Crew’s Life : 荒木さん、飯島さん。キュービックは100点満点で何点?

 

素の自分が出せる環境で、自らの経験を活かし、新規事業に挑む

PROFILE

荒木 珠里亜(あらき じゅりあ)さん
1024(社長室)

長期インターンを日本に広める新規事業

荒木さんは新卒でキュービックに入社し、現在4年目、社長室に所属しながら、新規事業の企画に携わる(同社の創立記念日は10月24日であり、それにちなんで、社長室を1024と呼ぶ)。事業内容とミッションは明確だ。長期インターンシップを日本に広め、就活をアップデートすること。これには自身の経歴も深く関係している。
荒木さんは国際基督教大学3年生の4月からキュービックでインターンを始めた。就活を前に、企業の実状や働くことについて深く知りたいと思ったからだ。求人サイトWantedlyを通じて、受け入れてくれそうな企業を探し、計3社ほど連絡してみた。
そのうちの1社がキュービックだった。問い合わせに対して、他の2社が志望理由や働ける曜日や時間を尋ねてきたのに対し、キュービックの返信は違った。「一度フランクにお話しましょう」。担当者に会って話を聞いてみても、他の2社の事務的な感じとは違い、雰囲気がよく働きやすそうで、すぐにインターンとしての入社を決めた。
2015年4月の入社後、最初に配属されたのはソーシャルメディアマーケティングユニットというチーム。任されたのは、女性向け、母親向け、グルメ関係など、さまざまな自社メディアのコンテンツ制作と、SNSの運用だった。

 

インターンでありながら採用責任者になる

初めての会社。馴染めるか不安だったが、FAMのメンバーには同世代のインターン生がたくさんいた。「私の最初の居場所がFAMでした。メンバーと休日に花火大会に出かけたり、民泊したりしました。気のおけない本当の家族のような存在でした」
10月からは自ら手を挙げ、社内で立ち上がった新規事業プロジェクトにも参画。各種インタビューや競合調査を行い、事業計画書を社員と一緒に作成した。
2016年4月、人事部が創設されたタイミングで、在籍していたユニットが解散となったため、手を挙げて人事に異動する。これが人事との出会いだった。7月には、インターンからの新卒採用を行うことになり、こちらも手を挙げ、インターンの身でありながら、インターン採用と新卒採用の立ち上げを担うことになる(後述するが、この時点でキュービックへの正式入社が決まっていた)。
毎日、たくさんの学生と向き合った。「一人ひとりがどんな価値観を持っていて、どんな学生生活を送ったら本人のためになるのかを考え抜きました。また、その学生が選考に進んだときには、どのチームにフィットしそうか、どんな活躍が期待できるかを考え、配属先を提案しました。自分視点から、会社視点・事業視点に、視点が切り替わるキッカケになりました。」

 

キュービックを就職先選びの基準に

キュービックの社員になるつもりは当初まったくなかった。3年の時には、数社のサマーインターン選考に参加していた。だが、「実は応募の段階から違和感を覚えていました。その会社のことを深く知らないのに、それぞれに合った志望動機をひねりださなければいけない。こんな形の就活は自分には合わないと思いました」。
当時、荒木さんはキュービックとは別に、ベンチャー企業の元人事が主宰する就活コミュニティ(企業人事と学生がフランクに直接交流できるコミュニティ)でアルバイトをしていた。そこで、会社選びに関していろいろなアドバイスをもらった。「大企業に入ると、私は同期何百人の中の一人となる。どこに配属され、どんな仕事を任せられるかも直前にならないとわかりません。そうではなくて、私という人間をきちんと見てくれ、入社後の仕事のイメージもつきやすい、そんな規模の会社で働きたいと思いました」。
恰好の会社が身近にあった。キュービックである。「そこで、よく知るキュービックを会社選びの基準にしたのです。キュービックと比べ、この会社はここが優れている、ここはイマイチだなと」

 

プロポーズのようなお誘いを受ける

いくつか検討したものの、決め手にかけた。そんな時、キュービックで人事に異動になる。そのタイミングで他社から転職してきた上司がいた。人事のベテランだ。相談してみると、思いもかけない答えが返って来た。「キュービックも選択肢のひとつじゃないかな」。
そうかもしれないと思いつつ、踏み切れない自分がいた。
そのうち、内定が出始める6月となった。一週目の金曜日の夜、荒木さんはその上司らに誘われ、食事に行く。仕事や就活の話の後、唐突に上司が語り始めた。「君にはキュービックが一番合うはずだ。入社してくれたら後悔させない。絶対に一流のビジネスパーソンにしてみせる。これからも一緒に働いてくれないか」。まるで、プロポーズのようだった。
実は最終面接の一歩手前という企業が一社あり、その場では即答できなかった。翌週早々、その企業の社長に会い、詳細を告げると、こう言われた。「何の制約もなかったとして、あなたが一番大切にしたいことは何か、で決めたらいい」。

 

他社のインターンシップに潜りこみ、情報収集

結果、荒木さんはいまキュービックで働いている。「キュービックの人たちは、私のいいところも駄目なところもすべてわかってくれています。そんな環境で働かせてもらい、いろいろな仕事を任され、成果も出してきました。この環境は私に向いているらしい。だったら、このままここで働き続けてみようと思ったのです」
ただ、思わぬ試練が待ち構えていた。その上司がキュービックを退職してしまい、インターンと新卒の採用責任者として動かなければならなくなったのだ。採用の枠組み構築から学生集め、運営、そして選考まで、やるべきことは山ほどある。自分の下には後輩の学生インターン数人がいるだけだ。「他部署を含めた他の社員を巻き込むしかありませんでした。人手はそれで足りても、ノウハウが圧倒的に足りない。そこで、他社の人事にヒアリングに行ったり、スタッフとして他社のインターンに参加させてもらったりして、情報収集していきました」
人間、追い込まれると、思わぬ力を発揮する。この時の荒木さんがまさにそうだったのだろう。以後、4年間、荒木さんは採用業務に携わり、約400人のインターンを採用。そこから24人を入社へと導いた。

 

働くことは社会貢献である

この7月からは1024(社長室)に異動、自らが経験した長期インターンシップを日本に広めようとしている。具体的には、企業へのインターン人材の紹介と採用支援、インターン採用の導入支援コンサルティング、インターンシップをテーマにした学生向けウェブ・コミュニティの創設などを構想している。「数回の面接、あるいはたった数日のインターンを経て入社する結果、採用のミスマッチが起こってしまう。それは学生、企業双方にとって損失です。当事者だった私の経験も存分に生かし、そこを改善したい」
キュービックで働く日々に点数をつけてもらった。「100点と言いたいところですが、それだと伸びしろがないので80点です。キュービックは組織がフラットで、それぞれの社員に権限がうまく委譲されており、違和感や不都合が生じたら、すぐに相談し、状況を変えていける。だからもっと成長できる。そこが伸びしろだと思っています」
「働くこと」を別の言葉で言い換えてもらった。「一言でいえば、社会貢献でしょうか。私がキュービックで働き、成果を上げられるのも、社内外含め、周囲の支えがあってこそ。仕事を通じて学んだことを、さまざまな形で社会に還元する。単なるお金を得る手段ではなく、そのサイクル全体が働くことなのではないかと」
今後のキャリアについて尋ねると、計画的偶発性理論という言葉が出てきた。アメリカの心理学者、J.D.クランボルツが唱えた「キャリアの8割は偶然の出来事によって形成される」という理論だ。「ますます先の見通せない時代、よき偶発性を引き寄せるために、いま目の前にある仕事に全力で集中したい。そこから次のキャリアも見えてくると思います」
ここまでも偶発性に富んでいる荒木さんのキャリア、今後も、よき偶発性を引き寄せそうだ。

 

 

 

PMIのプロマネは来春入社の内定者

PROFILE

飯島 和也(いいじま かずや)さん
インテグレーテッドオペレーションズ

 

大学入学直後、劣等感に打ちのめされる

キュービックには2019年12月、マッチングアプリの比較サイトなどを運営するParasol(パラソル)というIT企業がグループに加わった。企業の買収時には、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる統合作業が重要だ。経営システムや業務内容、さらには社員の意識がひとつにまとまらないと、せっかくの“結婚”が破局を迎えてしまうからだ。
飯島和也さんは、社長直下におかれた、そのPMIを推進する組織に属し、プロジェクトマネジャーをつとめる。こう話す。「Parasolとキュービックはオフィスは別々です。ただでさえ、面と向かった対話が重要なのに、コロナで、なかなか会えなくなりました。ちょっと困っています」。
そんな仕事を任されるくらいだから、さぞかし社歴の長いベテラン社員かと思えば、違うのだ。飯島さんは現在、大学4年生。来春の入社が決まっている内定者なのである。といっても、2年時の6月からインターンとして働いているから、在籍期間は約2年半に及ぶ(取材は2020年10月)。
時計の針を3年ほど前に戻そう。浪人生活を経て、飯島さんは慶應義塾大学環境情報学部に入学する。苦労して入ったのだから大学生活をエンジョイしようと思っていたが、周囲を見て、愕然とする。同じ大学生でありながら起業したり、企業でインターンシップを始めている学生が少なからずいた。飯島さんが振り返る。「彼らはキラキラしていました。負けたという劣等感でいっぱいになりました。自分もインターンを早いうちに経験しようと心に決めました」。

 

「いま君はキュービックでインターンすべきかどうか」

実際に動いたのは1年の冬休みだった。先の荒木さんと同じWantedlyを通じて、長期インターンを募集している5社に応募し、面接に行った。図らずもIT企業ばかりだった。
最初に訪問した企業では、志望した理由、高校時代に頑張ったこと、自分の強みなど、想定通りのことを聞かれたが、最後に「実は1年生のインターンシップは受け付けていない」という脱力してしまう理由で落とされた。
次がキュービックだった。面接というより面談で、「いま君はキュービックでインターンすべきかどうか」という話が中心だった。飯島さんはラーメン店のオープニングスタッフとしてアルバイトしていて、結構なやりがいも感じていた。しかも驚いたことがあった。その面談相手が社員ではなく、学生インターンだったのである。
次に向かった3社目、そして4社目、5社目も、面接内容は1社目と大同小異で、相手はもちろん社員。キュービックだけが異質だった。飯島さんは「ラーメン店の仕事をやり切ってからお世話になります」と、キュービックの担当者に連絡した。

 

入社3カ月目で社内表彰の栄誉に

結局、キュービックでのインターンを始めたのは2年生の6月だった。最初の面接から4カ月が経過していた。配属されたのは、社員3名、インターン5名ほどで構成され、転職に関するウェブ広告媒体の運用業務を行う部署だった。「自分の書いた文章がウェブに載っている。最初はそれだけでうれしかったです。さらに媒体を運用し、実際に売り上げが立つと楽しくなりました」
入社して3カ月目の9月、運用していた媒体の売上げが大きく伸び、社内表彰の対象となった。「とても光栄で、キュービックにもっとコミットしていこうと決めました。仕事が面白くなると、向上心が芽生えるものです。人の心を打つ広告文を書くために、コピーライターが書いた本や心理学の本を読み、そこに書かれていることを実践してみました。媒体運用のコツについて社員の人を質問責めにしたこともあります」
その部署には結局1年半在籍し、ウェブ・マーケターとしての基礎を身につけた。

 

 

「成長させてくれる会社」から「努力したくなる会社」へ

学年が変わり3年に進級、就活の時期となった。キュービックへの就職は、念頭になかった。ただ、インターンでの経験から、自分は安定した大企業より、同じようなベンチャーに行くべきだと思うようになっていた。
サマーインターンを6社ほど受けた。「なかには、かなり期待していたベンチャーもあったのですが、面接を受けてみると、どこか違うと思う部分がありました。。ここで働いてみたいという気持ちになれませんでした」
そうこうするうち、考えが変わってきた。「僕を成長させてくれると思えるベンチャーに行きたかったのですが、それはある意味甘えだと気づきました。成長するには自らの努力が不可欠です。つまり、僕が『努力したい』と自然に思うような企業に行くべきではないかと。そんな企業があるのか。あったのです。キュービックがまさにそうでした」
新卒として入社したい旨をキュービックに伝えた。相手は、社長の世一氏だ。飯島さんは社内表彰を何度か受けていた。世一氏との会食という副賞があり、その会食のおかげもあってで、世一氏とは社内で会えば自然に会話し、相談事にもよく乗ってもらうようになっていた。「夕食を一緒に食べに行き、その席で入社希望の件を伝えました。その後改めて案内された選考フローを経て、内定をもらいました」

 

ワークはライフの一部。9割がワークでもいい

飯島さんに、キュービックで働く日々に対し点数をつけてもらうと、80点という答えが返って来た。「僕は割と飽きっぽい性格で、同じことをやり続けるのが苦痛です。そんな僕が2年半にわたってインターンを続けてこられたのは、新たなチャレンジの機会を次々に与えてくれたからです。そういう意味では100点です」
では20点マイナスの意味は何か。「FAMに代表されるように、キュービックはもともと、インターンを含めた働く仲間同士のつながりが密接で、よく皆で飲みに行ったり休日も一緒に遊んだりということをするのですが、それがコロナの影響でまったくできなくなってしまった。それがマイナス10点です。FAMには本当に助けられていましたから。僕が最初に入ったFAMの先輩インターンとは今でも仲が良く、コロナ前は2カ月に一回は飲みに行っていました。あとの10点は、インターンから社員に身分が変わることへの期待があるからです。その10点は僕自身がつくりにいきたいと思っています」
社員としてどんな働き方を考えているのだろうか。「ワークライフバランスという言葉が流行っていますが、僕の中ではワークはライフの一部です。一部どころか、9割以上をワークで埋めてもいい。それだけやり甲斐のあるワークに取り組みたいんです。将来はプロジェクトマネジャーやプロダクトマネジャーとして影響範囲を広げていきたいですね。起業のようなチャレンジもできたらと考えています」
ところで、大学入学直後、同級生に感じていた思いはどうなったか。
「劣等感はなくなりました。でも起業している同級生は相変わらずすごいと思って尊敬しています」
いやいや、学生インターンという身分でPMIの責任者をつとめる飯島さんもすごい。起業は社内でもできる。飯島さんの今後に期待したい。