PROFILE

佐藤 邦彦(さとう くにひこ)さん《No.015》

・Sato’s Adventure(夫婦で脱サラ。子ども2人を連れて世界放浪しています。※2017年12月取材当時)

妻、長女(6歳)、長男(5歳)、次?(お腹の中)とともに、世界各地を放浪。日本では東京に在住。ヨーロッパ放浪中に第3子を授かることができたので、嫁は日本で大事を取りながら、子ども2人を連れてアジアを回り、ワンオペ育児にチャレンジしている。
現在、世界各地に民泊をしながら、出会った人たちと”働き方”や、根底にある”価値観”について対話し、その経験を発信。新しい働き方を模索しながら実践している。また、働き方改革アドバイザーとして企業数社にアドバイスを行うほか、各種メディアでのライティングを行う。さらにはベトナムのスタートアップで業務コンサルティングを手伝うなど、仕事は多岐に渡る。

座右の銘:「自分に正直に生きる」
影響を受けた本:井上雄彦さんの「スラムダンク」「バガボンド」、手塚治虫さんの「ブッダ」「火の鳥」「ブラックジャック」
人生に必要なことは漫画から学びましたw
https://www.facebook.com/satosadventure/

以前はリクルートに勤め、企業の新卒・中途採用支援を担当していました。「どういう人材を採用したいか?」「 そのためには企業の魅力を、どのように伝えると良いか?」を日々考え、企業の人事担当者に提案するのが僕の仕事でしたが、学生や求職者の気持ちや求めているものを意識していくうちに、「就活のシステムや求職サイトなどは、企業目線の考えからサービス設計をし過ぎていないか?」という違和感を覚えるようになったのです。

個人を取り巻く家庭環境や“働く”ということに対する考え方は変化しているのに、雇用システムは従来通り。
企業側ではなく、働く個人の視点で“働き方”を選ぶ機会があってもいいのでは? と思うようになりました。

個人が働き方を選ぶことで実現する新しい世界

そんな中、僕自身にも転機が訪れます。2011年に結婚し、一姫二太郎の年子の子どもたちが誕生したのです。会社の元上司で5歳年上の妻は、キャリア路線から外れ、母としての時間を過ごすことに対し、復職への不安と焦りを覚えていましたが、休みの日は家族を大切にするが平日は仕事に没頭する父と、それを母が支えるという家庭に育った僕は妻には自分を支えてほしいという気持ちを抱えており、その気持ちのギャップから夫婦が衝突することも少なくありませんでした。

そこでお互いの希望やできることできないことを話し合い、パートナーとして仕事もプライベートも互いに寄り添い協力しあうスタイルへと関係を変化させていきました。

また、僕自身、3ヶ月間育児休暇を取得したり、保育園に迎えに行く日は仕事の都合があってもお迎えを優先させるなど、子育てにも積極的に関わるようにしました。そこで気付いたことは、「仕事において捨てる事ができるものはたくさんある」ということ、「人は制約条件の中で初めて自分を進化させることができる」ということ。これまで当たり前のように見過ごしてきた1つ1つの会議や資料作成などの無駄を捨てる判断ができるようになり、ライフとワークの垣根を超えて「今この瞬間、最も自分が大切にしたいことは何か」を考える習慣も強く意識するようになったのです。

そこに新たな転機が。シェアリングエコノミーの新規事業開発の部署に異動になったのです。働く人のスキルや知識をシェアするクラウドソーシングという概念でビジネスを検討をするプロジェクトでしたが、そこで目にしたのは、自身の経験やスキルを活かしてフリーランスとして働くエンジニアや翻訳者、営業など、雇用されない働き方を実践する人たちでした。

さらにその翌年には、リクルートの従業員2万人の働き方改革を、何のために、どのように実現するか? というプロジェクトに携わり、“未来の働き方”をより一層考えるようになりました。そして、「自分自身も”働き方”や”家族のあり方”、そして”教育”というテーマに対し再定義をしたいのではないか? そのためには、世界に存在するいろんな価値観に直に触れ、根底にある差異を理解できる”琴線のヒダ”を増やすことが大切なんじゃないか?」そんな強い想いに突き動かされ、大きな決断をしたのです。

世界各地で民泊をしながら自分らしい“生き方”“働き方”を体感

家族で世界を旅するという決断に、子どもは「長い旅行」「外国の幼稚園もいける(実際にドイツ、ベトナムで体験)」と喜んでいました。夫婦は現実的な金銭面の問題や、社会復帰時の就職面の不安などで議論はありましたが、最後には「長女が小学校に上がる前の最後の1年」「いつかやりたい、よりも、いまやろう!」という、えいや!で決めました。もちろん親戚からの不安の声はありましたが、最後は自分の家族なのでと尊重してくれました。

現在、世界各地に民泊をしながら、出会った人たちと”働き方”や、根底にある”価値観”について対話したり、NPOセクターも含めた様々な”働く場所”を訪問したりして、新しい働き方を学んでいます。また、その体験を家族でシェアしたり、世の中へ発信しながら、一生に一度しかない思い出を作り、自分たちの中の気付きを得ているところです。

また、世界を周りつつ自分自身も個人を軸とした働き方をどんどん実践したいと思い、ご縁をいただいた方々とお仕事しています。働き方改革アドバイザーとして数社とお取引させていただいたり、各種メディアでのライティングや、ベトナムのスタートアップで業務コンサルティングのお手伝いなども行っています。

今もライフシフト真っ只中ですが、このライフスタイルになって「自分の意思決定レベルが高まるって、こんなに楽しいんだ!」と気付かされました。夫婦で脱サラして世界放浪という非合理な意思決定。全てが自由という名の自己責任で人生を選択すること。ここにリクルート時代を凌駕する自分の変化可能性に出会いました。
また、24時間家族で共に過ごすことで、良くも悪くも「うちらってこうだよね!」というコンセプトのようなモノにも気付いたのです。夫婦で、子どもとよく喧嘩もしました。だからこそ深まる絆や自分たちの”らしさ”みたいなものに、向き合うことができたのは財産になると思っています。

自分自身が決める「Will(〜したい、ありたい)」にまっすぐに

もともと「個人が多様な生き方(働き方)を選べる社会を創りたい」というライフテーマを持っていました。海外放浪の1つの目的は、世界の生き方や働き方を“体感”すること。実際に放浪し、このテーマを実現するためには「社会のパラダイムシフト」「個人のライフシフト」の両面が必要だと感じました。前者は社会環境で、国や法人が形成するルールや仕組みです。これを変えること。そして、どんなに環境が整っても、本来、幸せの定義をしたり人生の意思決定をしていくのは自分自身でしかない。そのための価値観の変化や行動を支援すること。これからはそうしたことに携わりたいと思っています。

世界を放浪すると、日本特有のメンタリティによく気付かされます。良い面と悪い面がありますが、日本社会は「暗黙の”べき論”」が強い。それに自身が囚われていることに気付くことが、ライフシフトの起点ではないかと思います。誰かが決めた「当たり前」や「正しさ」ではなく、自分自身が決める「Will(〜したい、ありたい)」にまっすぐになると新しい自分に出会えるかもしれません。崇高なWillなんか必要なく、自分なりの軸で、まずは行動してみること。そんなライフシフターの連鎖が、より幸せな社会をつくると信じています。