NECネッツアイ 執行役員)
ホスト:大野誠一(ライフシフト・ジャパン:代表取締役CEO)
野田稔(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科:教授)
豊田義博(ライフシフト・ジャパン:取締役CRO)
<このセッションのエッセンス>
1.吉田氏のキャリア経験と成長の振り返り
吉田氏は自身のキャリアを振り返り、入社後に管理スタッフ部門に配属され、半年ごとに部署が変わる「たらい回し」を経験したことを語りました。その後、社長の改革推進部隊に抜擢され、理解できない指示に苦労しながらも1年間徹底的に勉強した経験や、突然の出向、新組織の立ち上げなど、様々な「無謀な役割」を担ってきたことを説明しました。当時は不満を抱えていましたが、今振り返ると、この経験が幅広い業務知識、調整力、人間関係構築能力を培う土壌になったと認識しています。野田教授はこれをT型人材育成の観点から分析し、吉田氏のキャリアは「人間力を先に培い、その後専門性を極める」という理想的なパターンに合致していると指摘しました。
2.共感と組織を超えた繋がりの重要性
吉田氏は自身の経験から、「共感」の重要性について語りました。不満や怒りを抱えながらも、それを原動力として同じ想いを持つ仲間と共に目標に向かって進んできたことを説明しました。特に重要だったのは「想いの共有化」と「与えられた枠組みにとらわれない」姿勢であり、組織の指示だけに従うのではなく、自分たちで目標を設定し、責任を負いながらチャレンジしていく姿勢だったと振り返りました。野田教授は、NECネッツエスアイ(会社)全体がKX的に変革しているわけではなく、会社の一部として吉田氏がKX的な動きを担い、周囲とフリクションを起こしながら進めてきた構図を指摘しました。吉田氏は「常識に合わない」自分の生き方が一貫していたことを認め、諦めずに続けてきたことが重要だったと述べました。
3.KXの5つの視点と吉田氏の経験の関連性
吉田氏はKXの5つの視点と自身の経験を関連付けて分析しました。「“わがまま”セントリック」については、自分の考えと想いで組織を超えたチームを構築し新しいことに挑戦してきたこと、「“旅の仲間”バラエティ」については良い上司も悪い上司も含め多様な人々から学んできたこと、「“想い”ドリブン」と「“つながり”リデザイン」については新しいビジネス(働き方改革事業)の創出に繋がったこと、「“機会”インフィニティ」については、継続的に変化し続ける仕組みの重要性を指摘しました。また、KXの目的である「昭和の会社の枠組みをぶっ壊し、会社の枠組みから個人を解放すること」と、自分自身の仕事に対する考え方(成長し価値を生み出す人間になること)が一致する可能性があると述べました。
4.AIを活用した新しい仕組み作りの可能性
吉田氏は「全社員全能力発揮とAI」をテーマに、AIを活用した新しい仕組み作りについて説明しました。野中郁次郎氏の知的創造サイクルをベースに、暗黙知を集め、形式知に変え、実践知として実行するという三つのステップを「One for All 、All for One」の概念で捉えています。AIの力を活用することで、個人の暗黙知を形式知に変換し、それを組織全体で共有・活用できる仕組みを構築できると主張しました。また、人とAIとマネジメントの分業により、プロセスの変革や標準化が可能になると述べました。野田教授はこの考えに共感し、AIの一番良いところは暗黙知を構造化してくれる点だと指摘し、KXとAIの連携について「KX AI部会」の設立を提案しました。
5.静かな退職と未来への展望
吉田氏は最後に「静かな退職」という概念について触れ、これをドラッカーの「仕事と労働」の定義に照らして考察しました。AIの時代に自分の価値をどう高めるかという不安がある中で、吉田氏の娘から「私の未来には”わくわく”しかない。その”わくわく”は自分の手で作り出してみせる。だから長生きしてね」というメッセージをもらったことを紹介しました。吉田氏は若い世代のたくましさに触れ、彼らと一緒に「わくわく」を進めていくことの重要性を強調しました。野田教授は吉田氏の発表を「画期的」と評価し、個人のキャリア成長と会社の変革が分離していたものが、今回のセッションでリンクすることが見えてきたと述べました。最後に豊田氏から次回のKXセッション(9月9日、リクルートパートナーズの藤井薫氏による「イキイキする職場の未来」)の案内がありました。
<このセッションのキーワード>
#無謀な役割
#怒りこそが成長の源泉
#T型人材
#共感とつながり
#暗黙のAI化
#One for All, All for One
#静かな退職
#わくわくの未来
#吉田和友
#ライフシフトジャパン
<参加者の声(アンケートより)>
→ ネガティブ感情を力に変えるという逆転の発想。行動原理を鮮烈に表現。
→ シンプルで力強い。個人と組織の関係性を一言で射抜く表現。
→ 現代のキャリア観を象徴する二項対立。強い問いかけのフレーズ。
→ 素直な驚きをストレートに表した言葉。価値の高さを端的に伝える。
→ キャリアの本質をリアルに表現。共感を呼びやすい成長の物語。
<アーカイブ映像(フル動画)>
<全文テキスト>
【オープニング&前回アンケートからの振り返り】
【前回までの振り返りと今回のセッション紹介】
大野:皆さんこんにちは。ライフシフト・ジャパンの大野です。毎月お送りしておりますKXのシリーズセミナー「昭和100年。日本のカイシャはどこへ行く?」の 今月の回がこれからスタートいたします。毎月お昼の時間に開催させていただいております。
おそらくこれから続々と皆さん入ってこられるんじゃないかと思います。よろしくお願いいたします。 今日は、ライフシフト・ジャパンの豊田さんとライフシフト・ジャパンのフェローを務めていただいております明治大学専門職大学院の野田先生にお越しいただいております。暑いですが、野田先生、大丈夫ですか。
野田:「暑い」って言わないで。もう聞くだけで暑いから・・・
大野:お盆が明けたのに、いつまで経っても暑いですけれども。
野田:都心は38度を超えるみたいですから、本当に気をつけた方がいいですね・・・
大野:これから毎年、多分これが続くわけですからね。よろしくお願いいたします。 それでは、豊田さんの方から前回の振り返り、確認をお願いできますでしょうか?
豊田:これまで5回セッションを続けてきました。3月の野田さんの会を含めて5回、先月、7月10日にニューホライズンコレクティブの野澤さんをお招きして「ミドルシニアの未来」というテーマで開催しました。たくさんの方にご参加いただいて、アンケートコメントもいただいていますけれども、印象的なフレーズとして「人材の緑地化へ」というキーワード。「人材の砂漠を土壌改良していく」「 制度だけ作っても駄目だよね。文化を変えなければ」というようなキーワードをいただいています。
さらに、こんな言葉が心に残ったというコメントもいただいています。「ミドルシニアの活躍がこれからますます、ど真ん中の課題だ」という話があり、野田さんも共鳴されていました。「これから変わることに、すごくワクワク感がある」「何度でもチャレンジできる社会になる」というような言葉をいただきました。
野田さんはニューホライズンコレクティブの創設当初から関わられていましたけれども、前回の野澤さんのセッションはいかがでしたでしょうか?
野田:昔はある種、夢物語であったり希望であったり、逆に言うと課題認識であったりした抽象的なものが、どんどんどんどん具体化しているんだなと思いました。 また、それを加速させなければいけないということが改めてわかったセッションでしたね。
豊田:本当にそうでしたよね。大野さんはライフシフト・ジャパンのボスなわけですけれども、野田さんとコラボしながらミドルシニアにフォーカスした一般社団法人も立ち上げられていますが、その観点から、大野さんはいかがでしたでしょうか?
大野:ミドルシニアの時期が何歳からなのか、きっと会社によって多少のばらつきがあると思いますが、仮に45歳から65歳くらいと捉えたときに、今までは「働き盛りからだんだん役職定年や定年に向かってピーク時を越えていく時期」というような捉え方をされていたと思います。けれども、「人生100年」となってくると、その先の70歳、80歳、もしかすると90歳ぐらいまでアクティブに活動できる時代に変わってきている。
そういう意味で、「ミドルシニア」って今までのように「働き盛りから引退に向かう時期」という意味合いだけではなくなってきているというのが、今の社会状況だと思うんです。ではどうすればいいんだ?というと、ロールモデルがまだなくてとても戸惑っている、今はそんな状況なんじゃないかなと思います。
だからこのニューホライズンコレクティブのような取り組みも含めて、いろいろな形で1人ひとりがその時期を捉え直していくことができるようになっていかなきゃいけないんだけれど、まだまだロールモデルも実験的なチャレンジも少ないと思うので、どんどんそういったものを積み重ねていきたいと思っているところです。
私自身も新しく「社団法人 ミドルシニアセルフエンパワーメント協会」というこのライフシフト・ジャパンの活動の別働隊のような意味合いのものを今年立ち上げて、今チャレンジしている最中です。
豊田:この野澤さんの会で、KXセッション全10回のうちのちょうど半分で折り返し、 今日は6回目で、NECネッツエスアイの吉田和友さんをお招きしてのセッションになります。 吉田さんお入りください。
吉田:吉田でございます。皆様こんにちは。豊田さん、大野さん、野田先生、よろしくお願いします。
大野:よろしくお願いします。
豊田:吉田さん、お願いします。
大野:もうハートマーク飛んでいますね(笑)。
豊田:吉田さん、応援隊がいらっしゃるのでしょうか?
吉田:なんだか話すのは恥ずかしいので、今日はどうしようかなと思っているところです。
豊田:今日は新境地が展開するぞと めちゃめちゃ楽しみにしております。前回の「ミドルシニア」であったり、島田由香さんの「ウェルビーイング」であったりしましたが、今日の吉田さんのキーワードは「想い✖(かける)繋がり」ってなんだかとてもエモいというか(笑)。
まずはこの前提になるKXの話をさせていただいた上で、吉田さんにバトンタッチをしたいと思います。 KX(=カイシャ・トランスフォーメーション)、カイシャを変えていくということですけれども、昭和モデルから脱却できない日本企業、カタカナの「カイシャ」を壊して、人生100年時代にふさわしい“会社”を創る、そんなムーブメントをつくっていきたいと掲げてきました。

この活動の中で、ありたい姿をまず見つめようと、5つの視点を出しています。 「“わがまま”セントリック」、一人ひとりがそのままの自分を解放できているか。「“ 旅の仲間バラエティ」、多様な属性、多様な価値観を持った仲間に溢れているか。「”つながり“リデザイン」、部署や社内外の枠を超えた繋がりから競争が生まれているか。「”想い“ドリブン」一人ひとりの想いや好奇心が、事業創造や組織変革の起点となっているか。 そして「”機会“インフィニティ」一人ひとりが学び続け、変わり続ける機会に溢れているか。
このKXの5つの視点を、それぞれ5つのブレークスルーポイントで計25のブレークスルーポイントを出して、この中からありたい姿を探っていこうというカードワークを実践しているのですけれども、このカードの中で大切な3枚を、事前に吉田さんにも選んでいただきました。
【吉田氏の選ぶ「想い・つながり」】

豊田:吉田さん、この3枚を選んでいただいた想いや動機・根拠をまずは一言いただけますか?
吉田:実はあまり深く考えずに、自分が素直にどう思っているんだろうとこの3つを選びました。私が今まで会社で過ごしてきて、どんなことを感じて、自分の成長の源泉ってどこにあったのだろうなっていうのを考えて引き出したのがこの3つのカードでしたと。繋がりや経験の中で身についたものが、自分の“糧”だと思っているので、そういう意味では自分を形成するすごく大事な要素なのではないかなというところがその3つのカードに表われています。
豊田:ありがとうございます。このカード、KXの5つの視点の5つのポイントの中でも、特に「想い・つながり」という部分に吉田さんは想いを馳せていただいているのではと思います。
そんな吉田さんの貴重な今までの会社人生を今日は語っていただく時間になります。ここから吉田さんにバトンタッチして、我々は少し外野で、時々野田さんが突っ込む(笑)カタチにさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
吉田:皆様、改めまして、NECネッツエスアイの吉田と申します。よろしくお願いいたします。
今までお話しされた5名の方々、これからお話される方はHRの専門家の方々ですが、 私は人事を経験したことがないので、少し違った観点から考えてみます。
私が重要に思っている3つの要素を振り返ったときに、このKXという5つのコンセプトになぞらえたときに、KXと私の履歴もしくは人生がどういうふうに関連付けられるのか一度検証してみたいと思い立ちました。
ですので、少し恥ずかしいですし、関係者の偉い方が見ていると、あとで怒られそうなので(笑)、少し気にしながらご自分の人生と合わせながらお話していきたいと思っています。
3つの観点で考えてみようと思います。まず1つ目。 仕事が自分にとって楽しい人生の土壌になっていたのかどうか。今振り返って過去に感じたことと見ているものがどう変わっていっているのかと、自分の興味も含めてですが、これをKXの観点から見ていこうというのが1点です。
それから今回、「想い・つながり」というテーマを置いたのは、「会社」というのは、それぞれいろいろな考え方を持つ、バラエティに富んだ、想いの集合体だと思っているからです。自分がどんな影響を受けたのか、それからもしかしたら誰かに対して影響を与えているのか、こういったところも1つ、観点だと思っています。
それからもう1つ。ここがとても重要な要素かと思っていますが。 概念だとか、考え方だとかいうだけではなく、これを仕組み化していくというのが、会社の中の新しいインフラストラクチャーになると思っています。会社の成長、大きなプラットフォームになるのではないかと思っていまして、これを仕組み化できるかというのが、もう1つの重要な要素かと思うので、この観点から今日はお話したいと思っています。
いろいろお話をしますが、あまり専門的な解説ができないので、ぜひとも野田先生に、いろいろ突っ込んで、教えていただければと思いますので、よろしくお願いします。
野田:わかりました。
【吉田氏のキャリア経験と成長の振り返り】

吉田:ありがとうございます。これは私の、いわゆる履歴書みたいなものです。向かって左側のブルーの枠をつけていますのが、私のこれまでの経歴の節目です。入社時は、管理スタッフ部門に配属されました。「半年ごとに変わる」と書いてあります。
多分、かなり生意気でしたし、あまり気遣わずにポンポンとものを喋ってしまうところがあって、だいぶ上司には嫌がられたと思います。そのせいだと思うのですが、半年ごとに部署が、3ヶ年に4回、約4年に渡って変わり続けるという経験をしました。ある意味“たらい回し”をされていたのだと思います。次の”修業時代”と書いているのは何かと申しますと、具体的な経緯はちょっとお話しませんが、私がまだ若い頃、「主任」の時代に社長が変わり、その社長が大改革をするというので、その改革の推進部隊を作ると仰って、なぜか私が、そこの中核の人材としてアサインをされたという時代がございました。
右側に書いてある、まさに“無謀な役割”を背負ったわけです。 今でも当時を思い出しますと、毎朝社長に呼ばれて、いろいろレクチャーもしくは指示を受けるんですが、実は半分以上が理解できないという状態でして、いつも難しい顔をしながら(社超に)「わかるか?」と言われて「すいません。本当に申し訳ございません。わかりません」と(私は)言っていて、よく社長から「お前、中学校は出てるんだよな?」と言われていました。「よしわかった!1年間、時間をやる。徹底的に勉強しろ」と言われまして、そこから一生懸命勉強した1年間というのがございました。多分これが、(今の)私を形成していると思っています。
その後、実はその改革のいろんなハレーションが起きまして、私は全く違う畑に「突然の出向」を言い渡されました。
ここでまた、全く違う仕事をしまして、それから戻ってきて、新しい組織を作るぞと言われて本部を作ったんですが、たった2人しかいない本部で何をやろうか、 誰もいないんだけど、誰も聞いても助けてくれないけれど、どうしてやっていこうか、というところからスタートして、新事業の開発、事業化それから今に至ります。当時はとにかくたらい回しで、あとは無謀な役割でどうすればいいのかわからない。それからあとはなんとかやってくれとか、何か新しいことをというようなリクエストでしたので、“不満の塊”でした。(スライドに)書いてあるような、 決して“優しい温かい環境”で、気遣いをしながらどう育てていこうか、というようなところでは私は育っていませんで(笑)、正直申し上げると、かなり雑な扱いを受けたという印象でした。
【共感と組織を超えた繋がりの重要性】

今になって振り返ってみるとどうだったのかなというと、こちらになります。 今みたいな、複雑な思いをしながら、不満をいつもタラタラ言いながらやっていたのが、およそ15年弱ぐらいだったのですが、「混迷期」だったのかなと思っています。ただ見方を変えると、新しいことを進めていくための土壌作りがここにあったのではないかと思っています。半年間たらい回しにされましたので、そういう意味ではスタッフといわれるあらゆるところ、まさに幅広い業務知識を経験いたしました。その後は、販促部門に行き、お客さんと対面で様々な業務知識をこの期間で得ました。入社したばかりのときにはまだ若くて、様々な不満をいろいろな人にぶつけていたんですけれども、これは生産性が良くないと、頭の悪い(笑)私でも気がつきましたので、「調整力」というか、相手の立場からものを考えるという力もこの頃ついたのではないかと思います。
やはり一番大きかったのが、あらゆる部門の中で関係性が生まれ、そこでたくさんの出会いがありましたし、自分の上司ではない違う人を“上司”といいますか“斜めの上司”に見立てて、その人から非常に多くのものを得たことが、この後の専門性や様々な役割を果たしていくことに繋がったのではないかと思っています。
右側に書いてあります、いわゆる“T型人材”だったり、“H型人材”や“π型人材”と呼ばれるところがありますが、これは少しカタチが違うと思っています。私の印象だと、「専門性を一つ極めた後に、人間力やリーダーシップがある」という考え方がありますが、この人間力、リーダーシップは、その下の“様々な不満タラタラのとき”に培ったものが大きかったんじゃないかなという気がしています。
野田先生から見て、どうかというところを教えていただけますか?
野田:私は吉田さんとも付き合いが長くて、吉田さんはずいぶんひどい目に遭っていてかわいそうだと、今までずっと思っていたんですけれども、今回改めて聞くと、なんだよ〜かなりチャンスをもらっていたんじゃないかと。優しくないどころか、めちゃめちゃ育ててもらったじゃないのと。会社が意図していたかどうかは別なんですけどね。
【“T型人材”のつくり方】
実はこの“T型人材”の話というのは、結構重要な話でして。”T型人材”とは、狭義の専門性と人間力とでこんな人材を作りましょうと、昔、東大の総長がおっしゃったことなんですけれどもなぜか我々は勘違いしていて、この“T型人材” を「T型的なキャリアで作る」と勘違いしているんですよ。要するに、まずは専門職・専門能力をつけて、その後管理職一歩手前ぐらいになったらば、人間力やリーダーシップをつければいいと。それができれば、専門家も2つぐらいあればいいのに、なんてことを言っているんですけれど、これ、実は大間違いであるということが、リクルートワークス研究所で行った事業創造人材の研究でわかっちゃったんですね。
本当に事業創造ができていた、例えばソニーの久夛良木さんとか、辻野晃一郎さんだとか、あの辺りの方たちのキャリアを見ると、入社して2~3年、長い人だと5~6年目ぐらいまで、結構ひどい目にあっているんです。 たらい回し!特に久夛良木さんなんて、あの人、大体人に嫌われるタイプなんで(笑)、どうしても追い出されるわけですよ。いろんな部署でそのたびに、少しずつ丸くなっていくみたいなのがありまして、人間力を涵養しているのですね。 その後に専門性を極め、実際にプロジェクトリーダーなんかをやりながら人間力を極めていくという、まさに“T型人材”。本当の意味での“T型人材”を作ろうと思うと、“T”ではなくて、カタカナの”エ“、もしくは工業高校の”工“みたいな育成の仕方をしなければできないということが研究の結果わかったんです。
図式的に言うと、最初に人間として揉んだ方が良くて、その後に専門家にして、さらにそれ両方を高めていくことが必要だということがわかっているので、実は期せずして吉田さんの経験されたキャリアは、これにぴったり合っているということなんですね。
だからNECネッツエスアイさんが意図的に行っていたとしたならば、ものすごく“優しい”良い会社です。 短期的には“厳しい意地悪な”会社かもしれないけれども、中長期的に見ると、ものすごく人のことを考えてくれています。ただそれが、意図的だったかどうかはちょっとわかんないですけどね(笑)。
これが一種の理論ベースになります。
吉田:ありがとうございます。先生にはたくさん愚痴をこぼしていますので・・・
意図的だとは思えないことが多かったですし・・・けれども、一つの人の育て方の一つの考え方としてはあるのかなと思います。こういう考え方を新しい人材育成の方法として計画的に取り込む必要があるのではないかと思います。
野田先生、そういったことって可能ですか?
野田:私のいた野村総研でもリクルートでも、実はこういう人材育成の仕方をしているんですけれども、これは意図的じゃないんですね。偶然であることが多いんですけれども、これを意図的に行うと、これ実は、KXっぽい話になってくるわけです。それがライフキャリアの話にもなっていくわけなんです。ですので、そこをうまくマッチングさせることは意図的にやっていけることであり、やらなきゃいけないことだと思っています。 これはできることです。
吉田:なるほど。ありがとうございます。 野田先生にもいろいろご相談をしながら、次の“幹部”というのがどういう環境で育成できるのかを、私は今、事業部門なので、事業の視点から考えているのですが、ぜひそこら辺を詰めていきたいと思っています。
ということで、今お話しましたように、当時の私の気持ちとしては、まさに不満と怒りと、あとはやると決めたらどうにかやり切りたいという自分のプライドとの葛藤の中でやってきていたと思っています。当時からなんていいますか、まさに“怒り”に私の源泉があると思っていましたし、この外側の方に不満を言うということは、逆に言うと、やり切らなければいけないと自分に責任を課すことでもあると思っていました。ですので、いろんな人から嫌われたんですが、同時にたくさんの人の中から“良い仲間”ができたとも思っています。
この“良い仲間”のポイントって何だったんだろうと考えたら、「共感」というのがあったのではないかと思っています。当時の私の気持ちは、変わらなければいけない、もしくはこういう目標にまでいかなければいけないという、一つの想いがこもったものとしての怒りや不満だったと自分では思っていますし、そこに共感して「一緒にやっていこう」「確かにそう思うのでやれるところで一緒に協力して一緒に動いていこう」と思った方が、実際に遂行する仲間になったのではないかと考えています。
先の見える目標だけをやったというよりは、まずはこうあるべき、こうもっていくためにどうしようと考えました。自分たちで設定しながら進み、進んでいきながら変えていきましたし、私が“怒り”や“不満”と言っていますが、これは多分一緒に動く仲間たちも、皆さんいろんな意味で背負わなければいけないところだったので、とても苦労が多かったのではないかと思います。
そのときに支えた「共感力」というのは、非常に重要だったのではと思っています。2つの観点が重要だと思っていて、1つは“想い”への共感です。特に一緒にやった仲間と話をするときに、「なぜ自分を」と言われたときに、よく考えると私も根拠を持っていなかったんです。専門性の組み合わせで、この人とこの人とこの人でチームを編成していくと、多分うまくいくだろうと。あまり計画性を持っていなくて、何となくいけそうな気がするなと。ゼロからのスキルを立ち上げなきゃいけないんで、結構大変だったりするんですけれど、何となく、何の根拠もないけれどできそうな気がする。 一緒にやっていけば一緒にやれそうな気がすると思ったというところが1つの大きなポイント。
もう1つは、「与えられた枠組みにとらわれない」こと。簡単に言いますと、組織からの指示だけではない。一緒に動く仲間というのは、部下や同僚というわけではない。想いを共通化する人たちで組み上げていく組織横断のプロジェクトで動かすことが多かったので、こういった意味で言うと、自分たちが目標を設定して自分たちがきちんと責任を負って、それに向かってどうチャレンジしていくのかというところに関しては、エクスキューズ(言い訳)ができず、自分たちに常に戻ってくるというようなことをみんなで共有しながら動いていく。こういったことが、もう1つの大きなポイントになったのではないかと思っています。
【経験をKXの5つの視点に落とし込むと】

吉田:これを、今回のテーマの「KXの5つのコンセプト」に落としこんでみました。
自分の経験から見た場合に、本当に「KXの5つのコンセプト」と合っているのか、変える力を持っているのかという観点で見ていきました。1つ目の「“わがまま”セントリック」は、私の置き換えだと「自分の考えと想いで、組織を超えたチームを構築して立ち向かったこと」だと思っています。「わがまま」というのは、KXの皆さんご存知だと思いますけれど、「わがまま言い放題」の「わがまま」ではなくて、「わがまま=自分が思う方向、想い」をきちんと明確に表現することができる、その想いを達成するためにどう動いていくのか、どう巻き込んでいくのかというのが、私はここのポイントだと思っています。そういうところで言いますと、振り返ってみると自分の考えと想いで、組織を超えたチームで構築して新しいことに立ち向かおうと思ったことも、やはり、起点が自分であったことと、それから自分と一緒に共感できる仲間であったということは、「変える」という意味で非常に大きいと思っています。
それから「“旅の仲間”バラエティ」は、一緒に進んでいく仲間が本当にバラエティに富んでおりました。上司には、良い上司も、悪い上司もいました。決して良い上司だけではなかったです。逆にこの“悪い上司”からも、たくさん経験と良い学びがあったと思っています。それから、先ほどお話しました前半の15年弱は、まさにぶつかりながらノウハウを身体で覚えたのではないかと思っています。それを教えてくれた“悪い上司”もたくさんいたのも事実ですので、良いも悪いも両方が自分の経験値として、まさにバラエティに富んだ「旅の仲間」が、自分の血と肉と身体を作ってくれた人たちだったと思っています。
それから「“想い”ドリブンと“つながり”リデザイン」は、この繋がりや想いをどうつくっていこうかという先にあったのが、今も当社でやっている「働き方改革事業」を新しいビジネスに昇華したことです。データとコミュニケーションの観点から、仕組み化を考えるというのが非常に大きなポイントだと思っていて、実行する基盤という考え方こそが大事ではないかと思っています。
それから、「“機会”インフィニティ」については、継続的に変化をし続ける仕組みを会社の中の文化にしていくこと。ここが、まだまだできているわけではないんですが、そこが変わる源泉になっていなければいけないと思いますので、その環境にいることで、変わることが当たり前か、日常化していくというのが、もう一つの非常に重要な要素と思っているところです。前半戦をお話させていただきました。
大野:ありがとうございます。
吉田:いかがでしたでしょうか。というか皆さんに伝わったでしょうか・・・
野田:改めて吉田さんという存在がNECネッツエスアイという会社の中で、いわゆるKX企業の求めるKX的な、潜在的にあるKX的なものになってきたんだというのがわかったんです。ただ組織論的に言うとすごく面白いと思ったのが、僕が見るところ、NECネッツエスアイ全体が、KX的にドーッと走っているわけではないと思っているんですよ。 伝統ある大きな会社であるだけに、全体としては前例踏襲的に、しっかりと昭和の会社で、これが利益の源泉になっていたわけなので、そこを残しつつ、でも会社の一部が変わらなきゃならないと意思を持っていたと思うんですね。 その意思を吉田さんが担われていた。なので、その吉田さんの今までのキャリアを見てみると、とてもKX的な動きをせざるを得なかったんでしょうね。きっと。
ですので、全体の中で部分のKXがあり、そのKXを周りとフリクションを起こしながら、すごく苦労しながら進めてきた吉田さんという図式が、とても綺麗に整理できていたという印象を受けました。まずは感想なんですけどね。 大野さん、豊田さんに戻します。
【共感と組織を超えた繋がりの重要性】
大野:はい。 吉田さん、前半ありがとうございます。非常にリアリティのあるお話をいただいて、良い上司、悪い上司、いろいろギリギリ言えるところでお話しいただいたと思うんですが、一方で、やっぱり「いい仲間との共感」が一番強調されていたのがとても印象的でした。そういう意味では、やっぱり吉田さんの周りにはいい仲間が見つかったんだと思うんですが、その辺はどうですか。
吉田:本当に恵まれていると思っています。間違いなく、運がいいなというのと、それから「引き出せた」のかもしれないと、自分でも思うところがあります。もしかしたら見過ごしてしまうと“普通の人”だったのかもしれない。でも、そこを引き出していく、 逆に新たに覚醒させるというところも、リーダーのすごく大事な資質なのではないかと思います。
大野:やっぱり「引き寄せの法則」みたいなものがあるっていうことなんだよね。きっとね。
吉田:そうですね。昨日も同じような話をしていたんですけれど、磁力の強い磁場みたいなところで、自分がリーダーとして走っていって先の方向性を見据えたところに引っ張り上げられた人というのもいるんだと思いますし、一緒に中に入ったところでいろいろなものをやっぱり学んでじわじわ変わっていった人もいると思いますので、全てがいわゆる選考牽引型の仲間だけではなかったと思います。もう一つはバランスですかね。先に向かって全力疾走しながらやっているだけではなくて、中でしっかりと固めてくれる、もしくはしっかりと動かして定着させる人もいたので、その両面があったのかという気はします。
大野:はい。ありがとうございます。豊田さんはどうですか。
豊田:ありがとうございました。なんだかとっても興味深いなと。 この「仲間」ですけれども、吉田さんがある時から本流じゃないからかもしれませんけど、既存の組織という枠組みを超えたところで仲間を作って、逆に既存の組織の中ではおそらく仲間にはなり得ない、 吉田さんが実現しようと思ったのは、そんな、枠を超えたところの仲間だったんですね。
多くの人が枠を外して自分で仲間を求めるということはやりたくてもなかなかできないということがあると思うんです。吉田さん、なぜそこができたんでしょうね。
吉田:すごく難しいんですけれど、一つはこのセッションのテーマでもあるカタカナの「カイシャ」という常識が、私にはどうしても当てはまらなかったというのが大きかったと思っています。この枠組みにはいろいろな要素が走っていると思っています。組織の保身もそうですし、チャレンジングなところで思い切ってそのリスクを背負うということに判断ができないことや、お金の使い方や人という資源は既に決まっている、限られているという前提でものを考えるだとか。今までの「カイシャ」の運営ですね。
例えば隣の組織のやっていることについては口を出さないとか、例えばそこが良いとか悪いとかという評価を回しちゃいけないとか、いろいろあるんだと思うんですけれど、その「常識」と言われているところ、まさに「カイシャの常識」が自分には全く合わなかったのが、新しいやり方にチャレンジしようと思った理由なのかなと思います。それから、これは実は、成功しているわけではないんです。 野田先生が先ほどおっしゃられた通り、「それを要望されている時期」と「そうではない時期」というのがありますので、簡単に言うと「要望されてない時期」は異動になりますし、逆に「要望されているとき」には、さっき言ったようにまさに“無謀な挑戦”。なぜ私が選ばれたのかは自分自身にも全くわかりませんでしたけれど、急にそっち側の方に引っ張り出されるところがあるので、そういう意味では「常識が合ってない」ということは、自分の生き方の中では一貫していたのだと思います。 これはどういう状態であろうが、やっぱりそこはそうしなきゃいけない、そうであるべきだという一貫性を持っていたんだろうという気はしますけれど、逆に言うと、全くうまく合わせられなかった不器用というか、あまり頭のいいタイプではなかったんだろうと思っていて。
豊田:「怒りがずっと続いている」という状態では普通の人は諦めちゃいそうなのですけど。全然諦めを知らないって、素晴らしいなと。
吉田:もうそれだけは本当にしつこいです。本当に一貫性を持っていると思います。
大野:はい。ありがとうございます。吉田さん、それでは後半の「これからどこに向かっていくのだろう」というところをお話しいただいてもいいですか。よろしくお願いします。
【個人と会社の想いと価値の一致化・一体化を目指す】
吉田:ありがとうございます。 ということで、今もお話しましたように、観点を変えてみると、KXの目的のところにもこういうことが書いてあるのですが、 まさに今お話をしていた昭和のカイシャという枠組みをぶっ壊す。「ぶっ壊す」とまでは書いていないですかね。ごめんなさい。私が勝手にそう読み取っただけだと思うのですけれど「昭和の枠組みをとにかくぶっ壊して、会社の枠組みから自分を解放すること」と言っていると思います。 これは逆に言うと、いわゆる自分起点で変えていくことは決して悪い影響ではなくて、会社全体にとって良い影響を与えますし、自分起点で物を考える集団というのがこれから強い会社を構成するであろうという考え方だと思います。

そこで考えたのは、向かって左側が自分で、右側が会社の考え方だとするならば、自分はやはり仕事をすること、それから冒頭でも言いましたが、この仕事は楽しいと思うこと、もしくはやってよかったと感じること、ここが人生の中で非常に重要な糧だと思っています。 そうすると、自身がどんどん成長していく、価値を生み出せる人間になっていく。これを今行っているビジネスに活かして、それから仲間たちと一緒に共有・共感できるか、これが「仕事に対する満足感」だとするならば、これから生き残らなければいけない企業が持たなきゃいけないこと、企業の価値をビジネスと社会に活かすことであり、一人ひとりKX、まさに自分起点で新しいことを仕掛けられる「枠組みに捉えられない人間の集団」であることが、これから企業が生き残る上で非常に重要な要素です。逆に言うと、ここがなければ、これからの企業は生き残れないのかもしれない。なので、KXの目的である カタカナの「カイシャ」というのは私にとっても「敵」でしたし、これが怒りの源泉と先ほどからお話をしているところなのですが、これからもっともっと想いと価値は一致するのではないか、もっと一体化できるんじゃないか、そうあるべきだと感じています。
少し、今どんなことをやっているのかというところに触れさせてください。
「AIばっかり言いすぎで」と書いてございますが、これ実は気になっています。私も今、AIを使った業務改革、働き方改革のところで責任者をやっているんですが、あまりにAIと言い過ぎることと、それからAIそのものがそんなに好きかというと、正直あまり好きではありません。ただ、KXでもずっと議論をしてきた道具箱、いわゆる仕組化をしていくという観点でいうと、このAIというのは、これまでの枠組みを壊して新しい仕組みに転換するときに非常に重要な役割を果たすのではないかと考えていて、このの資料を1枚作りました。
【「全社員全能力発揮」と「AI」を「働き方改革のテーマ」と掲げて】
ちなみに、今年度の当社の働き方改革のテーマは「全社員全能力発揮とAI」です。 この「全社員全能力発揮」というテーマですが、昨年度の後半に「来年のテーマをどうしようか」と頭をひねっていたときに浮かんできました。AIの時代に、全部漢字で、おまけに泥臭い言葉がたくさん繋がっているのがとても気に入りました。よし、これでいこうということで、セッションとかセミナーとか外部で「我々はこれでやります」とお話をさせていただきましたら、「いや。いい言葉を思いついたな」と思って検索してみたら、これは野田先生が考えられた言葉でして、どこかで聞いたのがとても印象的だったようです。頭の隅っこに残っていて、自分が作ったと思ったら野田先生のお言葉だった。
できれば野田先生の意図を少しお話いただければと思うのですけれども。
野田:今の日本企業、特にカタカナの「カイシャ」の企業って、本当にその人の持っている能力の一部しか使っていなくて、だから競争力が弱いのだと思っています。人間って「作業」をするために生まれてきたわけではなくて、もちろん「作業」もするのだけれども「創造」するため、「クリエイト」するために生まれてきていると思うのだけれども、そのクリエーションのところが会社の中でほとんど発揮されていない人が多いと、僕は思っているのですね。
そこが本当、もったいない。それを発揮することは、喜びにも繋がるので。
なので、そこが最初。この「全社員全能力発揮」と言い始めたときの1つ目で、次がやはり「適所適材」です。 それぞれの人の能力が最も発揮できるような仕事にちゃんとアサインできているかというとそうじゃないだろうと思っていて、ここのところもちゃんとやらなきゃいけないと思っています。もちろんAIなんかもこれから活用されていくと思いますし、また全社員が能力を発揮する上においてもAIを武器として使うようになると思っていますので、この「全社員の全能力発揮」と「AI」は、めちゃめちゃ相性の良い2つの言葉だと思っています。これは吉田さんのオリジナルですね!
吉田: 今、野田先生がおっしゃってくださったとおり、新しいことに変わっていく時には、共通のインフラが重要だと私は思っています。
いわゆる働き方改革だとか、それから能力を発揮することというのは、概念ではなく具体的に大きく動かす仕組みを企業のプラットフォームとして整備していくということが非常に重要な要素ではないかと思っています。「全社員全能力発揮とAI」と書いたのは、今、野田先生に開設いただきましたとおり、ベースは先般亡くなられた野中育次郎先生の「知的創造サイクル」のモデルです。
【「暗黙知」を「形式知」にAIとともに仕組み化していく】
皆様ご存知のとおり、「暗黙知」をどういうふうに「形式知」に変えていくのかというところです。ここについても概念的にはわかるのだけど、どう仕組み化していいのかわからないといったときに、AIが最も有効に働くと思っています。
皆様ご存知のとおり、「暗黙知」をどういうふうに「形式知」に変えていくのかというところについて、概念的にはわかるんだけれど、どう仕組み化していいのかわからないというときにはAIが最も有効に働くと思っています。「 暗黙知を集める」「暗黙知を形式知に変える」「実践知に変える-実行していく」というこの3つのステップをその下に、“One for All ,All for One”と書いています。 私もラグビーのテレビドラマ世代です。「暗黙知」とはどこにあるのか。それから先ほど野田先生も仰いましたが、いろんなアイディアや要素、新しいものを作り出すところで、これが実際に会社で言われるシステムで動いているかというと、ほとんど動いていないと思います。
では、どこでやっているのかというと、会議や、二人の意見交換の中や、お客様との議論の中でといったところにあるのではないかと思っています。ですから、実際にはシステムで伝票を切るものには入ってなくて、ほとんどが「声」に反映されていたり、行動もしくは映像に反映されていたりというものではないかと。簡単に言うと「形式知」に置き換えることができるのが、AIの力のすごいところだと思っています。それから、我々は最初のステップを「集積」と「見える化」と言っているんですが、この「集積」と「見える化」を行ったら何が行われるかというと、一人ひとりの力が結集されると、誰でも使える状態が生まれると思っています。この一人ひとりのノウハウをみんなで使っていこうというコンセプトが、“One for All”というコンセプトです。 また、“One for All”のコンセプトを”AIの壁打ち“のように使うということもできるんですが、プロセスを大きく変えていくという構造にも使えると思っています。
我々は今、「人とAIとマネジメントの分業」をコンセプトに、様々な取り組みを行っていますが、人がやらなくても、AI が確実に、それも24時間動いてくれる。人がなかなかやりきれないところ、もしくは正確ではないところを置き換えることができる。 これは、大きなプロセスを変えるポイントですし、みんながそれぞれ持っている経験値だとか知識の中で判断している業務の質の標準化ができる、それをプロセスに置き換えられるのも、AIが担ってくれる働き方だと思っています。
それから、もう一つのコンセプトが“All for One”です。“All for One”の隣に”One”とありますが、これは「みんなが1人のため」ではなく、”One”とは、ベクトル、いわゆる方向性の一致だと考えています。この「実践知に変えていく」という意味でいうと、できるだけ多くの人たちが、誰かがやれてるんではなくて、みんなが変わっていく力、それは決して考え方だけではなくて、意識にも、行動にもそれから文化にも繋がっていくところが非常に重要だと思っています。そして、これが先ほど野田先生が仰った「適所適材」「新しい繋がり」「価値観の一致化」、それから目標に従って行動を一致して、その行動がどう変わっていくのかを見ていくこともできるのではないかと考えています。
“KXの道具箱”で豊田さん、大野さん、野田先生と議論をしながらも、今一つ具体的な解が出せなかったところをこの“AI”がかなり変えてくれるのかなと思っているんですが、そこら辺、いかがでしょうか?
野田:もうこれ、めちゃめちゃわくわくします。 まさに“AI”の一番いいところは、周知を構造化してくれるところなのだと思っているのですよね。だからこそ逆に言うと、周知が馬鹿だったら、やっぱり馬鹿なものが出てきちゃうのだけど。
ここにいらっしゃる皆さんとか、KXerの方々が考えて実践したものをたくさん貯めていくことによって、道具への集約をすることでそのレベルが上がるだろうと思っているので、吉田さん、ぜひ道具箱をつくる上においてAI活用という点でご指南をいただけると嬉しいです。
吉田:はい。 ありがとうございます。この仕組みのところをある程度、みんなで共通化できると、本当に次のステップに動けると思います。それは「時間」というだけではないというのが大きなポイントだと思っています。確かに、いわゆる「自動化ができる」というのはとても重要ですし、自動化と自律化が逆に言うと「人間の仕事を取る」というような言われ方をしていますが、もう少し前向きに捉えると「時間を生み出す」というだけではなくて、新しい繋がりの中で新しい仕事にチャレンジができる機会がたくさんできるというのが、非常に大きなポイントだと思っていますので、是非、今日ご参加の皆さんとも、いろいろな議論ができればと思っています。
豊田さん、大野さん、またもう1度テーマにして、みんなで考えてみるというのはいいかもしれないと思います。
大野 :ありがとうございます。ぜひぜひ機会を考えてみたいと思います。
吉田:よろしくお願いします。「KX AI部会」を作ります(笑)。
吉田:そうですね。前から言っている「物質活動」にはぴったりの取り組みだと思っているんです。よろしくお願いします。ということで、そろそろ時間が迫ってきました。
【静かな退職と未来への展望】

吉田:いろいろお話をしてきましたが、個人的にも最近気になっているのが、今日ご参加の方はよくご存知だと思うんですけれど「静かな退職」というワードです。なんとなくセンチメンタルな響きですし、もしかしたら今の時代背景や残りの人生を楽しく生きるというところにも繋がっていると思うんですが、私はあまりポジティブなマインドとは捉えられないんです。
「仕事」と「労働」って、皆さんご承知の方も多いと思いますけど、ドラッカーが言っている定義です。「仕事」というのは、社会や誰かのニーズを満たすために存在するもの、それから「労働」は個人の労力と時間を費やす活動。
この「静かな退職」で置き換えると、この後(の時代)は、労力と時間を費やす活動に変えなければいけないと思い込んでいる人が多いのではないかと思っています。先ほどAIのお話をしました。自分が今までやってきたことが、AIに自動的に置き換えられる。自分がやってきたことが、今まで以上に価値として評価されない時代が来るんじゃないかという漠然とした思いがそこにはあるのかなと思っていますし、自分でやってきたことを褒めながらも、やはりキャリアは終わるのだ。その後はどうするんだというと「・・・」というのが「静かな退職」の後ろ側にはあるのではないかと。
そこで思うのは、「キャリアが終わり」ではなくて「自分の経験や知見をどこに還元するのか」を考えることが必要なんじゃないかなと。私自身もそんな年齢に入ってきていますので、そう考える役割が必要なのかなと。将来的には、このAIの世界の中でどのように自分の価値を高めればよいのかというのは非常に難しいです。先日も野田先生と、AIが今やっている仕事のほとんどをやれる、実際に技術的に見てもかなり近いことができる可能性を秘めているので、だとするならば、人間は一体何をするんだろうと(そんな話をしておりました。)
私にも娘がおります。この後の子どもの時代を考えると、どんな時代になるんだろう。 いやそれがとても不安だねと、そんな話を娘とLINEでやり取りをしたら、娘から返ってきたのは、右下にある返事です。「 私の未来には”わくわく“しかない! その”わくわく“は自分の手で作り出してみせる。だから長生きしてね」と戻ってきました。
何が言いたいかというと、自分たちが懸念・危惧しているよりも、もしかしたらもっともっと、若い人たちはたくましいんじゃないかなと思っています。やっぱり新しい使い方や考え方も、若い人たちが作っていって、それを一緒に、後ろで支えてあげるみたいに思っていたんですけど、どうバックアップしようかというよりも、この“わくわく”を一緒に考えて一緒に進めていくっていうことがとても重要なんじゃないかと考えました。私の方からは以上になります。 皆さんよろしくお願いします。
大野 :ありがとうございます。 ハートマークがたくさん飛び交っておりますが(笑)吉田さんの娘さんの非常に力のある言葉を、いつもお話しいただけます。吉田さん、本当にありがとうございました。
KXというキーワードで会社はどう変わっていくのか、変えていくのかっていうのをずっとシリーズでやっている中で、吉田さんには、今日はKXと自分の人生の経験とを付き合わせるという新しいアプローチをしていただきました。本当にありがとうございました。
吉田:とんでもないです。
大野 :野田さん。もしかすると、KXというこの長年やってきた議論を、こうして一人ひとりに落とし込んでいくと、何か新しいワークショッププログラムになるような感じがしましたけれど。
野田:その通りです。すごく画期的な話なのです。今日は本当に驚いていまして。
僕がずっとやってきた「キャリア論」の「キャリア成長論」だとか、まさにライフシフト・ジャパンでやっている「ライフシフター」という概念だとか、会社をどうするかっていうことと正直、少し分離していると思うのですよ。敵対もしていたりして。
「私はこんなキャリアを積みたいのに、会社がさ・・・」というような位置づけで捉えることが結構あったと思うんですが、それがちゃんとリンクするということが見えてきた。 途中でもありましたけど、自分の想いと会社の想いって、実は一致できるのだよね、もちろんこれから一致する方向なのだよねと言われた瞬間「そうか!そんなふうにリンクさせることこそが、ライフシフト的であり、かつKXなのだな」と頭の中で繋がったのですよ。 これは、是非そういう形で昇華させたいと思いました。本当に画期的な会になったと思います。 ありがとうございました。僕、ありがたい(笑)。
吉田:本当にお粗末様でした。どうもありがとうございました。皆さんありがとうございました。
大野 :吉田さん、どうもありがとうございました。
吉田:ありがとうございました。
大野:最後に、豊田さんから、次回のご案内をさせていただいて終わりたいと思います。お願いします。
豊田:本当にありがとうございました。吉田さんのフレームの入口になるようなKXの体験ワークショップを先月実施したところ、割と好評だったものですから、またこの「KXめがね」という先ほどお話のありました「道具箱」の道具の一つを使ったワークショップを9月2日に予定しています。ご興味のある方はぜひご参加ください。
合わせて、KXマンスリーセッション、いよいよ7回目とことで、次回は9月9日、リクルート現「indeedリクルートパートナーズ」という社名になっていますが、藤井薫さんに「イキイキした職場」という、今回またかなりエモいタイトルで、この「イキイキ感」をどんなふうに描いていくのかという話で展開していただきます。 以上になります。
大野:それではお昼の1時間を頂戴いたしました。ちょうど時間となりました。今日は吉田さん、どうもありがとうございました。
吉田:どうもありがとうございました。
大野:ぜひ皆さん、終了後のアンケートにご協力ください。吉田さんに対するメッセージなどいただければ、できるだけお答えしていきたいと思います。
吉田:ありがとうございます。
大野:拍手が飛びかっておりますけれども、はい。ではこれで終了したいと思います。お疲れ様でした。ありがとうございました。
豊田:どうもありがとうございました。
吉田:ありがとうございました。