Crew’s Life : 野口さん、元谷さん。ママスクエアは100点満点で何点?

 

「ママが楽しそうだから、ここが好き」と子供に言ってもらえる職場

PROFILE

野口奈緒さん
拠点運営本部マネージャー

初職は求人広告の営業

野口奈緒さんは福岡県にあるママスクエア福岡天神イムズ店に勤務しながら、福岡店含め、兵庫県の神戸新長田店、埼玉県のステラタウン大宮店、計3店舗の運営業務にマネージャーとして従事している。就業は週5日、1日6時間だ。
その3店舗は一つの保険会社からコールセンター業務を委託している点が共通している。そこで働くスタッフたちは既存顧客の問い合わせに応じ、あるいは新規契約獲得のための電話をかけることを仕事としている。福岡店のスタッフは約60名。大宮店も同じ規模で、神戸店は約20名。野口さんはクライアントである保険会社と密に連絡を取りながら、「こういうお客様にはこうしたトーク展開で」といったように、総勢140名になる各店舗のスタッフの相談にも乗る多忙な日々を送る。
野口さんの最初のキャリアは求人広告の営業だった。大学3年生の時、母親が病気になり、看病のために休学したために、通常の就職活動には乗り遅れてしまった。当時、アルバイトで働いていた福岡市内の飲食店に時折来ていた人から、ある会社で3年限定の契約社員という働き方があると教えられ、興味を持ったと本人が話す。「サイトを調べてみると、『仕事が楽しいと人生も楽しい』というキャッチフレーズが目に留まりました。こういう考えを前面に押し出している会社なら、働いてみたいと思ったのです」
応募してみると、みごと合格。勤務地は福岡で、仕事は無料求人誌の広告営業だった。「電話をかけてアポイントを取り、広告を出しませんかと営業する仕事です。はっきり言ってしんどかったです(笑)。毎週、売上げと訪問件数の目標がそれぞれあり、達成するのが大変でした。ただ、面倒見のいい職場で、先輩たちが親身になって教えてくれるので、乗り切ることができました」

 

子供とずっと家にいて、世界を狭く感じる

そうこうしているうち、結婚、そして出産と相成り、入社2年後に退職の道を選ぶ。2年間ほど、育児と家事に専念していたが、子供と二人だけの毎日が続くのがつらくなり、働くことを決意する。
といっても、雇用ではなく、働き方に融通が利く業務委託だ。地元のテレビ局系列の広告代理店から営業の電話アポイントの仕事をもらった。アポ電は前職で鍛えられたので、苦にはならない。この仕事を2年ほど続けるが、二人目が生まれたため、辞めてしまう。
ところが前回と同じく、平日、夫が勤めに出ると、子供と家に閉じこもりがちになる。「世界が狭く感じました」と当時を振り返る。ところが、可愛い子供を保育園に預けてまでして、働く気にはならない。
在宅でできる仕事を探したところ、あった。主婦に特化した求人サイトの運営会社が、掲載する求人広告を執筆する業務委託ライターを募集していた。「これだと思って応募し、合格し、3年ほど続けました。面白い仕事ではあったのですが、担当者とはメールのやりとりで終わってしまう。やっぱり孤独感を抱くようになりました」

 

1時間に30、40本の電話をかける

そんなある日、仕事柄、いつもチェックしていた地域の求人情報誌掲載の求人広告が目に飛び込んできた。ママスクエアという会社の店舗が地元福岡にでき、そこでは週3日、1日3時間の短時間勤務が可能で、しかも仕事中は常駐キッズスタッフが子どもをみてくれるスペースがすぐ横にあるという。仕事はコールセンター業務だ。「人とリアルにつながれて、長時間働く必要がない。これなら在宅ライターの仕事も並行して続けられそうだ、と思い、応募したのです」
かくして野口さんはママスクエア福岡天神店イムズ店の最初のスタッフ、15名のうちの1名になる。2016年11月のことだ。後で聞くと、15名の枠に対し、100名を超える応募があったという。
電話仕事は経験豊富なので、スムーズにこなせた。勤務日は朝10時に長男を連れて出勤し、13時には帰る。自宅に戻った後、14時に、幼稚園に通う長女のお迎えに行く。
「週3日、1日3時間という最も時間の短い働き方を選んだので、限られた時間内に成果をあげなくてはと、とにかく目の前の仕事に集中し、生産性を誰よりも高くしようと決意しました。わき目も振らず電話をかけ続けました。多い時は1時間あたり30、40本はかけたでしょうか」
その姿勢が成果につながる。半年後にはリーダーになった。電話をかけたり受けたりするとともに、後輩オペレーターの面倒も見た。
その1年後には、店舗の運営業務を行うSV(スーパーバイザー)に。自分は電話に触れず、オペレーター向けの研修などを担当、クライアントが要求する成果達成に向けて動く。その時点で、在宅ライターの仕事は止め、ママスクエアの勤務を週5日、1日5時間に増やした。

 

スタッフの笑顔と成長が働きがいに

さらに1年後、マネージャーに昇進。2019年3月のことだ。クライアントとはオンライン会議システムやチャットを使い、頻繁に打ち合わせを行う。
もちろん、オペレーターのマネジメントも重要だ。天神イムズ店で突発事項が生じればすぐに対処できるが、遠隔マネジメントを行う神戸と大宮はそうはいかない。最低週2回は当地のSVとのミーティングを欠かさないようにしている。「スタッフがどんどん育っていくのが嬉しい。『うまく行きました』『契約できました!』と笑顔で報告してくれると、この仕事をやってよかったと思います」
野口さんの働きぶりに対し、家族の反応はどうだろうか。「子供はもう大きくなったので、拠点には連れて来ていませんが、二人とも来ていた時期もあり、『ママが楽しそうに働いているので、この場所が好き』と異口同音に言ってくれます。小学生になった上の娘は将来ママになったら、ママスクエアで働きたいと(笑)。夫も、私がここで働くようになって、より明るくなった、楽しそうになったと評価しています」

 

最初の仕事に戻ったらもっといい仕事ができる

ママスクエアで働く現在の日々に点数をつけてもらった。「難しいですね」と言いながら、こう答えた。「日々張り合いがあり、充実しているという意味では120点です。一方で私は母親でもあるので、ママとしては100点ではない。しかも、マネージャーの仕事がしっかりできているかと言えば、自信がありません。マネージャーとしては50点くらいでしょうか」
新卒で働き始めた時と比べてどうですか、と聞いてみた。「あの2年間に関しては忸怩たる思いがあるんです。数字を達成することばかりが頭にあって、お客様への提案も自分都合のものが多かったと反省しています。ママスクエアに入り、SVとマネージャーを経験し、クライアントが何を望んでいるかをより意識できるようになりました。いま同じ仕事に就いたら、お客様の事情に寄り添ったもっと別の提案ができるのではないかと」
働くことを別の言葉で言い換えてもらった。「人生そのもの。それがなくなると私の人生が空っぽになってしまう。自分が人生の主人公として歩んでいくために、欠かせないものです」

 

 

育児家事、資格取得の勉強もやりながら、生き生きと働ける

PROFILE

元谷もとたに 加代子さん
新長田店 リーダー

 

細やかな神経と会話力、傾聴力が必須

元谷加代子さんは神戸市内にあるママスクエア新長田店で週3日ないしは4日働いている。時間帯は午前9時半から午後1時半、同じく午前9時半から午後6時半など、まちまちだ。ママスクエアでは各自の都合に合わせ、勤務時間を柔軟に設定することができる。
仕事は電話受発信対応、パソコンへの入力業務、ウェブの原稿作成など、時期により変わるが、昨年末まで、長く従事していたのが、電話による顧客開拓業務の代行だ。
個人向けに医療・がん保険の資料を送付する。潜在顧客に電話をかけ、ニーズがありそうなお客様に対し健康状態などを伺い、資料送付の手続きをする。「初対面の人に健康状態から送付先まで伺う必要があります。細やかな心配りと明るい会話力、相手の話に耳を傾け、心の扉を開けていただく傾聴力が要求されます」
さらに、元谷さんはリーダーでもあり、自分で電話をかけるとともに、他のオペレーターのフォローや指導も行う。少し元気がなければ、「今日はどうしたの」と声をかけることも忘れない。
「コールセンターの仕事は4年ほど前にここで働き始めるまで、やったことはありませんでした。最初はなかなか慣れませんでしたが、続けていくうちに慣れてきて、難しいけれど、奥の深い仕事だと思うようになりました」
ママスクエアではスタッフのSPH(Sales Per Hour=対時間成約数)、つまり、達成率を算出し、上位者を表彰している。元谷さんは1位になったことが何度もある。「今日は何件成約できるかと、出勤した日は朝から戦闘モードです(笑)」

 

 

初職は百貨店、「声の仕事」に就いたことも

大学を出て最初のキャリアは大阪市内の百貨店でスタートした。百貨店のショーウィンドー・各テナントのウィンドー装飾や、百貨店全体のイベント企画・運営を担当する。百貨店、特に装飾の仕事を希望し、それが叶ったのは学生時代にアルバイトしていたCDショップで、商品陳列や商品に付すPOPの文言の重要性を痛感したからだった。仕事は面白く、やりがいがあり、毎日終電まで頑張った。
そこに予期せぬ出来事が立て続けに起こった。
まずは、経営不振でその大阪店が閉鎖することになった。東京勤務か退職か。どちらかを選ばなければならない。
もうひとつは母の死だった。大阪の実家から通っていたため、東京に転勤となると、一人残される父のことが心配だ。
元谷さんは退職を選び、地元で次の就職先を探した。通信販売会社である。前職での経験が評価され、数店舗展開しているリアル店舗のウィンドー装飾と広報を担当した。「そこで働くうち、ある気持ちが湧きあがってきたんです。百貨店時代、イベントの司会進行役もこなしていたのですが、人に何かを伝え、その場で反応をもらうという仕事がとても面白かったので、話すことを仕事にしようと思ったんです」
会社を退職し、アナウンススクールの門を叩く。学ぶだけでなく、実践も重要だ。あるNPOからラジオのDJやレポーターの仕事をもらい、あるいは結婚式の司会の仕事があれば飛びついた。そうした仕事はいずれも土日に行い、平日は派遣社員としてまったく別の仕事に就いた。

 

長男を保育園に預けて働くが……

そのうち、運命の人が現われ結婚。ところが夫は土日が休みだが、自分は土日が稼働日で、すれ違いが生じてしまう。一旦、声の仕事は休止し、大阪市内の広告代理店の契約社員として働くことにした。そして、夫の都合で兵庫県明石市に移住することになり退職。すぐに長男が生まれるが、育児だけの日々に行き詰まりを感じ、働き口を探すと、神戸市内にある国立の研究機関が広報スタッフを募集していた。週5日勤務。応募すると採ってもらえた。
当時0歳の長男を保育園に預けて働くが、困ったことが起きた。保育園に通っていることもあり、頻繁に病気をする。元谷さんはそのたびに看病を余儀なくされた。「ひどい時期は月の半分以上、休みをいただくこともありました。入社して間もないのに申し訳ないという思いでいっぱいでした。しかも、私の部署には子持ちの女性が一人もおらず、悩みを打ち明けられる相手がいないので、孤立感もありました」
退職することにし、長男を保育園に通わせるのも止めた。しばらくして次男が生まれる。育児と家事に追われながら、どこかで働きたいという気持ちをずっと持ち続けていた。

 

家庭と仕事の両立に苦しむ

長男が3歳、次男が1歳になった時、ママ友から耳寄りな情報が入った。子供と一緒にいながら働けるママスクエアという会社が神戸に新店舗を出すのだという。「その日のうちに応募しました。子育てと仕事が両立できる、理想の職場だと思ったのです」
ママスクエア新長田店にオープニングスタッフとして入ったのは2017年3月のことだ。週3、4日の勤務で、1歳の次男を連れて出勤した。
入ってオペレーターからリーダーに、2年でSV(スーパーバイザー)になる。
SVは想像以上に大変な仕事だった。店舗スタッフからは元谷さんの勤務時間以外も、相談や報告のメールが来ることもあった。クライアントからも問い合わせや資料作成の依頼もやって来る。帰宅後にパソコンを開くことも増えた。「その結果、家で仕事をしていると、『ママ、パソコン止めて』と子どもから言われるように。子育てと仕事のバランスをとるのが難しくなりました」
これでは生き生きと仕事ができない。元谷さんは悩み、正直に上長に相談した。それから数日後、元谷氏は驚く。ママスクエアの藤代社長からじきじきにメッセージをもらったのだ。「私の現在の状態をすべてわかって頂き、そのうえで、仕事と家庭の両立が難しいなら、仕事のボリュームを減らして働くというやり方もある、と言ってくれたんです。1200名ものスタッフがいる中、その中の一人にこんなにも気を使ってくれるのだと感激しました。心が軽くなり、ここで頑張ろうと決心しました」

 

 

同じ悩みを持つ女性を救いたい

2020年3月から元谷さんはSVを離れ、再びリーダーとなり、現在に至る。
仕事の負担を減らしてもらったのにはもうひとつ理由があった。「勉強のための時間がほしかったんです。私が直面した問題は多くの女性にとって人ごとではありません。そうした女性を一人でも多く救いたいと思い、メンタルケア心理士®という資格を取ることにしたんです。幸い、昨年12月に取得でき、現在はさらに上級の資格を目指して、勉強を続けています。ママスクエアにもそういう悩みを抱えているスタッフはいるはずです。社内で何ができるかも考えてみたい」
元谷さんにもママスクエアでの日々を点数化してもらうと70点という。「働き方としては100点ですが、自分が持っている力を存分に発揮できているかといえば、疑問符がつきます。その伸び代分が30点というわけです」
働くを別の言葉で言い換えてもらった。「自分の社会的存在価値を見出すこと。ママスクエアで失敗や成功を繰り返しながら、探している最中です」