PROFILE

糸原絵里香さん(NO.56)/シェアワーカー

・家事代行(タスカジ)
・民泊管理人(Airbnb)
・料理、英語、心理学などを教える(タイムチケット)
・大学院生(臨床心理学)

■東京都在住、24歳。高校卒業までを地元島根県で過ごし、大学進学で高知県へ。大学卒業後、高校時代からの夢である臨床心理士になるため大学院進学を機に上京。現在は大学院で心理学を学びながら民泊の掃除や家事代行、週末は民泊のゲストを迎えるという毎日を送っている。当初はバイト感覚ではじめたシェアワーキングサービスであったが、その魅力に気づき、「新卒シェアワーカー」になる決意をする。

■家族:両親(島根県に居住)

■座右の銘 「笑う門には福来たる」

 

「仕事」というよりも、本当に「自分の好きなこと」という感覚

島根県出身の私は、公務員の両親の元に一人っ子として生まれました。全校生徒15名の小さな小学校を卒業し、高校卒業までを地元で過ごしました。高知大学人文学部に進学、心理学を学び、高校英語の教員免許も取得しました。思い返せば、大学時代は家庭教師のアルバイトに明け暮れる毎日で、夜は夜で晩御飯を作っては同級生をアパートに招いていましたね。そして大学卒業後、臨床心理士を目指して東京の大学院に進学しました。

現在は、大学院生として心理学を学びながらシェアワーカーとして仕事もしています。家事代行「タスカジ」・民泊管理人「Airbnb」・料理、英語、心理学などを教える「タイムチケット」を主な仕事としており、平日の昼間は民泊の清掃や家事代行を、土日は民泊にゲストを迎える、というのが1週間のサイクルです。大学生の頃から、周囲の友人が就職を決めていくのを横目に、漠然と自分もいずれ就職できたらいいなと思っていた一方で、家庭教師として多くの生徒と出会ったり、自宅で料理を作って同級生に振る舞ったりすることをとても楽しんでいる自分がいました。大学院生になって、まさにそれが仕事になり、卒業後も自分が「シェアワーカー」として生きていく選択をするとは思ってもいませんでした。でも、働いている感覚はあまりなく、本当に自分の好きなことをしていて、それが不思議と収入になっている感覚です。

きっかけは、生き生きと働くシェアワーカーとの衝撃的な出会い

そもそもシェアワーカーになろうと思ったきっかけは、「タイムチケット」というシェアサービスを始めたことです。バイト感覚で始めたのですが、2017年のユーザー忘年会に参加したとき、そこに集うメンバーの職業や肩書きが私の知らないものばかりで「こんなにいろんな働き方があるんだ!」と初めて気づきました。自身の仕事を語るみなさんの表情がとても生き生きしていたのが衝撃的で、私自身もキャリアを考え直すきっかけになりました。

実際、シェアワーカーになったとこで、以前よりも時間の融通が利くようになりましたね。まだまだ駆け出しですが、好きな時間に会いたい人と会い、行きたいところに行く、ということができつつあるように感じます。また、人に会う回数が格段に増えました。月に100人近くの新しい人とシェアを通して出会っており、日々新しい価値観に出会っています。

いくつかのシェアサービスでシェアワーカーをしている中で、私が一番力を入れているのが家事代行です。依頼者のご自宅に伺い、料理を作ったり、作り置きをこしらえたりしています。お子さんのいらっしゃるご家庭に伺うことが多いのですが、そこで私が料理を作っている間に、普段は忙しいお父さんやお母さんが、子どもたちといつもより少しゆっくり向き合うことができる。そんな時間を提供することが、私の家事代行におけるミッションだと思って日々仕事をしています。3時間で10〜15品程度を作るのですが、小さなお子さんでも食べやすいように柔らかく煮ておこう、苦手な野菜は小さく刻んでみよう、寒くなってきたから体が温まるようなおかずを作る、などと1つ1つにこっそりメッセージを込めたりもしています。

 

120パーセントの集中力で臨み、信頼関係を築く

ただし、「代わりがきかない仕事」だと感じることも多いです。ありがたいことに「糸原だから」ということで依頼してくださる方もいらっしゃいます。20歳代で学生の私がそのように言っていただけることはとてもありがたい経験だと思います。シェアリングエコノミーでは提供者がゲストからレビューをいただく機会が多いのですが、毎日レビューでたくさんの感謝の言葉をいただき、その1つ1つが大きなモチベーションを生んでいます。

他方で、代わりがいないということは、何があっても私がいかなければならないし、たった1つの小さなミスでも今後の信頼関係に響いてしまうため、毎日が真剣勝負でもあります。まさに「糸原絵里香のミス」となって蓄積してしまうわけです。シェアワーカーに限らずフリーランス全体に言えることかもしれませんが、小さな信頼の蓄積のために、1つ1つの仕事に対して常に120パーセントの集中力で望むことを心がけています。

逆にこれはシェアワーカー特有のものだと思いますが、時間管理について言うと、連絡を返す時間や人とオンラインで関わる時間を意識して設けるようにしています。それぞれのプラットホームで様々なお問い合わせをいただくので、放置しておくとすぐに溜まってしまいます。なので、それらに対応するための時間は、意識的に設けるようにしています。時にはありがたいお礼のメッセージ、新しいお仕事のお誘いなどもいただくので、そのような方々とSNSやシェアサービス上でコミュニケーションを取ることも大切な仕事です。

でも良くも悪くも、仕事とプライベートの境界線が日に日に薄くなっています(笑)。仕事が楽しいので意識的に疲れを感じることがなく、ついつい休みなく働いてしまいますが、体調を崩しては本末転倒なので、「適度に休みを取ること」を今後の課題にしようと思います。

シェアワーカーとして生きる決意

私が大学院卒業後も就職せずに、「シェアワーカー」として生きていくということを話したとき、両親は「大学院まで行って家事と民泊?」と驚いていましたね(笑)。でも、今は応援してくれています。両親は、今までも私がやりたいことを満足いくまで、とことんやらせてくれました。そのおかげで、自分がワクワクするものを、自分で見つけることができるようになったとではないか、と非常に感謝しています。

ただ、私自身、不安がないわけではありません。新卒の学生の多くは、一度は就職し、その後に転職したり独立したり起業したりパラレルワーカーになったり…。私の場合は、一度も一般企業を経験したことがない、ということが今後のキャリアにどのように影響してくるのか、今も不安です。

でも、それ以上に、新卒でシェアワーカーになるという新しい生き方の可能性を自分自身で証明してみたいという気持ちが強いのも事実です。もっとお金を稼ぐことのできる仕事は世の中にたくさんありますが、現在自分一人で暮らして行く中での経済面の不安はそこまで大きいというわけではなく、贅沢しなければ一般的な生活ができる状態です。将来的に家族が増えたり、新しいことに挑戦する資金が必要になってきたときに、今と同じスキル・単価では難しい部分もあるかと思うので、シェアワーカーとして働きながらスキルの向上や知識・経験の蓄積を目指していきたいと考えています。

好きなことをして生きていく、その方法を発信することが目標

人生100年時代と聞くと、純粋に「人生って長いなぁ」と思います。せっかくなら、やりたいことを詰め込んだ後悔のない100年にしたいですね。やはり私は、シェアワーカーとして、より活き活きと働き、生活することができる方法を探していきたいと思います。加えて、こんな生き方もあるということを知ってもらう機会を増やしていきたいですね。

特に就職活動中の方々には、自分と話す時間を大切にしてもらえたら…と思います。この先数十年のことを考えると、この進路選択は正しいのだろうか…と悩まれるかもしれません。でも、幸せの定義も働き方も人によって違うのです。学歴や職歴にとらわれず、もしどこかで回り道や失敗をしても、自分の好きなことで生きていける方法もあるということを、私自身、少しずつ発信できるようになりたいです。