Crew’s Life:澤井さん。中村さん。サイボウズは100点満点で何点?

時短・在宅勤務のかたわら、オンラインの大学院に通学

PROFILE

澤井真佑子さん
開発本部 テクニカルコミュニケーションチーム

 

製品のヘルプサイトの多言語対応に取り組む

澤井真佑子さんの主な業務はグループウェアのユーザー向けヘルプサイトの運用である。サイボウズでは「ヘルプサイトは製品の一部」。だから重要な業務であり、また大変な業務でもある。ヘルプサイトは製品のリリースに合わせて日々更新されるうえに、日本語だけではなく、英語や中国語にも翻訳して提供している。結果として、全体で1万ページ超という結構なボリュームとなっている。澤井さんは、総勢14名あまりのチームの中で、多言語化のディレクション業務に携わっている。
勤務は月曜から金曜まで、週5日、1日6時間。子供が小学校高学年になり手がかからなくなってきたが、2018年の入社時以来、時短勤務を続けている。これまで、週2日はオフィスに出社していたが、コロナ禍の現在、完全在宅勤務となっている。澤井さんはこう話す。「現在は、ヘルプサイトの英語、中国語以外の多言語対応に取り組んでいます。社内の翻訳者だけでなく、社外の翻訳会社に翻訳を発注する場合もあります。製品の特長や機能はもちろん、さまざまな画面表示や用語の意味を丁寧に説明したり、訳語の整合を確認したりする必要があるので、非常に手間がかかる。プロセスをもっと効率化できないか、試行錯誤しているところです」

 

新卒で入った大手通信会社。長時間労働の職場

澤井さんは、中途採用でサイボウズに入社している。新卒で入ったのは大手通信会社。大学は文学部だが、インターネットが好きで入社を決めた。配属先は法人向けネットワークサービスを行う部署だった。「20名あまりの部員は、自分以外全員男性で、長時間労働が日常茶飯事でした。おかげでよく体調を崩していました」。
結局、3年ほどで退職する。結婚と出産を経て、専業主婦になった。子供が小学生になり手がからなくなると、7年間のブランクを経て、仕事に復帰した。週2日ペースでの、自宅近くにあった社団法人の事務のアルバイトだ。そこで働くうちに物足りなくなり、同じように時短で働ける仕事を探した。派遣会社を通じて就いたのは、大学発のスタートアップでのアシスタント業務だった。
仕事は楽しかった。アシスタント業務といっても、スタートアップらしく、色々な仕事が降ってきた。「自分より年下の20代の社員が多く、大学のサークルのような雰囲気でした」
周囲も澤井さんの働きぶりを評価していた。「そろそろ正社員してあげたらどうでしょう。そうしないと他社に移ってしまうかもしれません」とトップに進言してくれる同僚がいたが、聞き入れられなかった。見かねた別の同僚がこっそり教えてくれた。「社員に柔軟な働き方を認めているサイボウズというIT企業がある。受けてみたら」
澤井さんはサイボウズ社長の青野慶久氏の著作を何冊か読んでみた。主力製品であるグループウェアについても勉強した。「働きやすそうな会社だと思いました。時短勤務を希望する私にぴったりだと。しかも、グループウェアというのは、私のようにフルタイムで出社しないメンバーにも手を差し伸べ、仕事に参加しやすくしてくれるソフトウェアだということがわかりました。面白そうだと事業にも興味が湧き、応募してみることにしました」。こうして2018年2月、正社員として入社し、現在の部署に配属されたのである。

 

 

午前中はオンラインの大学院で学ぶ

先述したように、サイボウズでは時短勤務が認められており、澤井さんは、打合せなどの予定がある日を除き、午後から業務を開始する。最近は午前中を別のあることにあてている。「オンラインで海外の大学院に通っており、授業を受講しています。内容はテクニカルコミュニケーションとローカリゼーション。まさに今、私がサイボウズで取り組んでいる仕事です。日本では、この手の内容は企業に入って徒弟制度的に学ぶのが一般的なのですが、海外では大学や大学院に講座があり、社会人になってから学び直すケースも多いそうです。自分もやってみたいと思っていたら、フランスの大学院で英語で提供されるフルオンラインの講座を見つけたんです」
上司に相談したら「やってみればいい」と背中を押された。「学費も会社で負担できるかもしれない」とのことだったが、自費のほうが気楽だと考え、学費は自己負担とした。
「午前中、不在になる分の仕事は同僚がカバーしてくれています。頑張って、と応援もしてくれるので、とても助かりますし、学んだことを仕事に還元していきたいと思っています。私は留学経験などがあるわけではないので英語で苦労していますが、海外にいる、同じ分野の仕事をしている同級生と意見を言い合ったりできるのは、刺激になります」

 

働くとは自分自身を成長させること

今のサイボウズでの仕事の日々を点数でつけてもらうと、100点満点という答えが返って来た。「時短勤務と在宅勤務のおかげで時間が有効に使え、とても助かっています。コロナの影響でほぼ全員がフルリモートになったことで、より仕事が進めやすくなりました。午前中に大学院にまで通うことができ、やりたいこと全部できています。選択を後押ししてくれる同僚には感謝しかありません」
「もう一度、学生に戻るとしたら、サイボウズを就職先に選びますか」と聞いてみた。澤井さんは少し間をおいてこう答えた。「選ばない気がしますね。最初の通信会社はサイボウズと対極で、こちらの希望を聞かれることもなく、1年目はネットワークセンターで障害対応をしながら通信技術を学びました。そこで培った知識や経験が今の私の仕事を支えている気がします。サイボウズに新卒で入ったら、自由過ぎて、何をしたらいいのか戸惑ってしまうかもしれません」
「澤井さんにとって働くとはどういうことですか」と質問すると、次のような答えが返ってきた。「一つのテーマに継続して取り組み、結果を見ながら少しずつ自分のやり方を変えていく。そういった相互作用を通じ、自分自身を成長させていく。それが働くということではないでしょうか」

 

 

 

人生をわくわくさせる複業ができる場

PROFILE

中村龍太さん
社長室 社長室長

育苗実験室のリーダー

「今日は朝5時半に起き、食と農をつなげる場としてのビニールハウスに使う資材を買いに、ホームセンターに行ってきたんです。それから畑を廻り、帰宅して、9時からサイボウズの仕事をやっていました」。サイボウズで社長室長をつとめる中村龍太さんは明るく話し始めた。実は中村さんはサイボウズ社員の他に二つの仕事を持っている。
まずはその農業だ。昨年まで農業生産法人の契約社員として、人参の試験栽培をしていたが、現在は自営農家としてIoTを活用した人参の試験栽培をしている。
コラボワークス(https://collaboworks.jp)という名称の個人企業の代表でもある。そこでは、動画撮影や各種研修・ワークショップの主宰、司会(モデレーター)業など、自らの特技を生かした仕事を行っている。中村さんが話す。「火曜から金曜日はサイボウズの仕事に従事し、それ以外の月曜と土曜、日曜を後の2つにあてています」
サイボウズでは、メンバー6名(社長の青野氏を入れると7名)を束ね、具体的な社会課題を、情報格差のないフラットなチームワークで解決する実証実験プロジェクトのリーダーを担う。こうしたプロジェクトを行う組織が社長室なのだ。そのプロジェクトを、中村さんは農業になぞらえて、「育苗実験」と名付けた。

 

副業ではなく複業

こう書くと、利益を度外視したボランティアのように思えるかもしれないが、まったく違う。「チームワークあふれる社会を創る」というのがサイボウズの企業理念であり、プロジェクトには同社のクラウドサービス製品がふんだんに活用される。
たとえば、コロナ禍に襲われたこの3月、サイボウズの業務アプリ開発ソフトkintone(キントーン)が神奈川県で採用された。新型コロナウイルス感染症対策本部で使われるためだ。これによって、県内の医療機関や帰国者・接触者相談センターからの情報をすばやく収集し共有しながら、その様子をモニタリングすることが可能になった。同製品の神奈川県への納入のきっかけをつくったのが中村さん傘下の社長室だった。「他にも、児童虐待や災害、教育といった自分の関心事に引き寄せたテーマを各自が企画、推進しています。サイボウズの製品が役立つ未来に向けた小さな芽を探り当てるのが仕事なのです。しかも、6名が全員、私と同じ、複業従事者であるのもユニークなところでしょう」
中村さんは副業とは呼ばず、複業と呼ぶ。どれもが“副”ではなく、“本”業であるべきだと考えるからだ。

 

友人の強引な誘いでサイボウズへ

中村さんもサイボウズには中途採用で入社した。大学を出た1986年に日本電気(NEC)に入り、企画職や経理職を担当する。1997年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転じ、クラウド型のビジネスソフトのパッケージであるOffice365など、いくつもの新規事業の立ち上げに従事した。「当時は今と違い、モーレツサラリーマンそのものでした。平日はほぼ毎日終電で帰り、朝は5時台に起き、7時には会社に着いて、仕事を始めていました」
サイボウズへの転職は意図したものではなく、半ば偶然にその機会がやってきた。
ある日、マイクロソフトからサイボウズに転職していた友人のSNSを見たら、自社、つまりサイボウズの働き方について取り上げた記事をシェアしていた。それに「いいね」を押して、「素敵な働き方ですね」とコメントしたところ、先方から「久しぶりに食事でもどう」という誘いが来た。当日、久しぶりの歓談を楽しんでいると、先方から思わぬ言葉が飛び出した。「お前、サイボウズに転職する気があるだろう?」。
「想定外の言葉で、そんなことはまるで考えていませんでした。でも、私が携わったOffice365もサイボウズの多くの製品も、同じクラウド上でサービスを提供する商品です。私がやれる仕事はあるはずで、ありえない話ではないと思いました」

 

副業許可の2社に同時転職

その友人は続けて「(代表の)青野さんと話さない?」という。数日後、青野氏に会うと、クラウドサービスの可能性について話が多いに盛り上がり、青野氏に「うちに来ないか」と誘われた。
「『参考までにどのくらいもらっているの』と当時もらっていたマイクロソフトの給料を聞かれたんです。正直に答えたら、青野さんが『私より多い』と(笑)」
ここで青野氏は“秘策”に出た。「『うちはこれくらいしか出せないけれど、あとは副業で稼いだらいい。うちは自由だから』と言うんです。大学生の子供が2人いる時期だったので、教育費がどうしても必要でした。家に帰って相談します、とその日は別れました」
結局、サイボウズに転職することにした。2013年9月末のことである。その際、中村さんも秘策を使った。何と、サイボウズともう1社で働く、つまり2社同時就職という形だ。「マイクロソフト時代にお世話になっていたIT企業のなかから、副業が許可されているところを見つけ、そこにも雇ってもらうことにしたのです。
現在はその会社での業務は終了。先に紹介したように、2015年からは農業生産法人での仕事を開始し、現在は自営農家として働いているということだ。

 

サイボウズでの仕事生活は80点

現在のサイボウズでの仕事について、点数をつけてもらったら、80点だという。「私はもともとプレイヤー体質で、今の管理職という仕事が性に合わない(笑)。メンバーの上げた成果の話を聞いていると、自分が現場に出かけてしまいたくなるんです。でも農業に加え、コラボワークスを基盤に、自分の好きなことがどんどん仕事になっているので、職業生活全般という意味では120点です」
中村さんにとって、働くということは「エネルギーを費やすこと」ではなく、逆に「エネルギーをもらうこと」「わくわくすること」なのだという。そうだとしたら、単業では物足らず、複業を追求する中村さんの気持ちもよく理解できる。それは同時に自身に幸せをもたらす“福業”でもあるのだろう。